高市首相の公式Xより

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北朝鮮による日本人拉致問題は、長年にわたりこう着している。この問題を語るとき、あまり語られない現実がある。政府認定で未帰国の拉致被害者12人の現在の年齢だ。9人が70代を超えており101歳の人もいる。北朝鮮の平均寿命などのデータに照らせば、極めて厳しい健康状態にいるのは間違いない。

5月30日、北朝鮮による拉致被害者の帰国を求める「国民大集会」が開かれた。出席した高市早苗首相は解決への決意を述べたが、具体的な動きは依然として見えていない。

公開されている被害者の生年月日によれば、東京で警備員をしていた1977年に52歳で拉致された久米裕(ゆたか)さんは、1925年の生まれで101歳。帰国した曽我ひとみさんの母、ミヨシさんは94歳。宮崎県の海岸から拉致された原敕晁(ただあき)さんは89歳だ。その下の70代は6人、60代が3人で、最も若い横田めぐみさんも61歳になっている。

韓国統計庁が、北朝鮮のデータを元に平均寿命を発表している。それによれば男性が73.1歳、女性が79.3歳だ。韓国や日本と比べても男女とも10歳近く短い。現地の食糧、医療事情が反映されている。これを単純に拉致被害者に当てはめると、男性3人、女性2人がすでに平均寿命を超えている。

最近は日本でも、単なる寿命ではなく「健康寿命」に関心が高まっている。心身ともに自立し、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことだ。

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11人が北朝鮮の健康寿命超える

北朝鮮の健康寿命は、WHO(国連保健機関)がまとめている世界各国の人口関連データの中にある。2023年時点で男性が63.2歳、女性が66.4歳。平均で64.7歳だった。このデータと照らし合わせると、13歳で拉致された横田めぐみさん以外の11人が、すでに健康寿命を超えている。

もちろん、拉致被害者は日本で生まれ、一定の時間を過ごしており、北朝鮮の人の数字をそのままあてはめることはできない。被害者は平壌周辺で生活し、比較的安定した食糧、住居、医療環境にいると考えられる。北朝鮮当局にとって重要な存在だからだ。

しかし、監視の中の不慣れな生活を長期間続けていることにより、強いストレスや孤独感にさらされているはずだ。高齢となった拉致被害者の中には、自力歩行が困難になり、介護が必要だったり、移動に危険を伴う状態になっている人がいても不思議ではない。

「全被害者の一括帰国」は実現できるか

北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)は、「全拉致被害者の即時一括帰国」を方針に掲げる。北朝鮮の出方が分からないだけに、この方針は尊重されるべきであり、安易な譲歩は許されない。

しかし、被害者の高齢化により全員が同時に帰国するという条件が、難しくなりつつあることも認識する段階に来ているだろう。

北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との姿勢を変えていないが、韓国とは距離をおき、米国との交渉も進んでいない。日本からは国交正常化交渉を通じて、まとまった経済支援を受けられる可能性が残されている。このため、北朝鮮は日本との交渉再開に一定の関心を持っている、との話も聞こえてくる。

被害者に残された時間を考慮し、柔軟性を持った果敢な外交が求められる。

文/五味洋治 内外タイムス