【警告】PCとスマホの「ダブルスクリーン」が脳を壊す! 気づかぬ疲労の正体

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PCで作業しながらスマホを触る。そんな「当たり前」の習慣が、脳をじわじわと壊しているかもしれない。

「スマホの見すぎはよくない」。そう言われ続けてきたし、自分でもわかっている。デジタルデトックスという言葉も広まり、意識的に距離を取ろうとする人も増えてきた。

それでも、気づけばスマホに手が伸びている。仕事中になんとなくSNSを開いて、PCに戻って、通知が来ればまたスマホを見るの繰り返し。

こうした「ダブルスクリーン」の習慣は、脳にどんな影響を与えているのか。デジタルデトックス協会理事の森下彰大氏に聞いた。

疲労の正体は「脳へのダメージ」

スマホの見すぎが身体に悪いことは、なんとなく知っている。目が疲れる、首が痛くなる、寝つきが悪くなる。こうした不調は、すでに多くの人が実感しているだろう。

一方で、PC作業が長時間続けば、肩こりや眼精疲労に悩まされる。こちらも「デスクワークあるある」として広く知られている。

だが、森下氏が最も問題視しているのは、目でも首でもない。「脳へのダメージ」だ。

「例えば、右手でダンベルを上げながら、左手でも上げてみると、すぐにしんどくなりますよね。でも、脳はそういうイメージがつきにくい。つまり、私たちが当たり前のようにやっているPCとスマホのダブルスクリーンは、脳に大きな負荷をかける行為なんです」

さらに厄介なのは、その疲れを自覚しにくいことだ。

「肉体と違って、脳の疲労はボディブローのように後から効いてきます。最初は少しイライラする、仕事の進みが悪くなるといった程度ですが、それが蓄積されると燃え尽きのような状態になってしまう。場合によっては、メンタルヘルスの問題につながる可能性もあります」

気づかないまま、じわじわと削られていく。それが、ダブルスクリーンの怖さだ。

ダブルスクリーンを日常的に行っている人の中には、「自分はマルチタスクが得意だから大丈夫」と考えている人もいるかもしれない。だが、その認識には注意が必要だ。

「ユタ大学の研究では、マルチタスクが本当にできる人間は全体の2%程度という結果が出ています。さらに、自分は得意だと思っている人ほど、実際には効率や生産性が低い傾向があることもわかっています」

そもそも、私たちが「マルチタスク」だと思っているものは、脳科学的には「スイッチタスク」と呼ばれる動作だという。

「車でいうと、ブレーキを踏んでからアクセルを踏むようなものです。AをやっているところにBが入ってくると、Aを止めてBに切り替え、またAに戻る。この停止と発進を繰り返しているのが、ダブルスクリーンなんです」

「マルチタスクができている」という感覚と、実際のパフォーマンスは別物だ。得意だと思い込んでいる人ほど、知らないうちに脳を酷使し続けている状態にある。

画面1枚でも危険な「ながら」

ここまで読んで、「画面を2枚使わなければいい」と思った人がいるかもしれない。だが、森下氏の見立てはそう単純ではない。

「IT系のPCワーカーが一つの作業に取り組んでいる時間は、平均11分という調査結果があります。たとえ画面が1枚でも、文章を打ちながらSlackを確認し、Gmailをチェックし、別のタブに移る。そうやって作業を行き来していれば、それはダブルスクリーンと変わりません」

問題の本質は画面の枚数ではない。「ながら」そのものにある。

そしてこの「ながら」は、仕事中だけの話ではない。

帰宅後、リビングでテレビを見ながらスマホを触る。電車でも、歩きながらでも、トイレでも画面を見る。まるで、曲芸師が何枚もの皿を同時に回し続けるように、脳が一度もオフにならないまま、1日が終わっていく。

「よく『スマホを見る時間は1日何時間以内にすればいいですか?』と聞かれるのですが、長さよりも『ながら』をやめたほうがいいと伝えています。仕事中はある程度のスイッチングが避けられないので、余暇の時間から減らしてみるといいと思います」

「ながら」が止まらない背景には、日本のビジネス文化もある。「即レス」が求められる環境では、メールやSlackなどの通知が来るたびに確認せざるを得ない。作業中でも休憩中でも、脳は常に反応を求められている状態になる。

実際、カリフォルニア大学の研究では、メールを頻繁にチェックする人ほど心拍数が高く、常に緊張状態にあることがわかっている。

一方で、5日間メールを遮断した実験では、画面の切り替えが減り、集中時間が延び、ストレスも下がったという。

「メールをこまめにチェックする人ほどストレス反応が高く、1時間に平均37回も画面を切り替えていました。5日間メールから離れた人たちは、『ほとんどのメールは、そこまで急いで返す必要がなかった』と話していたそうです」

