褥瘡のステージ分類とは?ステージ別の症状や治療法、ケアのポイントを解説

医療や介護の現場で床ずれという言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。床ずれは医療用語で褥瘡(じょくそう)と呼ばれています。

褥瘡は重症化すると全身状態に影響を及ぼすため、ステージに合わせた適切なケアが重要です。しかし、どう対応したらよいかわからないという方も少なくありません。

本記事では、ステージ別の症状や治療法、ご家庭でできるケアのポイントなどを専門的に解説します。正しい知識を身につけ、不安や疑問の一助となれば幸いです。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)

【経歴】
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長

褥瘡(じょくそう)のステージ分類

褥瘡とはどのような状態ですか?

褥瘡とは、寝たきりなど同じ姿勢で過ごすことにより皮膚への血流障害が見られ、発生する傷です。一般的には床ずれとも呼ばれ、栄養状態が悪く、やせ型で骨が突出している方に発生しやすい傾向にあります。皮膚が赤くなったり、めくれたりする段階から始まり、さらに皮膚への圧迫が続くと血流が悪化し、徐々に傷口が深くなり最終的には骨まで達します。強い痛みも伴い、感染も起こしやすく、全身状態に影響を及ぼすことがあるため早期発見と早期対応が重要です。

NPUAP/EPUAP分類について教えてください。

褥瘡の深さや損傷の程度を世界共通の基準で評価するため、米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)と欧州褥瘡諮問委員会(EPUAP)によって指標が策定されています。この分類ではステージⅠからⅣ、判定不能と深部損傷褥瘡疑い(DTI)の6つの病期で表しており、臨床現場で取り入れられています。重症度を客観的に判断して適切な治療法やケアを選択するための重要な指標のひとつです。

深部組織損傷(DTI)や判定不能の分類について教えてください。

深部組織損傷(DTI)は、一見すると表皮に損傷のない褥瘡(ステージⅠ)のように感じられますが、深部では組織が壊死しており、十分な注意が必要です。特徴としては皮膚が紫色や栗色に変化し、周りの皮膚と比べると皮膚がやわらかくなったり、逆に硬くなったり、痛みや熱感を伴います。また、進行が速いため早期に除圧などの対応が求められます。一方判定不能とは、傷の表面が壊死組織やかさぶたに覆われており損傷の深さが判定できない状態です。深さを判定するためにはデブリードマンという組織を除去する専門的な処置が必要ですが、いずれも見えない部分に重症度が隠れているサインであり、医療スタッフによる慎重な見極めと継続的なケアが不可欠です。

ステージ別の症状と特徴を教えてください

皮膚の損傷の深さがどこまで達しているかによってⅠからⅣの段階に分けられます。軽度のステージⅠの特徴は消えない発赤です。皮膚が剥ける前段階で、周囲の皮膚と違い、疼痛を伴い熱感を持つなどの症状を認める場合もあるため、引き続き観察が必要です。ステージⅡになると損傷は真皮までおよび、光沢や乾燥している浅い潰瘍や破れていないもしくは破れた水疱(水ぶくれ)が見られるようになります。さらに進行したステージⅢでは、皮下組織まで欠損が広がります。筋肉や骨まで達していない段階ですが、ポケット(空洞)を生じるようになる点が特徴です。ステージⅣは筋肉や骨まで達する深い潰瘍で、ポケットを伴い、組織の壊死による悪臭も認めることがあります。筋肉や骨が露出している場合は炎症も起こしやすく、感染に注意が必要です。どの段階であっても痛みや出血、浸出液などの症状を伴うため、ステージに応じた治療、ケアの徹底が回復へとつながります。

褥瘡のステージ|治療とケアのポイント

ステージⅠ・Ⅱ(初期)の治療法とケアのポイントを教えてください。

初期の段階では、予防的ケアを中心に行います。体位変換やクッション、体圧分散マットレスなどを使用し圧迫やずれを完全に取り除くことがケアの鉄則です。発赤の程度であれば皮膚保護を目的に保湿剤や透明性のあるフィルム材を患部に貼り、観察を行います。また、びらんや浅い潰瘍を伴う際は傷口の乾燥を防ぐため、外用薬やドレッシング材を使用します。さらに清潔を保つため、生理食塩水や水道水での洗浄も行いますが、自己判断で消毒液を使わないようにしましょう。場合によっては組織をさらに痛める原因になりかねません。医師の指示のもと、状態に合ったドレッシング剤や外用薬を使用し、損傷を進行させないこと、感染を防ぎ皮膚の上皮化を促すことがポイントです。

ステージⅢ・Ⅳ(中等度~重度)の治療法とケアについて教えてください。

中等度~重度となると損傷が皮下組織や筋肉、骨まで達しており、専門的な治療が不可欠です。まずは回復の妨げとなる壊死組織をデブリードマンにより除去し、新しい組織の再生を促すことが治療の基本です。ケアでは、傷の深さや感染の有無、浸出液の量に応じた外用薬やドレッシング材を選択し、適切な湿潤環境を整える必要があります。あわせて、これ以上の悪化を防ぐため、体圧分散型の寝具の導入など徹底した除圧管理も欠かせません。また、深い傷の修復にはエネルギーを要します。そのため、体位変換などの物理的なケアと並行して、高タンパクと高エネルギーの栄養管理を行うことが回復へとつながります。

栄養管理は褥瘡に影響しますか?

