なぜトクリュウは逮捕されないのか?…あの手この手で一般人を破滅させる「特殊詐欺」の想像を超えた多様化
かつて20万人もの構成員を擁した暴力団。
覚せい剤の輸入や賭博、みかじめ料の徴収で莫大な収益を上げ、1980年代の年間収入は推計8兆円に達したと言われる。だが平成に入って以降、暴対法の制定や警察の行き過ぎた捜査、メディアによる批判的な報道が原因となり、暴力団は衰退の一途をたどってきた。
では、暴力団が社会から消えていくことは、我々一般国民にとって「良いこと」だけなのだろうか?しばし「必要悪」として語られてきた“やくざ”の実態を、『やくざは本当に「必要悪」だったのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
変化し続ける特殊詐欺の手口
こうした匿流の実態はその前身である半グレが手を出していたオレオレ詐欺の歴史を見なければわかりにくい。本来、特殊詐欺の大本は山口組五菱会のヤミ金に始まっている。
闇バイトに応募する者を愚か、社会常識に欠けた奴らと切り捨てることは可能だが、彼らは憎むべき加害者である反面、闇バイトで募集する者の多くは匿流、半グレなのだが、そうした匿流の犠牲者ともいえる。応募者は匿流にとって「切り捨て要員」であり、決して仲間内の人間ではない。闇バイトによる凶悪犯罪の元凶が匿流であることを忘れてはなるまい。
匿流が犯す犯罪の形は日ごとに変化している。その犯罪の源流は2000年代初期に始まるオレオレ詐欺と見られるが、匿流グループが当初から保持してきたモットーは「ともかくカネにする」「絶対逮捕されない(前科者にならない)」「匿名のまま押し通す」だったと総括できる。
これまで彼らが手を染めてきた主な犯罪としては特殊詐欺の他、イラクの通貨ディナールの持ち込み詐欺、危険ドラッグ、金インゴットの無税密輸入、暗号資産の詐取などがあるが、いずれも彼らが最初に始めたことであり、ロートル化した暴力団に比べ、彼らには新しいシノギを創建する力があるといっていい。
オレオレ詐欺にしても初期の頃にはホームレスなどから住所と名前を借りて銀行口座を開設し、それを受け口座にしてターゲットをだまし、ATMで被害額を振り込ませていた。その後、ATMでの携帯電話不使用という銀行の規制が強まり、現金や電子マネーでの授受(ここで「受け子」役が発生)に変更された。
全てはターゲットから金を引き出すために
ダマしに使うツールも当初のトバシの携帯からIP電話に変化し、現在では発信元を警察署の代表番号にすり替えられるほど変身している。
詐欺話の筋書きも多様化した。子や孫が会社のカネを使い込んだ、彼女を妊娠させた、交通事故に遭った、「お母さん、助けて」から、今では警察や銀行を名乗り、「あなたのカードが悪用されている」「あなたのカードを悪用した犯人を捕まえた」「このままだとあなたの口座からお金を引き出されてしまう」「あなたに逮捕状が出ている」「医療費の払い戻しがある」「あなたに還付金がある」などと多様化している。
前にも記したが、詐欺電話を架ける役はふつう「架け子」といい、詐欺グループの中枢部を占めるが、そのアジトは繁華街のビルの角部屋、それもできるなら防犯カメラが設置されていないなどの希望条件がある。というのは、話の筋書き上、どうしても息子や孫役ばかりか、上司、警察官、弁護士役などが入れ替わり立ち替わり電話し、ターゲットを急き立て、早め早めに現金を用意させる必要があるからだ。
詐欺電話は集団で行ったほうが説得力も迫力も出る。そのためアジトには多くの若い男性が出入りするが、これは警察の不審を呼ぶ理由になる。よって最終的に匿流は事務所難になり、東南アジアなどに要員ごと移転するケースもある。
【後編を読む】カネのためなら「強盗殺人」も厭わない…「特殊詐欺の3種の神器」に恵まれなかった匿流グループの“闇バイト応募者”が辿る末路
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