床が抜けたボロボロ物件、なのに評価額は5000万円? 固定資産税の課税ミス相次ぐ 背景に制度運用の限界【スポットライト】

写真拡大

土地や建物などの所有者に毎年課される固定資産税をめぐり、課税ミスや不適切な評価といった問題が各地で相次いでいる。背景には自治体側の人員や専門性の不足といった課題があるとみられ、納税者が通知内容を確認する重要性が浮き彫りとなっている。

自宅と口座が差し押さえられ・・・

北海道のほぼ中央にある芦別市。駅前には、25年前に閉店した元パチンコ店がある。

閉店の5年後、親からこの物件を相続した南川さんは、想像以上の老朽化に驚きました。

南川さん:
びっくりした。建物見て床は抜けているし、(雨が降ると)滝のように水が流れてくる。

さらに驚いたのは、年間105万円もの固定資産税。

南川さん:
(建物に)5000万円台の評価があって、なんで5000万の価値があるの?と思いましたね。

売却したくても買い手はなし。建物を解体するには3000万円かかるため、高額な税金を払い続けるしかなかったが、ついに限界を超えた。

南川さんは税金が払えなくなり、滞納額が400万円を超えた。5年前、自宅マンションに加え、子供の学費をためた銀行口座まで差し押さえられてしまった。

南川さん:
ゼロになったんです。口座がいきなり。だから、生活費も全くないような状態ですよ。

「損耗」で600万円減額

なぜ、ボロボロの物件に5000万円もの評価額がつけられたのか。

建物の固定資産税評価額を算出するとき、今現在、同じような建物を新築したらいくらかかるか算定した上で、劣化分を差し引く。行政が、この「劣化」をどのように算定するかで評価額は大きく変わる。

建物が、災害や長年の放置で著しく傷んでいる場合に適用される、「損耗(そんもう)」による減価が認められれば、評価額は大きく下がるが、この物件では損耗が認められていなかった。

南川さんが市の第三者機関に不服を申し立てたところ、2024年に損耗が認められ、市長からお詫びの文書が届いた。

建物評価額は、物件相続後、18年がたっておよそ3000万円まで下がっていたが、そこから新たに認められた「損耗」分の600万円が減額された。

各地で課税ミス

固定資産税をめぐっては、多くの自治体で課税ミスが相次いでいる。

埼玉県新座市では、2014年に60代の夫婦が税金を払えず、自宅を公売にかけられた。その後、物件を落札した不動産業者からの指摘で、27年間、税金を多く課税していたミスが発覚した。

これを受けて市が調査すると、同様のミスがおよそ3000件判明し、取り過ぎた税金など8億円あまりを還付する事態になった。

総務省の調査によると、2024年度には94.2%の市町村で課税ミスなど何らかの税額の修正があった。

なぜこうしたことが起きるのか。

取材班は全国20の政令指定都市に、行政側が抱える課題についてアンケート調査を行った。

税額修正の件数についてたずねたところ、ほとんどの自治体が概ね年に数百件程度と回答。中には、年1000件以上と答えた自治体もあった。

修正が生じた理由としては、「すでになくなった家屋の把握漏れ」や、「住宅用地(特例)の適用誤り」といったものがあった。

専門知識を持つ人材の育成を課題に挙げる自治体もあり、「3年程度の人事異動サイクルの中で、複雑な制度を理解し、業務にあたらなければならない」といった事情もみられた。

物件購入後のトラブルも

固定資産税に関する案件を多く扱ってきた弁護士は、自治体の人手の問題を指摘する。

三木義一弁護士:
かなり劣化してる建物なんかは個別に見なきゃいけないので、自治体の職員の人がやりたがらない。人手が足りないから、高い評価のままで済んでしまっているってことも多い。(再評価を)やればやるほど税収は減ってしまう。

固定資産税のトラブルは、古い建物を購入した際にも起きている。

広島県北広島町の山間にある、築47年の元保養所。一見、リフォームされていてキレイに見えるが、壁が全体的に剥がれて、下のほうはビリビリになっており、よく見ると荒れた部分が目立つ。

地元で木材会社を営む佐藤(仮名)さんは4年前、物件を所有していた北広島町から31万5千円で買い取った。

「安すぎる」と感じた佐藤さんだったが、喜びもつかの間・・・。

佐藤さん:
水が出ないっていうのは、全然予想もしなかった。それは約束が違うじゃない。

実はこの建物、2012年に町の所有になったものの、10年間使われていなかった。佐藤さんは「水道が使える」と説明されて購入したが、実際は蛇口から水は出ず、給水管からシャワーのように水が漏れ出していたという。

さらに、建物に入った亀裂から雨漏りし、耐久性も危ぶまれる状態でした。

これは、この物件の「固定資産税納税通知書」で、建物の評価額はおよそ3900万円。土地建物あわせた1年間の固定資産税額は61万円だった。

31万円あまりで買った物件に、倍近い、年間61万円もの固定資産税を請求されたのだ。

佐藤さん:
購入金額もおかしいし、税額もおかしいし、評価もなんかおかしいよね。数字が全然連動しないというか、何の繋がりもない。

佐藤さんは、物件の状況が事前の説明と著しく異なり、価値が適切に評価されていないなどとして2025年に裁判を起こした。町は「評価は適正」と主張している。

税理士による再評価も

建物の評価額がおかしいと感じた場合、どうすればいいのか。

自治体による評価は、税理士に依頼して再評価してもらえるという。

ある商業物件では、自治体による評価と、税理士による再評価で、大きな評価の差が生じ、9年間で6000万円以上も返ってきた事例もある。

各地で起きている固定資産税に関するトラブル。

行政へのアンケートで税額修正のきっかけをたずねたところ、回答があった13の自治体のうち、「納税者からの問い合わせや指摘」と回答したのは10自治体で、最も多い結果となった。

納税通知書が届いたら金額をよく確認し、疑問がある場合は、自治体に問い合わせることが必要だ。
(「イット!」5月13日放送より)