この記事をまとめると

■ミニバンやSUVへ需要がシフトしたことから3BOXセダンが姿を消しつつある

■クーペ風デザインが主流となりセダンの魅力がより希薄化した

■VIP用途もミニバンへ移行したことでいっそう市場の縮小が進んでいる

なぜ3BOXセダンは消えたのか

 最近、ボンネット・キャビン・トランクが明確にわかれている3BOXタイプのスタイリングをもつセダンが少なくなっている。多くのクルマがひしめく商業施設などの駐車場を見ればそれは明らか。もちろん、5ドア車が主流というのも大きい。たとえばマツダの4ドアセダンはマツダ3セダンのみのラインアップである。

 ホンダのセダンであるアコードも、ルーフ後端からなだらかにカーブを描く、3BOXとは明らかに違うクーペに近いスタイリングでスタイリッシュさを演出。トヨタでセダンタイプに分類されるモデルも4ドアクーペと呼んでいいスタイリングが多く、それはプリウスを見れば明確だ。欧州に目を向ければ、最新のVWパサートはそれまであったセダンを廃止し、ステーションワゴンのヴァリアントのみのラインアップにしたほどである。

 それにしても、なぜ3BOXタイプのセダンが衰退したのだろうか。まずはユーザーが、セダンの王道スタイルよりも実用性を求めているからだろう。つまり、ミニバンやSUVの台頭がきっかけだ。

 セダンより広い室内空間や高い天井がもたらす乗降性のよさ、さらに荷室の広さやシートアレンジによる使い勝手が多くのユーザーに受け入れられている。日本でいえば、1990年代のホンダ・ステップワゴンやオデッセイの登場以降ミニバンブームに発展し、それがいまでも続いているのは誰の目にも明らかだ。

 かつての「セダンがクルマの基本」という時代を知らない世代の自動車ユーザーなら、3BOXセダンは「親父っぽい、古臭い」というイメージをもたれ、なおさら選ぶ理由がない。実際、上記のVWパサートのように、量産車の場合、セダンは廃止される傾向にあるのだ。

 そうしたトレンドを引っ張るのが、セダンでもワゴンでもミニバンでも純粋なクーペでもなく、泥臭くゴツゴツとした本格SUVとも違う、スタイリッシュなクーペSUVの出現だ。2019年に登場して大ヒットしたトヨタC-HR、三菱エクリプスクロス、マツダCX-30、輸入車ではメルセデス・ベンツ GLEクーペ、BMW X6がそのパイオニアだ。

デザイン性と実用性を両立する選択肢が増えた

 4ドアで荷物の積載性にも優れたクーペスタイルのSUVが登場ともなれば、3BOXタイプのセダンの居場所は、特定の条件以外ではないに等しい時代になったということだ。VIPの移動車が高級セダンからアルファードへの乗り換えが顕著なのも、3BOXセダン衰退に拍車をかけている。

 実際、3BOXのスタイリングよりクーペスタイルのほうが圧倒的にカッコよく魅力的であり、購入意欲をそそる。クーペSUVともなれば、室内や荷室の広さ、アレンジ性を含む使い勝手のよさも光る。

 SUVタイプゆえの開けた視界や走破性の高さも備わり、なかには全高1550mm以下のクーペSUVもあり、立体駐車場への入庫も可能なのだから、もう3BOXセダンの出番がないほど万能といっていい。令和のデートカーとしてSUVがもてはやされているのも当然のことだろう。

 そして、超スタイリッシュなプリウスに代表されるよう、なだらかにルーフ後端が下がるクーペ風のスタイリングを纏うクルマのほぼ唯一の欠点といえる、後席の乗降性や頭上方向の余裕のなさも、日本を走るクルマの平均乗車数1.5人というデータ、2名乗車の多さ、4人家族で後席は小さい子どもの特等席……というカーライフのメインストリームを踏まえれば、クーペ風のセダン・SUVでも決定的なデメリットにはなりにくいのである。実際、プリウスは売れていることからもそれは明らかだ。

 つまり、3BOXセダンの衰退は、1990年代以降のミニバン・SUVの人気や、スーパーハイト系軽自動車の買いやすさ、それに加え後席重視のVIPカーとしても人気なアルファードに代表されるハイエンドミニバンへの移行があって、そこに実用性やスタイリッシュさなど多くの魅力をもつクーペSUVが登場したことによって、トドメを刺されたということになるだろう。