「Jリーグの新スタジアムをつくろう!2016」(1)吹田、八戸編

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こんにちは、駒場野です。

4月に書いたJIFFについての記事は、多くの皆さんにご覧いただき、私宛のご反応も何通も寄せられました。本当にありがとうございました。いずれ、この記事のフォローアップをする予定です。

何が変わる?何を変える? 日本障がい者サッカー連盟(JIFF)の発足と課題
http://qoly.jp/2016/04/03/column-nakanishi-jiff

さて、これは前から編集部と話していた企画です。

今年はガンバ大阪の本拠地になる市立吹田スタジアムが完成し、今後も全国各地で続々と新競技場の建設が予定されています。そこで、これから出来るスタジアムはどんな特徴があるのか、特に「これから作る所にどんな点で参考になるのか」という視点で、Qoly読者の皆さんに情報を提供しようという事になりました。

ご案内役は私になりましたが、編集部からは「くれぐれもいつもの調子で長々と書かないように」と思い切り釘を打たれましたので(苦笑)、簡潔にやります。

では、第1回として今年から使われるスタジアムの吹田と八戸の2つを取り上げます。

市立吹田サッカースタジアム
By Kanko3131 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=47637173

吹田スタジアムの内装。左側にある北側サイドスタンドにはVIPエリアが無く、ガンバサポーターが3層から一体となって声援を送れる。

市立吹田サッカースタジアム

場所:大阪府吹田市

収容人数:3万9694人

アクセス:大阪モノレール万博記念公園駅から徒歩15分、

JR東海道線(京都線)茨木駅からバス10-15分

クラブ:ガンバ大阪(J1)

状況:2015年10月に完成済み

利用開始:2016年2月

市立吹田サッカースタジアム
By Kanko3131 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=47637173

遂に登場したJの最先端、市立吹田サッカースタジアムの外観。

改めて、Jリーグスタジアムの根本的概念すら変えた、吹田スタジアムについて。

Jリーグ開始以来ガンバ大阪が本拠地にした万博記念競技場は1972年完成で老朽化が激しく、国際基準も満たさないため、新スタジアムの建設が必要でした。ここでガンバや親会社のパナソニックは大阪府などの地元自治体の動きを待たず、自分達で資金を集める事を決断します。

関西経済界の支援も受けて2010年3月に発足した「スタジアム建設募金団体」は建設費140億円のうち一部の公的助成を除く全額を企業や個人の寄付で集めると宣言し、2014年のガンバ三冠達成も追い風になって、5年間で138億2700万円の募金を集めました。これに政府のCO2削減関係助成金を加え、総額140億8500万円の建設費を確保して、当初の予定より8千人多い4万人収容のサッカー専用スタジアムを作りました。

建設段階でも徹底的にコストが削減され、ほぼ直線だけで作られた、装飾を排除して観戦のしやすさに特化したスタジアムになっています。そして、5万円以上寄付をした企業や個人のネームプレートも展示されています。

吹田市はこのスタジアムを無料で受け取って所有し、一方2063年までガンバを指定管理者とする契約を結んでいます。計画時点から注目されたこの方式は、自治体には新たな公共施設がタダで手に入り、クラブは理想のスタジアムが固定資産税を払わずに使い続けられて「どちらもお得」と言われました。

もちろんこれはクラブ側による巨額の初期投資費用が前提で、それを払えたのはガンバという日本有数の強豪クラブ、そして総資産約5兆9千億円で多くの建設関連企業も含まれる巨大なパナソニックグループだったからという点も絶対に見過ごせませんが、

そんな「ドラマティックシアター」、吹田スタジアムは2015年10月10日に竣工式典をした後、2016年2月24日のプレシーズンマッチ、ガンバ大阪-名古屋グランパス戦でサッカー場としての歴史を始めました。今シーズンのJリーグでは、ガンバはトップチームがJ1とACLのホーム全試合でこの新本拠地を使用し、J3に参加したU-23は吹田とすぐそばの万博を併用する予定になっています。

その見やすさは多くのアウェーサポーターからも絶賛されていますが、唯一の問題はアクセスです。2万1千人収容の万博のほぼ2倍の観客に対応するには、大阪モノレールしか来ない最寄りの万博記念公園駅は小さすぎます。

前売りで完売だった今回のキリンカップの場合、数十分待ってモノレールの順番を待つか、それよりは少し早いがJRや阪急の駅までレンタサイクルか徒歩で移動するかといった判断が迫られました。この部分では今後も試行錯誤が続くでしょう。

「2015年最高のスタジアム」が決定!G大阪の新スタは両部門でTOP10入り
http://qoly.jp/2016/02/23/stadium-of-the-year-2015...

