親の介護で16年…その後の人生への絶望「全く計画も立てられず、残ったのは老化だけ」社会が支えるべき課題は

長年の介護の末に、親を看取る…しかし、苦労から解放されたその先に “人生の再出発”はなかった。16年にわたる母親の介護を終えた石橋和美さん(48)。
【映像】84歳母のお尻にこびりついた便を拭き取る様子(実際の映像)
3年前、『ABEMA Prime』に出演した彼女に、その後の人生について話を聞き、社会が支えるべき課題を専門家とともに考えた。
■16年にわたる介護の果てに「残ったのは老化だけ」

石橋さんは、当時について「とにかく大変だった。自分の人生よりもまず母の体調。私が苦しくても、母の体調を優先しないと人手なしになるし、病院からも何か言われる」と振り返った。
周囲の目を気にせざるを得ない状況もあり、施設で入浴する際にアザがあると「虐待ではないか」と確認のための写真を撮られることもあったという。
自治体によっては施設へは「入居待ちが300人、500人とザラにいるのが実情だ」。ケアマネジャーの紹介で施設への入居が決まった際は、「ほっとした。やっと入れたと思った」と語る。
しかし、母親は施設に入居して2カ月で亡くなった。介護生活が幕を閉じた心境については、「心の整理がなかなかできていない。次の目標をどうしようとか、全く計画も立てられず、残ったのは老化だけ。ポジティブにはなれない。疲労というより疲弊だ」。
そして、「16年といったら、生まれた子どもも高校生になる年月だ」と話し、かつて思い描いていた「介護が終わったらフルタイムで働く」という目標も、年齢や気力の減退から「現状は厳しい」と肩を落とした。
現在、石橋さんは、医師からうつ病と診断され、生活保護を受給している。
■「ポストケアラー」が直面する喪失感と健康被害

介護を終えた人へのメンタルケアを行うNPO法人介護者サポートネットワークセンター「アラジン」理事長の牧野史子氏は、「介護が終わった方に訪れるのは喪失感だ」と指摘する。
「親を失った喪失感だけでなく、自分の役割が介護だけだった場合、その役割を失った喪失感もある。仕事をなくし、経済的に不安定で、心身の健康を崩している方が非常に多い」(牧野氏)
さらに、「今の日本では、ケアラー自身のことには注目が集まらず、本人も自分をケアできない。我々が見ている中では、30代や40代の若さで癌になる方も大変多い」と過酷な環境に警鐘を鳴らした。
石橋さんは、過去に母に対して「捨てられるなら捨てたい」と思っていたが、「行政が許してくれない。『誰が面倒を見るのか?』と言われたら私になる。『義務でしょ』と言われる」と苦しかった胸の内を語った。
■「とにかく人と繋がり、『助けて』と伝えてほしい」

牧野氏によれば、2040年には多死社会を迎え、介護離職や社会復帰の難しさがさらに深刻化するという。「仕事や人生のことをワンストップで相談できる『ケアラーセンター』のような場所が必要だ。イギリスなどの支援が進んでいる国では、ケアラー自身をアセスメント(評価・診断)し、就職相談やリハビリを行う仕組みがあるが、日本にはまだ窓口が全くない」と、制度の遅れを強調する。
日本には「子どもが親の面倒を見るのが美徳」という価値観があるが、石橋さんは「子どもの頃から『あんたが私らの面倒を見るんやで』と言われて育った」と明かす。
牧野氏は「70代以上にはその価値観が根深いが、60代以下は『自分のことは自分でやる』と変わりつつある。社会を啓発していくしかない」と述べた。
現在、ワンオペで介護に奔走している人々に対し、石橋さんは「自分を責めないでほしい」。牧野氏は「まずは介護者支援をやっている団体や、介護者が集まる会、認知症カフェなどを探してほしい。とにかく人と繋がり、『助けて』と伝えてほしい。そうすれば、必ず手を差し伸べてくれる人がいる」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
