「みんなの年俸を上げてあげたい」棚橋弘至社長が明かす契約更改の苦悩と“辞める選手”への本音
新日本プロレスの人気プロレスラーにして「100年に一人の逸材」と言わしめ、プロレスラーを引退したばかりの第11代社長(’23年12月就任)棚橋弘至が、日々の激務のなかでひらめいたビジネス哲学を綴っていく。今回は「契約更改」について。選手の気持ちも、会社の事情もわかる立場として、棚橋社長は2月の時点で何を思っていたのか。「みんなの年俸を上げてあげたい」――その本音の裏にあった葛藤と、たどり着いた結論とは。以下、当時寄せられた原稿を掲載する。
◆vol.63 契約更改の季節!“選手兼社長”だった棚橋ならではの悩み
一気呵成に盛り上げていきたいところではあるのですが、実はこの1〜2月は、社長として、とても悩ましい期間となります。
それは、選手の契約更改があるからです。
プロレス界において選手は基本的に1年契約の年俸制を取っています。1年間の活躍を評価して、次の年の年俸額を決めるわけです。
僕も現役のときは、血気盛んに、この契約更改に臨みました。会社から提示された額が、自分のその時点での評価だからです。次の1年に対する、モチベーションにも繋がりますからね。
選手として、どういった気持ちで契約に臨むのか……それがわかってしまうので、「みんなの年俸上げてあげたいなぁ」と、どうしても思ってしまいますが、そういうわけにもいきません。会社として予算内での選手のギャラの枠は、おおよそ決まっていて、そこで選手と会社の交渉が始まるわけですね。
本来、この契約更改の場には社長が同席するのが通例ではありますが、僕は今年の頭まで「選手兼社長」だったこともあり、他の選手の年俸額を見てしまうのは、ちょっとデリカシーがない……。なので、今回まで菅林会長にやっていただくことになりました。
ファンの皆さんは、今のメンバーで、ずっと頑張ってほしいという思いがきっとあるでしょう。
しかし、’24年には中心選手であるオカダ・カズチカが辞め、’25年には内藤哲也が辞め、そして今年はEVILが辞め、続いて高橋ヒロムも2月11日大阪府立体育会館大会を最後に新日本プロレスを去ることとなりました。
ここ数年で、中心選手が次々と辞めていく……。
新日本プロレスに何かしら問題があるんじゃないか?と思われてしまいそうですが、そうではないのです。
プロですから。自分をより高く評価してくれるところに行くのは、選手としては当然の選択。ただ、選手に共通して言えるのは「新日本が嫌で辞めるわけではない」ということです。
新日本を去っていく選手には「新日本で大きくなった」という気持ちがあり、最後は皆、感謝の言葉を口にします。
来年以降、選手の契約更改は僕がやることになると思います。口癖が「昇給!」なので、もちろん「ギャラは上げてあげたい!」。
その気持ちをどこまで抑えられるかがポイントになるでしょう……。
いや、しっかり売り上げを伸ばして、良い金額を提示するだけですね。
なので、皆さん、たくさんグッズを買って、新日本プロレスを何度も観に来てください!(大声で)
◆今週のオレ社訓 〜This Week’s LESSON〜
口癖の「昇給!」を実現すべく、しっかり売り上げを伸ばす!
<文/棚橋弘至 写真/©新日本プロレス>
―[新日本プロレス社長・棚橋弘至のビジネス奮闘記〜トップロープより愛をこめて]―
【棚橋弘至】
1976年生まれ。新日本プロレスの第11代社長(’23年12月就任)。’26年1月4日を以て現役を引退。キャッチコピーは「100年に一人の逸材」
