Cセグメント比較試乗 メルセデスAクラス vs アウディA3 vs BMW 1シリーズ
もくじ
ー A評価のAクラス
ー 初代からはすっかり宗旨変えの4代目
ー コンパクトカーらしからぬインテリア
ー 好勝負のアウディA3
ー 期待はずれの1シリーズ
ー キャラクター性豊かなハンドリング
ー 驚きに溢れるも、一歩及ばぬAクラス
ー アウディA3スポーツバック1.6TDI ブラックエディションのスペック
ー メルセデス・ベンツA180d AMGラインのスペック
ー BMW 116d Mスポーツ5ドアのスペック
A評価のAクラス
確かなコンセプトによって生まれた新しいAクラスを表現する、Aで始まる言葉を詳しく記すには、数ページは必要になりそうだ。読者の中には、メルセデスの小さなハッチバックに対しては、これといった印象を持たないひとも多いかもしれないけれど。
敏捷性(Alacritous)、先進性(Advanced)、完成度(Accomplished)。 数日間、数百キロをドライブして、こんな言葉がわたしの頭に浮かんだ。
AUTOCARでは、Aクラスに関しては2度ほど記事を書いているが、レポートする際にこれらのワードが表現に含まれていただろうか。また、このプレミアム・ハッチバックを評価するために比較しなければならない、アウディA3スポーツバックとBMW1シリーズを試乗する機会も、もちろん何度かあった。
これまで書いてきたレビューを見返してみなければ。それほど優れた印象だったのだ。
高い人気が見込まれる低燃費ディーゼルのA180dが巻き起こした、3メーカーによる三つ巴の戦い。これまでの流れを振り返ると、今回の新しいAクラスほど、野心的(Ambitious)で積極的(Assertive)な「A」はなかったように思う。しかも、これまでのAMGモデルを持ってしても、ここまで機敏(Agile)なクルマではなかった。
これらすべての言葉が、本当に新しいメルセデス・ベンツAクラスにふさわしい表現なのか、疑問に思うかもしれない。
英単語辞典はこのくらいにして、クルマを見ていこう。
初代からはすっかり宗旨変えの4代目
今回の新しいAクラスは4代目となるが、初代モデルからスタイリングはだいぶ変化した。1997年に登場したAクラスと2代目までが備えていた斬新な要素は、2013年に登場した3代目ですっかり消えてしまった。当時の革新的ともいえたスピリットは、もう戻ってこないだろう。
新しい4代目Aクラスは、今回比較するA3スポーツバックや1シリーズより、全長も全幅も大きくなっている。ボディが大きい部類のCセグメント・ハッチバック、ホンダ・シビックやマツダ・アクセラなどと比較しても、全長はさらに長い。
1990年代に生まれた初代が売りにていた、「コンパクトカーより短いボディに、ファミリーカーより広い車内」という表現を覚えている読者もいるだろう。この発想も変化したようだ。広範囲に渡る自動車市場が生んだ結果なのだろうが、残念にも思えてしまう。しかし、メルセデスが多くの顧客のニーズに合わせたハッチバックを製造することを、否定はできない。一般的なパッケージと技術を搭載していても、優れたハンドリングと乗り心地を提供してくれるのだから。
4代目のAクラスは、1.5ℓのディーゼルと、1.4ℓと2.0ℓのガソリン・ターボエンジンが当面の選択肢となり、7速デュアルクラッチATが組み合される。4輪駆動とインディペンデント・リアサスペンション、アダプティブ・ダンパーは、最もパワフルなガソリンエンジン・モデルのみで選択できる。したがって、今回われわれがテストしたA180dディーゼルには装備されていない。
今回の対戦相手は、アウディA3スポーツバック1.6TDI ブラックエディションと、5ドアに後輪駆動のBMW 116d Mスポーツ。A180dが搭載するコンベンショナルなトーションビーム・サスペンションは、プレミアムブランドとして、期待に応えるドライビングを提供してくれるのだろうか。現代のメルセデス・ベンツの乗用車として、トーションビームが採用されたのは初めてだと思う。
スポイラー類もたっぷり装備している。ハンドリングや乗り心地という面は、昨今のコンパクトカー市場での成功を握る要素としては、プライオリティが低くなってしまった。
コンパクトカーらしからぬインテリア
