広島テレビ放送

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 広島市中心部のデパート8階へ上がると、和の空間が広がります。映画館「八丁座」。こだわるのは、人のぬくもりを感じられる場所。この日も多くの映画ファンが訪れていました。

 支配人の蔵本健太郎さん。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「(ネクタイ)曲がってないですよね。たまにビヤっと(ネクタイが)曲がっているときあるんですけど。」

 非日常の空間に誘われて訪れる人も多いはず。江戸時代の芝居小屋を思わせる劇場は、ちょうちんやひじ掛け付きのソファーをあつらえ、特別な時間を演出します。

 オープンは2010年。デパートにあった映画館の閉館を受け、決断しました。

■八丁座 蔵本 順子 社長
「一本の映画を撮るがごとく、小さなローカルの映画館が街のど真ん中に、映画館を再生復活するというチャレンジをいたしました。『無謀ですよ』と言われているのは確かでございます。だからこそ、やって結果を見ていただきたい。」

 当時はシネコンが続々と開館する一方で、ミニシアターは姿を消していきました。街の映画の火をともし続けたい。再建に立ち上がったのです。

 支配人を任されたのが、当時33歳の蔵本健太郎さん。母のあとを受け継ぎました。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人(当時33)
「テレビでいうのも恥ずかしいが、とても重たいバトンですが頑張っていきたい。」

 支配人には映画に救われた若き日、そして、ふるさと広島への思いがありました。
 デザイナーを夢見て東京の専門学校へ。しかし、味わったのは孤独感。よりどころとなったのが映画でした。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「仕事で求められることと、本来やりたいことが別だった。それに苦しみますね。社会人として仕事をすると。その中で逆に沢山映画をみるようになって。広島の自分の実家、母親がやっている映画館でも同じ映画をかけていて。共有できたというか。いいよねと。」

 蔵本家は、被爆から5年後復興するヒロシマの街で映画館業をスタート。

■八丁座 蔵本 健太郎支配人
「貴重な写真じゃね。」

 祖父から引き継いだのが母・順子さんです。経営は手探り。女手一つで家族を守りました。

■母・藤本 順子さん
「私が映画館を父からやれと言われたときはドン底。将来なんかまったく考えていない、日々現場、毎日毎日映画館をするしかなかった。初めて子どもと一緒に3人で、離婚したあと外食できた感動、いまでも…覚えている、外食ができるって。」

 親元を離れ、生きる道を模索していた蔵本さん。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「3か月くらいアジアを放浪した。」

 旅先で出会ったのは、人々のぬくもり。優しさと大自然のなかで、いつしか人と向き合えるようになりました。

Q.インドやネパールで学んだことは?
■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「自分を探しに行ったつもりが、結局は『自分を探すものではない』と気づいた。若い子たちが一生懸命働いていて、地元に根差して暮らしていると感じて。自分もその土地に根差して暮らしたい。」

 26歳。ふるさとへ戻り、映画館を営む母親の元で働き始めました。そして決まった八丁座の立ち上げ、強い思いがありました。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「復興していく広島の街で、映画で元気をもらってきた話はなんとなく聞いていたが、あらためてそういったことも知りたいし、76年目になる祖父の代から地元に根差してきた映画館や歴史というのを(聞いてみたい)。」

 「八丁座」の支配人として駆け抜けて16年。あらたな挑戦を始めていました。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「映画館じゃなくても映画はなんでも観れるようになった。映画館に来ていただけることは、とてもうれしくて。映画は見るだけで終わりではなくて、(映画を)見終わったあとにお話をしたりそういう時間がとてもいいものだと思う。今年はそういった“場所”をつくっていきたい。」

 訪れたのは都内にあるミニシアター。2022年にオープンしたわずか49席の劇場です。お目当ては併設されているカフェ。オープンで、映画について話したくなるような空間づくり、オリジナルのドリンクやフードも評判です。映画館で過ごすことを楽しんでもらう仕掛けがありました。
 「八丁座」にもカフェがありますが、運営は東京の会社に委託しています。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「地元で(カフェを)やりたい。自分たちで(カフェを)やりたい.
秋に節目があるので、そのタイミングでやりたい。大変ですか?」

■映画館のスタッフ
「カフェは大変。カフェだけやるわけでもなくて、映画館だけやるわけでもなくて、カウンターが共通なので、チケットも売るしドリンクも売るし、場内のチェックもするし清掃もする。」

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「(スタッフが)もぎれるし、ラテアートできるし?私も(カフェに)立ちたい。お客様と映画の話とかできる場所になったらいいなと。」

 誰もが気兼ねなくミュニケーションがとれる場所に、メニューの豊富さや居心地の良さにファンも多いといいます。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「(映画館が)小さいからこそできるお客さまへの気遣いとか、お客様一人ひとりに寄り添ったスタッフの方々の接客、映画館のサービスが小さいからこそできることもあると思った。原点に戻させてもらった訪問だった。」

 母から受け継いだ映画を愛する心。

■八丁座 蔵本 健太郎 支配人
「(これまで)すごい大変な時期もあって。」

■八丁座 蔵本 順子 社長
「大変と思ってないよ。すごく面白かった。映画から冒険心とか挑戦する心とか、元気をもらってるからね。ミーハーな映画ファンだから。単純にそれを人生にいかせばいいじゃない。」

 誰かの人生に、そっと寄り添い、また歩き出す力をくれる場所。まちなか映画館の支配人の挑戦は始まったばかりです。

【2026年5月14日 放送】