おじさん転がし

写真拡大

中国で最近、「おじさん転がし」という新たな職業が登場している。シンガポール華字メディアの聯合早報が25日に伝えた。

記事によると、若者の就職難、中年男性の孤独感が広まる中、「おじさん転がしをするメンヘラ女子」という新たな職業が生まれている。「おじさん」には比較的高齢の男性だけでなく20〜40代男性も含まれる。女性らは言葉巧みにだまして貢がせたり、ライブ配信で投げ銭などを求めたりする。中には、女装した男性が行うこともあるという。

こうした「女性」たちは、SNSやマッチングアプリを通じてターゲットを探す。毎日積極的に連絡を取り、気遣う言葉をかけながら、相手と疑似的な親密関係を築く。ある程度信頼を得ると、さまざまな理由を付けて少額の金銭を要求する。たとえば、甘えるように「ミルクティーおごって」「デリバリー頼んで」など。1回当たりの金額は高くないが、多くの男性を相手に同様の行為を繰り返すことで、かなりの「もうけ」になるという。

「女性」たちの属性は幅広く、地方の低所得層から裕福な家庭出身の都市部女性までさまざま。大都市で低収入に苦しむ男性が女装をして行うこともある。始めやすく、スマートフォンさえあればできるため、年齢や出身を問わない副業として広がりつつあるようだ。

15歳の女子中学生「チョロい」

具体的な事例では、15歳の女子中学生が20代の男性にケーキ購入代金をねだり、相手の男性が「会ってから払う」と言うと、わざと傷ついた様子を見せて一旦距離を取るようなそぶりをし、再び要求。根負けした男性が100元(約2400円)を送金すると、女性は「本気にしたの? 私たち、知り合ってまだ数時間だよ?」などとメッセージを送る。この女子中学生は「自分の主なターゲットは22〜28歳の男性。このくらいの年の人はチョロい」と悪びれずに話したという。

また、自分を女性看護師と偽っている男性は「早番勤務の看護師だからコーヒーが飲みたい」「親孝行な娘として実家に帰る前に果物を買いたい」などの理由で相手に金銭を要求している。本人は男性だが、写真や動画素材は女性の協力者から提供を受け、それを多数の「おじさん」たちに繰り返し送っている。相手から「会いたい」と言われた場合は適当に約束をして、直前になってドタキャンしているという。

産業化する「おじさん転がし」、客のランク付けも

記事によると、「おじさん転がし」はすでに完成された産業システムとなっており、その背後には会話テンプレートや画像・動画素材、交流グループなどが存在している。また、客をランク付けした管理システムまであるという。

第1ランクは「支払いに抵抗感を示すユーザーですぐに切り捨てる対象」、第2ランクは「潜在的な顧客で1〜2回の送金履歴があり、信頼関係を築く段階」、第3ランクは「すでに安定した課金を行っている人たちで、関係を維持するため相手が喜ぶような言動を行う相手」、第4ランクは「気前よく金を出すいわゆるカモで重要な収入源」といった具合だ。

ある人物は「3回は純粋に雑談だけをし、1回は要求を出す」というペースで送金を求めている。送金は1回当たり20〜80元(約460〜1840円)だが、仮に1日15人から送金があれば日収は800元(約1万8000円)ほど、月収は2万元(約46万円)を超える。

「おじさん」は被害者なのか

こうした「おじさん転がし」については、すでに問題を指摘する声も出始めている。河南省の官製メディア・大河網は論評の中で、「こうした現象は一部の若者に見られる『働かずに利益を得る』『楽して稼ごうとする』というゆがんだ価値観を映し出している」と批判。一方で、「中年層の心の支えの弱さという社会問題も浮き彫りにしている」とも指摘した。

狙われる「おじさん」は経済的基盤を持ちながらも心が満たされていない中年男性。職場や家庭でプレッシャーを抱え、内心では癒やしを求めているが、ネット上の詐欺への警戒が甘く、仕掛ける側はまさにその弱点につけ込んでいる。ただ、「おじさん」は一方的な被害者ではないとの指摘もある。本人もこうした手口は理解していながら、あえてそれに乗り、自ら進んで送金しているのだと見方もあるという。

ネット状での反応も「おじさん」たちへの同情よりやゆの方が多く、中には「需要と供給が一致してるだけ。雑談サービスみたいなもので、料金も良心的。悪くない」「さっき転がされて2000元(約4万6000円)送ったけど、まあいい。相手だって大変なんだろうし」といった書き込みも見られるそうだ。

グレーゾーンを突く新興ビジネス

問題は、「おじさん転がし」は詐欺に当たるのかという点だ。記事は「確かにグレーゾーンは存在する。偽の人物設定、他人の写真の盗用、高額な金銭の要求があれば法の一線を超えるという意見もある。一方で、女性が甘えるように『おごって』と頼み、男性側も自発的に支払っているのであれば、それは『気持ち』に基づく金銭のやりとりに近いとも言える」と論じた。

その上で、「実際、中国のネット界隈ではこうしたグレーゾーンを行き来し、ルールの抜け穴を突く新興ビジネスは珍しくない。特に『感情』を売る商売はその典型だ。際どい配信、AIコンパニオン、そして『物乞いメンヘラ女子』。これらは参入障壁の低いビジネスと化している」と言及した。

そして、「結局のところ、『おじさん転がし』がここまで広まった背景は、中年層が長年抱えてきた感情面や生理的な欲求があるのだろう。女性たちは彼らの孤独を埋めているが、一方で彼らの財布、さらには人と人との純粋な感情のつながりまでも、少しずつ空洞化させている。もっとも、『感情』までもが当たり前のように値札付きで取引される社会においては、人々はもうそんなことは気にしていないのかもしれない」と結んだ。(翻訳・編集/北田)