Aクラスの成功を占うような仕上がりを知るには、まじまじと観察したり、運転する必要はなさそうだ。ドアを開けて目にする、技術的な洗練度合いや、インテリアの極めて上質なしつらえは、コンパクト・ハッチバックではお目にかかったことのないレベルだから。
メルセデス流の、丁寧にデザインされたエアコンのコントロールパネルに加えて、クロームとグロスブラックのトリムパネル。混在するヘアライン仕上げのアルミニウムや柔らかいレザー、アルカンターラに包まれた車内。思わず息をのむ雰囲気は、小さなクルマを充分高級なクルマに感じさせてくれる。シートに腰掛ければ、コンパクトなハッチバックに乗っていることを、しばし忘れるだろう。
思い返すと、およそ5年前、これとほぼ同じ内容を現行のアウディA3でも記しているが、上質な素材を用いていても、ここまでの印象は得られなかった。
そして、ダッシュボードに備わる2面の10.3インチ・ディスプレイが、一層高級感を高めている。ただし、われわれのテスト車両はトップグレードのAMGラインだったが、このディスプレイはメルセデス・プレミアムパッケージのオプション扱い。インフォテインメント・システムの選択という目的だけでなく、この豪奢で未来的な雰囲気作りのためにも選んでおきたいところだが、お値段は2395ポンド(35万円)なり。
シートに座ると、左右対称に美しく並んだクロムメッキのリングが光るエアベントが、ダッシュボード両端とセンターコンソールに並ぶ。そこに、ダッシュボードから浮いているように、高解像度の美麗なモニターが2台鎮座し、Aクラスの雰囲気を決めている。インストゥルメント・パネルには、ひさしのような部分は備わらない。まるで、メルセデス製の大型サルーンがもつダッシュボードと、まったく同じ光景が広がるのだ。
好勝負のアウディA3
しかも、大型サルーンとは異なり、インフォテインメント・システムのインターフェイスは、操作が難しいロータリースイッチではなくなった。ノートパソコンのトラックパッドのようなコントローラーがセンターコンソールに備わっていて、かつてのメルセデス製のタッチ式システムよりも遥かに操作しやすい。
精度が上がった新しい音声認証システム「ヘイ・メルセデス」も利用が可能。ステアリングホイールにもタッチパッドが付いており、クルマの様々な機器類の操作を行うことができる。
さらにカメラからの前方映像をナビゲーションに重ねて表示させる、拡張現実機能も利用が可能で、クルマを運転しながら、マリオカートをプレイしているような不思議な経験も味わえる。気が散ってしまう機能だとも思えるが、実際そんな印象だった。新しいAクラスは、最新技術を好むひと向けにデザインされたのかもしれない。
第一印象は極めて優れているものの、このハッチバックのインテリアは、最新のガジェットと、上質な素材だけで覆われた空間ではないことにも気付く。車内を丁寧に観察すると、第一級の水準とは少し異なる質感の部分も含まれているのだ。
例えば、操作レバーやスイッチ類の質感と組付け精度は、それほど高級感のあるものではない。パワーウインドウのスイッチやステアリングコラムから伸びるレバーは、操作するほどにA3の方が上質に感じられてくる。
そしてパッケージング。この3台では最も大きいボディサイズを持つにも関わらず、Aクラスの車内が最も広いわけではない。また、Aクラスのラゲッジスペースは360ℓと、以前より大きくなってはいるが、同様に最大ではない。
大胆に弧を描いたドアハンドルは見た目に美しいが、リアシートの貴重な膝まわりの空間を削っている。リアシートの空間も広くなったとはいえ、アウディの方がより余裕を感じられる。1シリーズよりは広いけれど。
観察は終わりにして、走り出してみよう。
期待はずれの1シリーズ
面白いことに、3台ともに最高出力は115psと並んでいる。0-100km/h加速の差は0.4秒、CO2の排出量も4g/kmとわずかな差に留まっている。これは、社用車として購入されることも多いプレミアム・ブランドのディーゼル・ハッチバックが、いかに熾烈な競争をしているのかを物語る数字だと思う。
さらに興味深いのは、実際に運転してみると各車しっかり区別がつくところ。乗用ハッチバックだから、絶対的なパフォーマンスには大きな期待はできないとしても、Mスポーツで後輪駆動のBMWや、車高が下げられ引き締められたスポーツサスペンションを持つアウディには、魅力を感じると思う。
しかし明らかにBMWは、プレミアムな価格に見合ったパフォーマンスを発揮させることに苦労しているようだ。より優れているアウディとメルセデスの2台も、様々な方法で比較検討してみると、ハンドリングやダイナミクスの面で明確な差が見えてくる。
