「どうしたら球が打てますか?」→「球が来たら打てばいい」中村天風の衝撃回答が名将・広岡達朗を納得させたワケ
広岡達朗氏の指導の根底には、中村天風や合気道から学んだ思想がある。力むほど力は出ない。やるべきことを、余計な欲を捨ててやる。その教えは、野球だけでなく仕事にも通じる。(ダイヤモンド・ライフ編集部)
――広岡さんは中村天風先生などからも直接教えを受けています。
昔、中村天風先生に「球が打てないんですが、どうしたら打てますか」と聞いた人がいた。天風先生は「球が来て、ストライクなら打つだろう」と言った。
要するに、来た球を打てばいい。ところが人間は、もう少しうまく打とう、もっと遠くへ飛ばそうと欲張る。すると力む。力むから、本来できることまでできなくなる。
野球でも人生でも同じです。やるべきことは、実は単純です。余計なことを考えすぎて、自分で難しくしているのです。
――合気道の教えも、野球やご自身のマネジメントに取り入れられていたそうですね。
合気道では、力を抜いた方が本当の力が出ると教わりました。力を入れて押すより、力を抜いて押した方が強い。これは体験しないと分からない。
「臍下の一点」という心身統一合氣道の考え方があります。臍下の一点とは、心を静めることで心身ともに動じなくなる下腹部にある場所を指します。これは野球の打撃でも守備でも、心の持ち方にも通じるものです。
アメリカでMLBのファームで責任者を務める人物に会ったときも、力を抜く実演を披露したことがあります。年寄りだと思って押してくるのに、こちらが動かない。すると相手は驚く。説明だけではなく、実際にやって見せることが大事です。
――「やるべきこと」や真理を説く厳しい指導に対して、選手から反発されたり、嫌われたりすることは怖くなかったのでしょうか。
