2026年3月22日、相鉄本線和田町駅から3〜4分歩いたところに小さな立ち食いそば屋がオープンした。店名は「立喰いそば・うどん 日下部和平」。苗字や名前の一部を使った店名は多いのだが、フルネームを使ったそば屋はあまり記憶にない。らーめん屋ならかつて世田谷区上野毛の近くに「スズキヤスオ」という店があったが、記憶にあるのはそのくらいだ。どんな店主が始めたのか、さっそく訪ねてみることにした。  

【画像】 「イカツイおじさん店主かと思いきや…」保土ヶ谷にできた“ナゾ店名”のそば屋 『日下部和平』の店主、そば、内外観を写真でまとめて見る

座って食べる立ち喰いそば屋

 和田町は相鉄本線各駅停車で横浜駅から5つ目の駅。


相鉄本線和田町駅

 改札を出て階段を降りると、駅前を帷子川が流れていてのどかな雰囲気だ。

 和田町商店街を北に進んで八王子街道に出たら右折する。

 1分ほど歩いたところで右側にそばうどんの看板がみえてきた。

 半信半疑だったのだが本当に「立喰いそば・うどん 日下部和平」と書いてある。

「座って食べる立ち喰いそば屋」「ドアを開けてみて 入口はこちら 知らないドア開けるのって勇気いるよねぇ」と書いてある。なんだか不思議だ。

「イカツイおじさんだったら怖いな」とおそるおそる入店してみた。 

店主はまさかの… 

 すると先客はいない。そして「いらっしゃーーーい」とトーンの高い声が響いてきた。

 店主の坂従(さかより)晴美さん(55歳)。なんと女性の方だった。想像と真逆でちょっと焦った。

 気を取り直して、店内を見渡すと、カウンター4席、テーブル4席の落ち着いた雰囲気。天ぷらは自家製で、かき揚げやごぼう天が並んでいた。 

 おしながきはシンプル。

「わかめそば」450円、「月見そば」「たぬきそば」「きつねそば」各500円、「かき揚げそば」「ごぼう天そば」各550円、「肉そば」「かき揚げ天玉そば」各650円。

 それに「いなり」100円、「おむすび」「ごはん」各150円。

 かき揚げがおいしそうだったので「かき揚げ天玉そば」と「いなり」を注文してみた。 

一風変わった店名の由来 

 注文した商品ができあがるまでの間、開店の経緯などをきいてみたのだが、それがすごく面白い。 

 まず、なぜ「立喰いそば・うどん 日下部和平」という店名にしたのかきいてみた。普通なら名前の一部を使って「晴れそば」とか「そば晴美」とかを思いつくはずだ。

 すると坂従店主は「突然思いついた」というのである。どうも意表を突く名前にしたかったようだ。 

 坂従店主はチェーン店で修業してきたそう。40代は高速道路PAの飲食関係会社に勤め、調理部門やホール接客などあらゆる部門を経験してきたという。そして、50代になると、中堅そばチェーン店で働いた。そば以外も、そばも、しっかりノウハウを身につけてきた。そして「大勢の職場で働くより、手足を伸ばしやすい自分のやりやすい環境で仕事がしたくなって独立を考えた」というわけである。 

「かき揚げ天玉そば」を食べていると思い出した“あの一杯” 

 そんな話をしていると「かき揚げ天玉そば」と「いなり」が登場した。

 まず、つゆをひとくち。おお、これはうまい。薄口醤油を使っている。出汁は昆布、鯖、鰹節、鰯、ムロ鯵などの混合節、いりこで出汁をとっている。そばは大手製麺所の茹で麺だが、やや太い麺でコシもあってなかなかよい。坂従店主はこの茹で麺にこだわったとか。

 かき揚げは揚げ置きだが、カラッと揚がっていてつゆに徐々に溶けていく。そばとつゆ、そして天ぷらのバランスがよい。また、うつわは鶯色と白色のツートーン。この味でこのどんぶり模様。どこかで食べたことがある。そうだ。東急大井町線の旗の台駅近くにあった「だし家」の一杯ととても似ているのだ。「だし家」は2017年7月31日に大将の病気により突然閉店した店なのだが、急に当時のことを思い出した。 

「だし家」は荻窪で「いちふじ」を経営していた大将が始めた店で、自家製のしょうが天、薄口醤油を使った出汁が利いたつゆがたまらなくうまかった。

 和田町に来て、まさか「だし家」の味を思い出すとは。ちょっとしんみりしてしまった。 

「いなり」はしっかりと炊いたお揚げがしみしみでなかなかうまい。あっという間に食べてしまった。 

このつゆはうどんにもよく合っている 

「きつねうどん」を追加注文。注文の品ができあがるまで、またいろいろ聞いてみた。 

 まだ開店から1ヵ月も経っていないからか、十分に認知されていないのか、足を運んでくれるお客さんはまだまだ少なく、厳しい状況が続いていると坂従店主は話す。

「でも、急に4〜5人で入店されるとパニクってしまって、それはそれで慣れていかないと」とまだまだ試行錯誤が続いているという。

「きつねうどん」がほどなく登場した。きつねとねぎがのったシンプルなものである。このきつねが十分に甘辛く炊いてあり、うまい。うどんと薄口醤油のつゆとの相性は抜群だ。

 とにかくつゆがうまい。 

取材を終えて雑談をしていると“ご婦人”が… 

 最後に坂従店主から挨拶をいただいた。 

「まだオープンして間もないので、まだまだ落ち着かないオペレーションが続いています。ポスティングなどもしていないので十分認知されていませんが、持ち前のコミュニケーション力で頑張っていこうと思っています。

 出汁は毎日、しっかりととっています。天ぷらも自家製で揚げています。これから暑い季節になれば、冷しなどのメニューも少しずつ増やしていこうと思います。和田町駅にお越しの際は是非、お立ちより下さい」

 取材を終えて雑談をしていたら、すでに常連になっている近所のご婦人が入店してきた。坂従店主は楽しそうに対応していた。そのご婦人のひとことが印象的だった。

「こちらの店主は味も接客もしっかりしているから、大丈夫よ。おいしいし頑張っているからいつも応援してるの」 

 チェーン店で実績を積んできた坂従店主が、自分でやりたいような店を始めた。しかし、まだまだ不安なことも多いだろう。試行錯誤は続いていくと思う。どうか頑張って繁盛店に仕上げていってもらいたい。応援していこうと思う。 

 次回は、「ごぼう天そば」と注文してからつくる「おむすび」を食べてみよう。冷しそばも始まっていると嬉しいな。 

INFORMATIONアイコン

「立喰いそば・うどん 日下部和平」 
住所 神奈川県横浜市保土ケ谷区和田1-11-20 
営業時間  6:00〜14:00(月〜金)/6:00〜11:00(祝) 
定休日 土日 
https://www.instagram.com/kusakabe__wahei/ 

(坂崎 仁紀)