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フォロワーやリポストの数が、拡散力を示す指標として裁判で考慮される時代になっている──。

近年、深刻化しているインターネット上の誹謗中傷をめぐって、裁判で認められた賠償額などについて調査した報告書を法務省民事局がこのほど公表した。

●2012〜13年と10年後を比較分析

調査は、人格権侵害などをめぐる裁判で「慰謝料が低い」などと指摘されていることを受け、損害賠償額の実情を把握するために実施された。

対象となったのは、名誉権や名誉感情侵害が認定された裁判例。約10年前の「平成24(2012)・25(2013)年事案」と、近年の「令和4(2022)・5(2023)年事案」を比較分析している。

●名誉権侵害の裁判、10年で4倍近くに

報告書によると、少なくとも対象裁判例においては、約10年間で、名誉権侵害・名誉感情侵害について判決が言い渡された事件数は4倍近くにまで大幅に増加した。

平成24・25年事案では、新聞や雑誌などマスメディア報道による権利侵害が中心で、インターネット上の権利侵害は全体の2割程度にとどまっていた。

しかし、令和4・5年事案では「インターネット上の権利侵害の割合が大幅に増加し、全体の7割程度を占めるに至っている」と指摘している。

媒体別では、「ウェブサイトや電子掲示板に加えSNSやブログが新たに出現」し、件数において上位を占めるに至っていると分析した。

●慰謝料は「マスメディア相対的に高額、SNS低額」の傾向

慰謝料額について、報告書は「マスメディアを媒体とするものが相対的に高額で、ソーシャルメディアを含むインターネット上の媒体によるものが相対的に低額であった」と指摘している。

また、当事者の属性別では「被害者が政治家・芸能人であるものや加害者が記者・報道機関であるものが他の属性と比較して相対的に高額であった」という。

●「フォロワー数」「リポスト数」も増額の考慮に

ソーシャルメディアでの慰謝料が増額される要素に関して、報告書は「侵害行為(投稿等)の回数が多いほど慰謝料額は相対的に高額な事案が増加した」と指摘している。

さらに、SNSを媒体とするケースでは、加害者のフォロワー数やリポスト数などを、拡散の程度を示す指標として判示する裁判例が一定数あるという。

「数万単位など相応のフォロワー数を有している場合には、拡散の度合いが大きいとして増額方向に考慮する裁判例が多くみられた」とまとめている。

また、相対的に高額の慰謝料が認められたケースでは、犯罪行為やその疑惑を指摘したものが多くみられたという。

●謝罪や削除しなかったことが不利に働くケースも

報告書は、投稿後の対応についても触れている。

謝罪や削除などの措置を講じなかったことを慰謝料の増額要素として考慮した事例もみられたという。

一方、匿名投稿の発信者を特定するためにかかった費用については、「実額を一部認容した事案が全部認容した事案を上回った」と報告している。