ガンバ大阪公式:ホームスタジアム 市立吹田サッカースタジアム
http://www2.gamba-osaka.net/stadium/

スポーツマーケティング・ナレッジ:
圧倒的に素晴らしい市立吹田サッカースタジアムは、なぜ安価で建設できたのか?
キーマンに聞く 建築秘話(澤山大輔)
http://sportsmarketing-knowledge.jp/archives/583

THE PAGE:「寄付金で建設された吹田スタジアムの意義」(藤江直人)
https://thepage.jp/detail/20160214-00000003-wordle...

八戸市多賀地区多目的運動場(仮称)

場所:青森県八戸市

収容人数:5200人

アクセス:東北新幹線・青い森鉄道八戸駅、及びJR八戸線本八戸駅から車で20分

本八戸駅からバス30分、市川バス停から徒歩8分(500m)

クラブ:ヴァンラーレ八戸(JFL)

状況:現在建設中、2016年9月完成予定

利用開始:2016年10月

八戸市多賀地区多目的運動場(仮称)

多賀地区多目的運動施設の全景。中央上(東側)、白い管理棟に面するのがメインスタジアム、下(西側)がサブ。周囲には広大な駐車場が用意される。
(八戸市の『(仮称)多賀地区多目的運動場実施設計(概要版)』より)

吹田と比べると小規模で、しかもまだJFLでの使用ですが、この八戸の新スタジアムも全国に与える影響は大きいはずです。ただ、どうしても青森県外での報道は小さくなるので、八戸市のスポーツ振興課に電話でお話をうかがいました。

スタジアムの建設場所は八戸市の北東部、奥入瀬川と五戸川に挟まれた多賀地区の県道19号線沿いになります。2013年9月に八戸市が基本構想を発表してから計画は順調に進み、ちょうど3年経つ今年、2016年9月の完成がもう秒読み段階です。

建設地は元々農地で、西側は4車線の県道、東側には住宅地や水産加工団地があり、その先の太平洋岸までは直線距離で1kmを切ります。東日本大震災では住宅地や工場の一部が浸水し、さらに今後最大で約12mの津波が襲来する恐れが指摘されたため、周辺住民の安全を確保する「津波避難ビル」の建設が必要でした。

そこに「復興のためのにぎわい施設」として、元々市内に不足していたサッカー場の整備を加えたというのが、基本的な流れです。

同時期にヴァンラーレ八戸が強くなり、2014年に参入したJFLで2015年1stステージに優勝した(年間総合で2位)のも追い風になり、JFAなどとの協議の上で「収容5200人、J3規格を前提として作る日本初のスタジアム」として整備されることになりました。

メインの多目的運動場は土から天然芝へ変更され、屋根はほぼ無いかわりに将来の照明設置スペースは確保され、大型映像装置も1基できます。1700人のサイドスタンドも作られるサブグラウンドでは人工芝が使われ、当初から照明も付いて、ヴァンラーレ以外の一般利用も考えられています。

公共交通機関の便は悪く、未発表の市営バス臨時便がもし本当に無いならアウェー側観客は八戸駅からも一仕事ですが、試合時に1500台の駐車場が使えるホーム側サポーターならほぼ大丈夫でしょう。

ただ、費用面では特別な事情が。

建設費は33億6千万円ですが、多くは国の復興予算から支出されています。5年前の被災地であり、想定最大級の津波でも耐えられる4階・高さ14mに地域住民を収容できる集会室や備蓄スペースなどがある巨大な管理棟は「無駄な出費」では決してありませんが、かなりお金のかかった施設だとも言えます。

市議会での質疑でも用地買収でも大きな反対はなかったという点も、全国各地で難航するスタジアム整備から見ればうらやましい話です。

それでも「あと1年早ければ……」という思いを越え、ヴァンラーレは今シーズンもJFLで上位争いを続けています(追記:当初は「J3で上位争い」と誤記していました。関係者と読者の皆様にお詫びします)。元日本代表の市川大祐を加えたチームは1stステージを5位、昇格圏内まで勝ち点1差で終えました。

そして10月2日のこけら落とし、2ndステージ第11節のMIOびわこ滋賀戦からのラスト5試合中4試合を多賀開催にし、ラストスパートの準備は万端です。緑色のイカの妖精、「ヴァン太」は初の魚介類マスコットとしてJリーグを侵略できるでしょうか。

青森県初のJクラブへ!ヴァンラーレ八戸の2016新ユニフォーム
http://qoly.jp/2016/04/26/vanraure-hachinohe-2016-...

八戸市公式サイト:(仮称)多賀地区多目的運動場実施設計の概要について
http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/12,8...


このような形で、これからも全国でのスタジアム整備の現状について、その問題などにも触れながら紹介していきます。次回の(2)では、2017年完成予定の2つ、北九州と今治について書きます。

筆者名:駒場野/中西正紀

サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。

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