ロンドン五輪で篠原監督は「最低金7つ」という目標を上げているが、金メダル候補が目白押しだった最高のアテネ五輪の時でも金は8つという結果だった。今回の代表は特に男子に弱さが目立ち金メダルゼロという予測もされている。金ピンチが噂された88年のソウル五輪では斎藤仁が95kg級で金を死守したが今回はどうなるだろうか?

 日本のお家芸である柔道は当然ながら日本が圧倒的な強さを誇ってきた競技だ。しかし度重なるルール変更は2010年の「連続技でない帯より下の直接攻撃、または防御の禁止」(具体的に言えばタックルが出来ない。)を除けば、「一本勝ち」を美徳とする日本柔道には不利なものが多く、そのたびに苦戦を強いられてきた過去がある。

 しかし2009年に柔道に導入されたランキング制(ポイント制)は、日本柔道のみならず柔道競技そのものに大きな影響を与える改正であった。簡単に言えば各付けされた各国際大会で順位に応じてポイントを加算し、そのポイントに応じて五輪出場権が得られるというものである。これがあるが故に全日本選手権と全日本体重別選手権を連覇した加藤剛博選手は五輪代表にはなれず、また100kg超級でも優勝した若手七戸龍選手も選ばれる事はなかった。

 ランキング制は実績を数値に置き換えたもので非常にわかりやすく、選手の実力を素直に表しているかのように見える。ただし、それは世界レベルの選手が常に同じ場で同じ試合数で争うという事が前提だ。また柔道は減量を伴う格闘技で多くの試合に出続けることは有力選手ほど難しい。それゆえ、このランキング制は多くの優勝者を排出することにより商業ベースでの成功を求めた考えであり、たとえとして不適切かもしれないが競馬におけるグレードレースの乱立と形は似てしまうことになる。一方で競技人口の多い国はこのランキング制をしっかりと把握してローテーションを組むという作戦が考えられるだろう。自国の選手を上手く振り分けることによってポイントを稼ぎ、出場権を持つ選手を増やして五輪選考に臨むという手法だ。

 しかし日本の場合は伝統的に有力な選手に国際大会経験を積ませるという形が出来上がっておりその方針を変えることはなさそうだ。個人的には国内大会も含めてローテーションを練り直し、海外大会出場選手の間口を広げる事が柔道躍進に繋がると思えるのだが・・・

 もちろん、ロンドン五輪男子柔道代表は誰もがポイントをしっかりと取っている選手達でメダルを獲れる力量はあるのは間違いない。ただし金メダルとなるとなかなか苦しいのが現実だ。五輪前の下馬評を覆して金奪取なるか?男子金メダル候補としては、寝技が得意の73kg級の中矢力、柔道界に戻った吉田秀彦氏門下の66kg級の海老原匡を上げておきたい。(編集担当:田村和彦)