韓国政府が英語漬け幼稚園「禁止令」…教育熱高まるも母国語や情緒面への影響、家計負担を懸念
韓国では近年、英語幼稚園(英語で保育・教育を行う私教育機関)の過熱が深刻な社会問題となっている。英語力が将来の進学や就職を左右すると考えられており、親たちは子どもが幼いうちから英語環境に触れさせることを強く望む。
一方で、母語も十分に身についていない幼児期に過度な学習を強いるなどの問題も浮上している。韓国教育省はこの4月、過去に例のない規制強化策を打ち出し、事実上幼稚園での「英語漬け」を禁止したが、早期教育熱は衰える気配を見せていない。
政府が打ち出した規制の中でも目を引くのが、英語幼稚園で一般化している終日教育とテストによる順位付けの見直しだ。
従来、多くの施設では朝から夕方まで、さらには延長保育の時間帯に至るまで英語のみで生活・学習を行い、テストで成果を競ってきた。子どもたちは遊びの時間も含めて「英語シャワー」の中で過ごす。
教育省によると、長時間預かりと英語教育を売り物にする英語幼稚園は、2019年の615カ所から2025年には814カ所へと約3割増加した。
外国語習得の面で一定の効果は期待できるものの、母語である韓国語の発達や情緒面への影響が懸念されてきた。
このため教育省は、3歳未満の幼児に対する机上中心の英語教育、いわゆる「詰め込み教育」を全面的に禁止。3歳以上でも1日3時間以内に制限した。違反した場合は高額の課徴金の対象となる。近く関連法の改正も予定されている。
月140万ウォンの負担
英語幼稚園のもう一つの大きな問題は、その費用の高さだ。
授業料や教材費、各種プログラム費を含めると、月額100万~140万ウォン(約10万~15万円)に達する。さらに送迎費なども加わり、家計への負担は小さくない。
こうした高額な教育投資が可能な家庭では、幼児期から子どもに英語力を身につけることができ、それが後の学力や進路選択で有利に働く可能性がある。結果として、英語を軸とした社会的格差が固定化される結果を生む。
英語は就職に不可欠、日本と差も
人工知能(AI)の発展により語学の壁が低くなりつつあるにもかかわらず、英語幼稚園への需要が衰えない最大の理由は、韓国社会における英語の重要さにある。
若者の多くは海外留学や、安定した大企業や外資系企業への就職を志向しており、その際には高い英語力が求められる。
このため親たちは「早く始めるほど有利」と考え、幼少期からの英語教育に投資を惜しまない。韓国では小中高校でも英語教育に多くの時間が割かれ、日常会話からビジネスレベルまでの運用能力を鍛える機会が比較的多い。
一方、日本では受験対策中心の英語学習が主流だ。TOEICの平均点でみると、同じ漢字文化圏でありながら韓国は日本を大きく上回っており(2024年調査で約100点差)、実用的な英語力において差がついている。
英語幼稚園の過熱は、将来への不安と激しい競争社会が生み出した韓国特有の現象といえる。社会構造が変わらない限り、規制を強化しても形を変えた早期英語教育が広がる可能性は高いだろう。
文/五味洋治 内外タイムス
