今や日本の食文化を代表する「回転ずし」。

 単なる食事にとどまらず、エンターテインメント性を組み合わせて人々の心をわしづかみにしてきた。近年課題となっている食の安全性やフードロスなどの解決も模索しながら、時代の流れに合わせた進化を続けている。

万博で人気に火、価格競争激化

 にぎりずしは19世紀初頭に江戸で誕生したと言われるが、回転ずし発祥の地は戦後の大阪だ。1958年、現在の大阪府東大阪市にオープンした「廻(まわ)る元禄寿司(ずし)」が、回転式のレーンにすしを載せ始めた元祖だと言われている。70年の大阪万博でも回転ずしは大人気となり、日本中に知られるように。78年に回転式レーンに関する特許が切れると新規参入が続き、各地に広まっていった。

 回転ずしが支持を得たのは、様々なにぎりずしが次々と現れるエンターテインメント的な要素に加え、皿の数や色などで、会計がいくらか分かりやすい点があったためだった。

 すし研究家で清水すしミュージアム(静岡)名誉館長を務める愛知淑徳大の日比野光敏教授は、「その日のネタの仕入れ具合で価格が変わるという、ハードルの高い従来のすし店のイメージを払拭(ふっしょく)し、気軽にすしを食べられるようにした功績は大きい」と話す。

 にぎりずしが特別な日の食べ物から一般的な外食のひとつへと変化するにつれ、「1皿100円」といった価格競争などの店同士の争いは激化し、技術革新も進んだ。

 湯飲みをレバーに押し当てると熱湯が出る給茶機はその一つ。回転レーン製造大手の石野製作所(石川)が開発した。銭湯の蛇口を参考にしたという。

 他にも、1時間に最大4000個以上のしゃりを握れる「すしロボット」や、皿に埋め込んだICチップを機械で読み取ることで枚数の計算ができるシステムも登場。「回転寿司の経営学」(東洋経済新報社)などの著書がある回転ずし評論家の米川伸生さんは「店の効率化を図るだけではなく、客のクレームにも対応することで回転ずしは進化を遂げていった」と話す。

 近年では「安心」「安全」も求められている。厳しい衛生管理が必須となり、一定時間回ったすしは廃棄される仕組みに。また、廃棄による食品ロスが批判されるようになると、客の数や滞在時間を計算し、レーンに流す皿の数を最適化する管理システムなども登場した。

 一方、コロナ禍や客による迷惑行為が問題になったことで、最近では「回らない回転ずし」が増えている。タッチパネルで注文されたすしを専用レーンで届けることで店員や他の客との接触回数を減らせるだけでなく、見込みですしを用意する必要がなくなり、さらなる食品ロスや人件費の削減につながる。

 もっとも、あるチェーン店の広報担当者は「色々なすしを見ながら選ぶ楽しみこそが回転ずしの本質だ」と打ち明ける。大手チェーン「くら寿司」では同社独自の透明な抗菌カバー「鮮度くん」ですしを覆い、従来の回転レーンを維持している。また、「スシロー」も席に設置されたパネル上に流れるすしの画像をタッチすると注文できる「デジロー」の導入を進めている。

 全国の回転ずし店の数は2024年時点で4000を超え、その市場規模は約8300億円に達した。インバウンド需要を見込んだ高級店も登場するなど価格帯でも多様化は進む。米川さんは「地産地消のネタを出すなど個性ある地方のチェーン店も可能性を秘めている。すしのおいしさを大事にしている、わざわざ足を運ぶ価値のある店が求められているのでは」と分析している。