「アラブ」と「中東」の違いとは何か? イスラム世界とはどこを指すのか?
■「中東」より「アラブ」のほうが狭い
イスラム教の聖典である『コーラン』の原典はアラビア語で記されているが、そのアラビア語を話す人々が住む国々のことを「アラブ」と呼ぶ。
アラビア半島全域とイラク、シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダン、そしてエジプト、スーダン、リビア、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、モーリタニアが含まれている。
その「アラブ」に住んでいるのがアラブ人だ。
したがって、隣接する国の中でトルコとイラン、さらにイスラエルとアフガニスタンは「アラブ」には含まれない。
これらの国々の公用語はそれぞれ「トルコ語」「ペルシャ語」「ヘブライ語」「パシュトー語(ダリー語)」であり、そこに居住しているのはあくまでもトルコ人、イラン人、イスラエル人、アフガニスタン人なのである。
そして、アラブにこれらの国々を加えた地域の総称を「中東」と呼ぶ。おわかりのように、「アラブ」よりも「中東」の方がより多くの国々を包含していることになる。
■「イスラム人」は存在しない
イスラム教徒のことを「ムスリム」と呼ぶが、現在、ムスリムが最も多く住んでいる国は、意外にもインドネシアである。以下、2位がパキスタン、3位インド、4位バングラディッシュと続く。
中国のウィグルや新疆などにも数千万人ものムスリムが居住しているし、マレーシアやブルネイ、フィリピン南部、タイの南部、ミャンマー北部にもいる。
つまり、「イスラム世界」=「中東」ではない。中東地域だけではなくアジア地域にも多くのムスリムがいるのである。現在、世界のイスラム教徒の人口は約16億人であるが、近い将来世界の3分の1の人口を占めると言われている。私たちは、この事実を軽視してはならないだろう。
1971年にはムスリムが多い国々による『イスラム諸国会議機構(OIC)』が発足している。これはイスラム圏の国連とでも呼ぶべき組織で、加盟国は50か国超。さまざまな分野における交流や連携を行っており、アジア地区ではマレーシアとパキスタンが加盟している。
なお、各種メディアの中には「イスラム人」という呼称を使用しているところもあるようだが、そんな言い方は存在しない。イスラムを信仰する人という意味合いで用いるのであれば、あくまでも「ムスリム」と表現すべきである。
※本連載は書籍『面と向かっては聞きにくい イスラム教徒への99の大疑問』(佐々木 良昭 著)からの抜粋です。
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(佐々木良昭=文)
