〈私の名前はキムヨンジャです、私は32歳です〉日本人を狙う「韓国人女性」SNSの正体…取材で見えた国際詐欺拠点の実態「ベッドの隣にPCとスマートフォンが複数台」
6月12日、カンボジアの首都プノンペンで摘発された国際詐欺拠点。当局はカンボジア人女性3人を逮捕した。彼女らは韓国人女性のふりをして、日本人をターゲットにロマンス詐欺を実行していたとみられる。パソコンのモニターには「日本で新しい友達を作りたい」といった日本語が、彼女らが話すクメール語の訳とともに表示されていた。
【写真を見る】逮捕されたカンボジア人女性3人、詐欺用に使用されていた日本語文のテンプレート
現在、カンボジアでは詐欺拠点の大規模な摘発が行われている。それに伴い、外国人の「かけ子」が減少。かわって、現地のカンボジア人たちが詐欺の実行犯を担うケースが増えているという。
国際詐欺グループの現状を取材。いま、何が起きているのか──最新情報をお伝えする。【前後編の後編。前編から読む】
カンボジア人の女3人が詐欺拠点で尋問を受けている写真をカンボジア当局が公表している。3人の年齢は明らかにされていないが、20代前半だろうか。当局発表によると、この事件ではパソコン5台、詐欺行為に使われていたスマートフォン34台、そのほかにもPCモニターなどが押収されたという。
様々なSNSの複数のアカウントを駆使して、日本向けに詐欺の釣り糸を垂らしていたのだろうか。押収されたパソコンの画面には、カンボジア人が使用するクメール語訳がついた複数の日本語の文言が並ぶ。
〈初めまして^_^良かったら仲良くしてください(ハート)〉
〈私は韓国人で、釜山に住んでいます。あなたはどこに住んでいますか〉
〈私の名前はキムヨンジャです、私は32歳です〉
〈年齢差は大きいけど大丈夫です〉
なかには、〈あなたに会うのが私の性格です。あ、どこから来たの?〉といった不自然な日本語もあったが、韓国人という設定のため、多少の間違った表現でも誤魔化せたのかもしれない。
詐欺用に使っていたとみられるInstagramアカウントに投稿されているのは、スイーツやカフェの写真の数々。カンボジア現地の雰囲気とはかけ離れた写真ばかりだ。プロフィールには「日本で新しい友達を作りたいと思っています。もしよければ、ぜひ友達になってください」と記載されている。
大手紙国際部記者はこう解説する。
「若いカンボジア人の女3人だけでスマートフォンやパソコンを大量に入手して詐欺行為をしていたとは考えられない。背後には組織や別の黒幕は当然にいるでしょう。
しかし、この事件についての当局発表はこの3人の逮捕についてのみ。根本的な解決には至っていないのではないでしょうか。実際に詐欺拠点の摘発を連日発表しているカンボジア当局ですが、どこまでそれが効果的なのか、組織の壊滅につながっているのか、不透明な部分が多いのが実情です」
日本でも、SNSを起点としたロマンス詐欺は年々増加している。警察庁の発表によると、2026年3月末におけるSNS型ロマンス詐欺の被害額は135.9億円で、前年同期比で18億円も増加しているのだ。
「最近ではInstagramやFacebookだけでなく、日本人が最も利用頻度の高いLINEへ誘導した後に、投資詐欺などに発展させるケースも珍しくないようです」(同前)
しかしながら日本人向けのロマンス詐欺拠点であっても、摘発が日本で報じられないことも少なくない。
「この事件についてもそうですが、カンボジア当局から日本側にどこまで情報が入っているのかは不明です。仮にこういった詐欺組織に騙し取られている被害者が日本にいたとしても、カンボジア人によるカンボジアでの犯罪ですから、被害弁済などは到底期待できないでしょう」(同前)
今回のようなロマンス詐欺や投資詐欺、もしくはそのハイブリッド型ともいえる詐欺行為が相次いでいる。現実社会で全く接点のないアカウントとのやりとりには、細心の注意が必要だろう。
「生成AIや翻訳機能の発達により、日本語の自然さは急速に向上しています。とにかく騙されないように、様々なケースを知ることで、未然に被害を防ぐことが必要です」(同前)
今回の事件で使用されていたInstagramのアカウントには少ないながらもフォロワーがいた。被害者がいないことを祈るばかりだ。
(了。前編から読む)