対策は「トイレのスマホ」断ち

では、仕事中の中断はすべて避けるべきなのか。森下氏は「そうではない」と言う。

「中断には、“いい中断”と“悪い中断”があります。例えば、作業に関連する簡単な確認のやり取りは、むしろ気分転換になるいい中断です。問題は、高い集中力が必要な、しかも今やっている作業とは関係のない案件が割り込んでくる場合です。何かに集中して作業しているときに、関係のないメールに気を取られて、返信しなきゃとなるのが、まさにそれですね」

大切なのは、中断をゼロにすることではない。脳をきちんと休ませる時間を、こまめに作ること。そのために知っておきたいのが、『注意資源』という考え方だ。

「人が1日に使える集中力には上限があります。スマホの充電と同じで、使えば使うほど減っていく。これを『注意資源』と呼びますが、現代はSNSも広告も、いかに人の注意を引くかという競争をしています。私たちは常に、あらゆる方向からエネルギーを奪われているのです」

注意資源が減ると、判断が曖昧になったり、些細なことでイライラしたりする。こうした状態が続くと、仕事のパフォーマンスにも影響が出てくる。

それは、「仕事ができないのではなく、単にキャパが足りていないだけ」と森下氏は言う。

「デジタルデトックスといっても、いきなり1日スマホを断つ必要はありません。まずは5分だけ、意識的に触らない時間をつくる。それだけでも違います。

現代人のストレスは、気づかないうちに積み重なる『マイクロストレス』です。それに対抗するには、『マイクロブレイク』という短い休息をこまめに挟んで、少しずつ吐き出していく。それでいいんです」

では、何から始めればいいのか。

森下氏が勧めるのが、「トイレにスマホを持っていかない」ことだ。

「デスクにスマホを置いたままトイレに行くだけで、1日に数分の休息が生まれます。それを1週間、1ヵ月と続ければ、かなりの差になりますよ」

スマホの置き場所も重要だ。「画面を伏せておけばいい」と思いがちだが、それだけでは不十分だという。

「使わないからといって机の上に置いていても、注意はそちらに向いてしまいます。ポケットに入れていても、『今、鳴った気がする』と感じることがありますよね。スマホは別の部屋に置くか、電源を切ってカバンに入れる。それくらいしないと、効果は出にくいと思います」

仕事の効率は「休む力」で決まる

ここまで読んで、「よくないとわかってはいるけど、やめられない」と感じた人もいるのではないだろうか。それは意志が弱いのではない。

「気づけたこと自体が、まずすごいんです。みんなにとって当たり前になりすぎていて、そもそも問題だと思えていない人がほとんどですから」

森下氏の試算では、現代人が年間でスクリーンの前にいる時間はおよそ3ヵ月。起きている時間の多くを、画面に向けている計算になる。そんな環境の中で「これはよくないかもしれない」と気づけたこと自体、すでに第一歩を踏み出しているのだ。

「仕事ができないとか、なんで集中できないんだろうとか、自分を責める必要はないんです。キャパが足りないだけなんです。休養してチャージしたら、もっと仕事もできるし、できることの幅も広がります。それは能力の問題じゃなくて、キャパの問題ですから」

だからこそ、休む勇気を持ってほしいと森下氏は言う。そして、休み方は人それぞれでいい。

森下氏自身は、1時間ほど車を走らせたところにあるスキー場に通うことで、疲れをリセットしているという。早朝に雪山で体を動かし、ゲレンデ近くのレストラン等で仕事をして、また滑る。すると、「その日の夜はぐっすりと眠れて、翌日の仕事が捗る」という。

「散歩でもサウナでも、絵を描くことでもいい。自分に合った休養法を見つけることは、一種のクエストだと思っています。やってみて初めてわかることもあるし、それ自体が楽しいと思うんですよね」

日ごろから、こまめに画面から離れる時間を作ること。それだけでも、脳の疲れは変わってくる。あとは、自分に合った「充電法」を見つけていけばいい。それが、ダブルスクリーン疲れと付き合うための現実的な方法なのだ。

▼森下彰大 一般社団法人日本デジタルデトックス協会理事。ウェブメディア編集者として国内外のデジタル・ウェルビーイング動向を調査・発信するかたわら、企業・教育機関向けの講演やイベント活動にも注力している。著書に『戦略的暇―人生を変える「新しい休み方」―』(飛鳥新社)がある。

取材・文:安倍川モチ子

WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。