褥瘡の予防と治療では、栄養管理は重要な柱です。エネルギーやタンパク質が不足した低栄養状態は、皮膚の耐久性を低下させ、褥瘡を発生しやすくします。また、損傷した組織の修復を遅らせる原因のひとつとなるため、栄養管理をしっかりと行うことで回復へと近づきます。具体的にはカロリーやタンパク質、ビタミンCなどの摂取が必要です。特に皮膚の主成分となるタンパク質の補充は、褥瘡ケアでは欠かすことができません。普段の食事のみで補うことが難しい場合は、高カロリーや高タンパクの補助食品を上手に活用しましょう。お口からの摂取が困難な場合は、経管栄養(胃ろうや経鼻からのチューブを挿入して注入するもの)や高カロリー輸液などを検討します。

体位変換の頻度や方法について教えてください。

褥瘡を予防し、悪化させないためには体位変換で特定の部位への長時間圧迫を避けることが必要です。頻度は2時間ごとに行うことが目安ですが、間隔が短いためケアを行う側への負担にもなりやすい点もあり、体圧分散寝具を活用している方も少なくありません。体圧分散寝具を使用している場合は4時間を超えない範囲で体位変換を行います。ただし、皮膚の状態や身体の状況、ケア環境などを考慮し、個別に調整と選択が求められます。体位変換の具体的な方法として、真横ではなく背中にクッションを挟んで斜めにする30度側臥位などが推奨されており、皮膚の摩擦やずれを防ぐことがポイントです。二人で行うことをおすすめしますが、一人で行う場合は身体を直接引きずらず、シーツやスライディングボードを活用して行いましょう。

どのような場合に医療機関を受診すべきですか?

具体的には、発赤が消えない場合や皮膚が剥けている、水ぶくれなどの変化が見られた際はすぐに受診を検討しましょう。褥瘡ができ始めるとあっという間に損傷は進行します。傷口から膿や浸出液が出たり、痛みや発熱を伴ったりする場合は感染症が疑われ、迅速な医療的処置が必要です。初期の対応がその後の治療を左右するため、皮膚に異常を感じたら早めの相談をおすすめします。

重度の褥瘡でも在宅で治療できますか?

重度の褥瘡であっても、適切なサポート体制を整えれば在宅での治療は可能です。ただし、褥瘡の管理には医師や訪問看護師による定期的な介入が前提で、感染兆候の有無や壊死組織の除去、処置方法など専門的な判断が欠かせません。また、在宅での治療やケアの継続は介護する方への時間的、精神的な負担を要します。しかし、介護する方がすべてを担う必要はありません。ケアマネジャーへ相談し、状況に合った介護ベッドの手配やヘルパーの介入など、生活ペースに合わせたケア体制を調整してもらうことで負担がグッと減ります。このように医療と介護の多方面でのサポートを受けることで、無理なく在宅で継続的な治療が叶います。

褥瘡の悪化を防ぐためにできることを教えてください。

褥瘡の悪化を防ぐ対策は、大きく4つの柱に分けられます。まずは圧迫とずれを抑えることがとても重要です。体圧分散寝具の導入など、特定の部位に圧迫が集中しない環境調整が欠かせません。あわせて、赤みや傷の有無など皮膚の確認を毎日丁寧に行いましょう。次に、清潔の保持と保湿ケアを徹底しなければなりません。排泄物による湿潤やオムツによる摩擦は皮膚の耐久性を低下させ、悪化の原因となります。さらに、組織の修復を促すためには十分なタンパク質とエネルギーなどの栄養摂取も不可欠です。「こういうときはどうしたらよいんだろう」と不安や疑問がある場合は、自己流で行うのではなく、専門スタッフへ相談しましょう。

編集部まとめ

褥瘡には大きく4つのステージに分類され重度の場合は専門的な医療処置が必要ですが、専門スタッフのサービスを整えることで住み慣れた自宅での継続的な治療ができます。

皮膚の観察や除圧、清潔保持、そして栄養管理の4つの柱を意識し、多方面からのアプローチが回復へのポイントです。

そして何より、介護者が一人で抱え込まずに専門スタッフと連携しながら無理のない範囲で取り組むことが、欠かすことのできない治療とケアの要です。

参考文献

褥瘡について|一般社団法人 日本褥瘡学会

用語集|一般社団法人 日本褥瘡学会

褥瘡診療ガイドライン(第3版)|公益社団法人 日本皮膚科学会

特集 高齢者の褥瘡|一般社団法人 日本老年医学会

褥瘡の治療について|一般社団法人 日本褥瘡学会

褥瘡の予防について|一般社団法人 日本褥瘡学会

床ずれ(褥瘡)予防パンフレット|一般社団法人 日本褥瘡学会

終末期医療、褥瘡と排泄|日本医師会