サッカーアメリカ代表を率いるクリンスマン監督 (撮影:フォート・キシモト)

写真拡大

 2日後に迫った準々決勝の舞台、フォルタレーザにやってきた。

 ブラジル対コロンビア。

 開催国でありサッカー王国であるブラジルにとって優勝、最悪でも決勝進出が必須の命題だ。もし準々決勝で敗れるようなことになれば、それは事件。大きな騒ぎに発展するだろう。だが、その可能性は少なくない。

 決勝トーナメント1回戦で、延長、PKを戦ったチリより、コロンビアはもうワンランク上。それ以上の接戦が見込まれる。僕の見立てでは両者イーブン。ホームの利を思い切り加えても52対48。コロンビアが勝っても、番狂わせとは呼べないレベルにある。
 
 翌日、ブラジリアで行われるアルゼンチン対ベルギーについても言える。ベルギーが勝っても何らおかしくない状況にある。
 
 従来の価値観に照らせば弱者に属するチームが、同様に強者と呼ばれるチームに対して接戦を演じる試合が目立つ。それが今大会の特徴だ。大抵の試合が接戦だ。決勝トーナメント1回戦だけ見ても、延長、PK戦に及んだ試合は8試合中5試合もある。
 
 上位と下位の差がここまで接近しているW杯も珍しい。98年から出場国が24チームから32チームになり、上位と下位の差が広がり、試合内容が低下したと言われてきたが、今大会は例外。本当に力が落ちるチームは、日本ともう一つ二つぐらいに限られる。
 
 どちらが勝つか分からない試合の連続は、見る側にとっても大歓迎。ブラジル対コロンビア戦が、今大会を代表する熱戦になることを願いたい。
 
 コロンビアがどこまでやるか。言い換えれば、ブラジルがどこまで苦戦するかは、コロンビアの頑張り次第だ。ブラジル次第というよりコロンビア次第。

 ブラジル対チリもそうだった。チリ次第だった。チリはよく頑張った。接戦を期待するこちらの思いによく応えた。だが、本当に最後の最後まで、その前向きな精神が続いたわけではなかった。最後は守備的になってしまった。延長に入った頃から、その攻撃精神は著しく鈍った。PK戦を望むような素振りを見せた。

 決勝トーナメント1回戦。延長にもつれ込み、PK戦寸前まで行ったアルゼンチン対スイスでも、スイスはもう一つ強気になれなかった。アルゼンチンの戦いぶりは、率直に言って酷かった。メルマガにも書いたが、悪いボールの奪われ方を繰り返した。スイスが布陣通りの陣形を保ち、高い位置からプレッシャーを掛けようとしている間は。だが、ボールを追いかける脚色は、次第に鈍っていく。陣形も時間の経過とともに後方に下がっていった。「PKでも構わない」そんなムードで延長を戦っていた。僕の目にはもうひとつ覇気がなかったように見えた。
 
 アルゼンチン、ブラジルを前に、スイス、チリは終盤、自分たちを信じられなくなっていたようだ。本当に勝てるのか。弱者が陥りやすい呪縛にはまり込んでいた。
 
 決勝トーナメント1回戦をオランダと争ったメキシコにも、それは言えた。後半3分にドスサントスの鮮やかな先制ゴールが決まり、よい流れで試合を進めていたにもかかわらず、メキシコのミゲル・エレーラ監督は、その得点者であるドスサントスを後半16分に引っ込め、早々と守備固めの態勢に入った。
 
 瞬間、危ない予感が走った。残り30分強もの間、守りきれるようなムードは全くしなかった。メキシコは、弱者が持つべきチャレンジャー精神とは、180度反対の弱者のダメな面を覗かせてしまった。
 
 従来のサッカーに本当の自信を持てなかったのだろう。あるいは、オランダという国を強者であると、必要以上に思ってしまったのだろう。
 
 一方、弱者にカテゴライズされるにもかかわらず、最後まで頑張ったのがアメリカだ。ポルトガル戦、ドイツ戦、ベルギー戦。彼らが強者と戦った3試合は、いずれも好ゲームだった。理由は、打たれても怯まずに打って出たからだ。攻められても下がらず、高い位置で陣形を保とうとした。