「将棋界は斜陽産業」伝説のスピーチから約20年…中村修九段が明かす糸谷哲郎九段の素顔と有言実行の“挑戦”

将棋の第84期名人戦七番勝負第2局が4月25日、青森県青森市の「ホテル青森」で行われている。防衛と4連覇を目指す藤井聡太名人(竜王、王位、棋王、王将、棋聖、23)に、糸谷哲郎九段(37)が挑戦する大注目のシリーズ。ABEMAの中継では、解説を務める中村修九段(63)が出演し、糸谷九段が約20年前に放った“衝撃発言”とその後の歩みについて熱く語る一幕があった。
糸谷九段といえば、高校3年生だった2006年度に新人王戦で優勝を果たしている。東京の日本青年館で囲碁と合同で行われた就位式で、当時10代の若者が放った挨拶は将棋界を騒然とさせた 。たまたま会場に居合わせたという中村九段も、その挨拶を聞いて衝撃を受けた一人だ 。「『将棋界は斜陽産業ですので』って、有名な話です。当時そこで聞いてびっくりしましてね。その後の話が何も入ってこなかった」と、当時の驚きをありのままに振り返った 。

しかし、若き日の糸谷九段が語ったスピーチには、実は続きがあった。「将棋界は斜陽産業である。僕たちの世代で立て直す」――。若くして優勝した舞台で、あえて現状への危機感を口にし、自らの手で未来を切り拓くという強烈な決意表明だったのだ。中村九段も「若くて優勝した時にそれを言う。すごいなと思って」と、その度胸と志の高さを称賛している 。
その言葉は、決して単なるビッグマウスでは終わらなかった。中村九段は「彼は強い意識を持って、ずっと普及の方にすごく力を尽くしてきた」と語る 。関西を中心に若手棋士へ将棋を教えたり、様々なイベントを立ち上げたりと、中心となって精力的に活動してきた 。さらに棋士会の運営にも携わり、「本当に頭がいいですから、何でも難なくこなしてくれて、どうしても彼にみんな任せちゃうんですよね」と、周囲から絶大な信頼を寄せられ頼りにされている素顔を明かした 。
そして有言実行の歩みは続き、2025年6月からは日本将棋連盟常務理事に就任。昨年度から理事という重責を担いながら 、同時に最高峰の舞台である名人戦の挑戦者として盤上でも結果を出している。中村九段は、対局前日の前夜祭での様子にも触れ、「本当は彼自ら先頭に立って(地元の市長らと)いろいろお話とかもしたかったと思うんですよ。理事としてね。でも対局者なんで、ある程度早い時間に集中してもらわなきゃ困る」と、普及への熱意とプレイヤーとして体を休めなければならない立場の間で揺れる様子を代弁した 。

「人一倍、この名人戦を盛り上げようとしているのは、対局者であると同時に、理事であると同時に、やっぱり一人の棋士としての意識の高さですよね。得難い棋士だなといつも思います」と目を細めた中村九段 。
約20年前に「僕たちの世代で立て直す」と宣言した青年は今、将棋界の更なる活性化の陣頭指揮を執りながら、最強の王者に全身全霊でぶつかっている。盤上の熱戦はもちろんのこと、将棋界の未来を背負って立つ糸谷九段の生き様そのものに、多くのファンが胸を熱くしている。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
