「脳トレがあなたの脳を腐らせる」英ケンブリッジ大学教授が警告…脳の老化をほんとうに防ぐ《最新常識》
'25年11月、イギリスの科学雑誌『Nature Communications』に驚くべき論文が掲載された。人間の脳は9歳、32歳、66歳、83歳を境に5つの段階に分けられ、質的に大きく変わることを明らかにしたのだ。
年齢による脳の老化は、抗おうと思ったところでなかなか難しい――。しかしその流れを食い止めて、スピードを遅らせることは可能だ。
【前編記事】『《脳の老化タイミング》ついにわかった…!「66歳と83歳で急速に老けます」ケンブリッジ大学の研究で判明』よりつづく。
「超加工食品」は絶対に避けるべき
脳がどんどん老けていく人がいる一方で、いつまでも老けない人もいる。その分かれ道を決める要因は、以下でも紹介していくように様々だ。
たとえばその一つが食習慣である。英ケンブリッジ大学教授で、認知神経科学の専門家であるダンカン・アストル氏は、「地中海型の食生活」が脳を若々しく保つと話す。
「豆類やナッツを多めに摂取し、油はバターではなくオリーブオイル、たんぱく質は肉ではなく魚を中心にしましょう。そうすることで、脳内での炎症を抑えて血管の機能を維持し、脳の劣化を緩やかにできます。逆に脳の炎症を加速させるので、インスタント食品やジュースといった、『超加工食品』は避けるべきです」
加えて、「たんぱく質を摂る際は脂身も同時に摂取すべきだ」と指摘するのは、おくむらメモリークリニック院長の奥村歩氏だ。
「年をとると、どうしても脂っこいものを敬遠してしまうものの、脂肪も適度に食べたほうがいい。電柱を伝う電線はビニールの絶縁体で覆われていますが、脳の神経ネットワークでその役割を果たしているのが、脂肪でできた『ミエリン鞘』です。脂を摂らないとこのミエリン鞘が劣化し、脳の情報伝達スピードが遅くなるうえ、認知症のリスクまで高まってしまいます」
食事と同じく脳の老化を左右するのが、毎日の運動だ。前出の瀧氏が解説する。
「筋トレやスクワットが有効なのは言うまでもないですが、よく推奨されている『1日1時間の運動を週に数回』というのは、年齢を重ねるとハードルが高いでしょう。その代わり、たとえばエスカレーターに乗る代わりに階段を使うといった低強度の運動でも、脳の健康につながる可能性が示唆されています」
「脳トレはかえって脳の働きを弱める」
脳の活性化というと、誰しも「脳トレ」を思い浮かべるのではないか。しかし前出のアストル氏は、その効果を過信しないよう注意を促す。
「66歳を過ぎると、特定の機能ばかりを偏って使うのではなく、脳全体を稼働させなければ、老化を食い止められません。単調なパズルや間違い探しは、脳の一部分の機能しか使わないため、複数の分野にまたがった働きを弱めかねないでしょう」
脳トレの代わりにアストル氏が強く勧めるのは、料理だ。
「効率がいい調理の手順を考えて、複数の作業を同時並行ですることで、前頭葉を中心に脳の幅広い領域が活性化されます。誰かと話しながら作ると、言語理解を司る側頭葉も働いてなお効果が高いでしょう。
またその前段階の買い物も、実は脳を使う絶好の機会です。冷蔵庫の残り物を思い出しながら食材を選んで、レジで合計金額やお釣りを計算する過程で、脳の様々な部位が使われるわけです。あえて予算を3000円に限るなど、制限を設けるのもいい。決まった金額の中で買うよう意識すると、計算能力や記憶力はもちろん、意思決定に関する部位も刺激されます」
青春時代の曲が幸福感を高める
加えて最近の脳に関する研究では、「主観的幸福感」が注目を集めている。自分自身が幸福だと感じることで、脳も健康に保たれるわけだ。
「幸福感が高まるとストレスレベルが下がり、動脈硬化性疾患などのリスクも低下するため、脳の健康につながるとわかっています。人間が幸せを感じるわかりやすいパターンが、利他的な行動、つまり他人のために何かをしたとき。年齢を重ねると電車で席を譲られる機会が増えるかもしれませんが、脳のことを考えるならば、実は席を譲ることにもメリットがあると言えるでしょう」(前出の瀧氏)
さらにノスタルジーを覚えることも、幸福感につながる。
「青春時代に流行ったJ-POPを聞きながら、『この曲は当時の恋人と聞いたな』『あの人はいま何をしているのかな』と、思い出してみましょう。昔の音楽をきっかけに当時の他者とのつながりを想起することで、いわゆる報酬系のドーパミンが分泌され、幸福感が高まります」(瀧氏)
脳の老化スピードを左右する要因は、暮らしのちょっとした隙間に隠れているのだ。
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「週刊現代」2026年4月27日号より
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