スペックシート上では、BMWが最も力強いエンジンだと読み取れるものの、実感としてはアウディの方が一枚上手。116dが搭載する3気筒ディーゼルは4気筒のライバルよりも回りがたりの性格で、一生懸命に頑張ろうとする性格には好感が持てる。しかし、回転フィーリングは洗練性に欠けており、中回転域でのトルクが不足気味なのか、2500rpm以下ではレスポンスも良くない。
アウディA3の1.6ℓ4気筒エンジンは、3500rpm以上ではBMWより若干うるさく、息苦しそうにも感じられるが、それ以外の場面では静か。低回転域から中回転域にかけて優れたスロットルレスポンスを見せ、2000rpm以上では頼もしい力強さも味わえる。
A180dの1.5ℓ4気筒エンジンは、その中間といった印象。アイドリング時や通常に走行している場合は、非常に静かでスムーズに回るが、3000rpm以上になるとBMW並にうるさくなり、アウディほどの実用回転域の幅も持ち合わせてない。中回転域でのトルクはたくましいが、全体的なドライバビリティという面では、A3よりは明らかに劣っているように思う。
さらに惜しいのが、ゲトラグ社製のデュアルクラッチAT。ドライビングモードに関係なく中速を多用する傾向があり、Aクラスが搭載するディーゼルエンジンの弱点を誇張するかのように、最大トルクが発生する回転域を活かすことなく、早めにシフトアップしてしまうのだ。
キャラクター性豊かなハンドリング
ハンドリングと乗り心地に関しても、面白みはあるものの、BMWの劣勢が見えてくる。一般道では、3台中で最も長いホイールベースを持っているにも関わらず、それなりの重量のボディが落ち着くことはないのだ。ライバルと比較して振動が気になるうえ、ボディロールも顕著。ステアリングレスポンスも、ドライバーの操作に一息ついてから、クルマが反応するような感覚がある。
反面、A3とAクラスは、よりボディコントロールが巧みで、シャープなハンドリングレスポンスと、安定した乗り心地を提供している。さらにこの前輪駆動の2台の間にも、しっかりしたキャラクター性が備わっている。
今回のアウディA3は、ブラックエディションとなり、硬いスポーツサスペンションが標準装備。メルセデス・ベンツAクラスはAMGラインとなり、「ロワード・コンフォート・サスペンション」と呼ばれる足回りを備えている。ただし、これはトーションビームを備えるすべてのAクラスに共通するものなのだが。
予想通り、メルセデスのサスペンションの方がアウディよりも柔らかい。しかし、ハンドリングは、A3が持つ強力なグリップレベルという点以外では、メルセデスの方がややリード。アウディよりもスムーズにノーズは向きを変え、ボディを水平に保ったまま、優れたバランスでコーナリングしていく。
A3は、Aクラスほど魅力的な感覚はないものの、優れたシャシー性能で、より限界点が高いことがわかる。通常の走行スピードでの乗り心地にも優れ、巧みにボディを落ち着かせていることを感じ取れる。全体的なバランスとしては、最も速いペースでの走行を望むならA3。ドライビングを楽しみたいひとは、後輪駆動のBMWではなく、A180dという選択になるだろう。
驚きに溢れるも、一歩及ばぬAクラス
新しいAクラスの仕上がりは、驚きに溢れている。プレミアム・ハッチバックというコンパクトカーにとって、大きな飛躍だといっていい。先代モデルには引き付けられなかったようなひとにとっても、まっさらな気持ちで接することができるような、目を引く新しいデザインも魅力のひとつだ。
しかし、新しい指標として十分な仕上がりまではあと一歩。メルセデスが及ばない、アウディA3が持つより効率的な車内空間、シートの質感や洗練性、優れたダイナミクス性能を持ち合わせた完成度の高さは、称賛に値するものだと思う。
そして結論。低燃費なディーゼルエンジンを搭載したハッチバックを選ぶなら、真っ先にアウディA3の試乗をオススメしたい。
今回はAクラスがわずかにA3には及ばない結果となったが、これで幕切れできるほど、簡単な比較ではなかった。異なるエンジン同士の比較なら、今回の評価は大きく変わってくることだろう。
3台のスペック
アウディA3スポーツバック1.6TDI ブラックエディションのスペック
■価格 2万8735ポンド(425万円)■全長×全幅×全高 4325×1785×1435mm
