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大分市の別大興産スタジアム。満開の桜が風に舞う中、新たな歴史が刻まれました。

【写真を見る】大分上野丘77年ぶり優勝 躍進支えた630球熱投エースの意外な一言 春の九州高校野球 大分県予選決勝

高校野球、春の九州大会大分県予選決勝。県内屈指の進学校・大分上野丘が、古豪・津久見を破り、旧制大分一中時代から数えて77年ぶりとなる優勝を手にしました。

その中心にいたのは、大会を通じて630球を投げ抜いた一人の左腕です。

勝負を分けた「一瞬」 疲労ピークでも冷静な火消し

上野丘のマウンドを託されたのは、エース・倉光俊輔(3年)。173センチの細身の体から、出所の見えにくいフォームで投げ込む技巧派です。

しかし、この日は今大会5試合目の先発。518球を投じてきた左肩は、すでに疲労のピークに達していました。

(大分上野丘・倉光投手)「今までで一番、肩が重かった」

1回表の立ち上がり、初球からデッドボールを与えます。これが今大会初めての死球。

さらに1死三塁といきなりピンチを背負いますが、倉光は冷静でした。

津久見の3番・遠藤を打たせてファーストライナー。さらに3塁走者が飛び出しダブルプレーに仕留めます。

絶体絶命のピンチをわずか数球で切り抜けると、その裏、今度は打線が応えます。

1番・須藤が四球で出塁すると、相手の隙を突き、投球モーションを始める直前でスタート。悠々と三盗を決めると、3番・秦がタイムリーを放ち、鮮やかに先制点を奪いました。

今大会が初のエースナンバー 冬の改革とは

中盤以降、倉光はほぼ毎回ランナーを背負いながらも、追加点を許しません。

毎回のように四死球を出しながらも、粘りの投球でヒットを許さなかったのは、厳しい冬の中でチャレンジした成果でした。

実は倉光、エースナンバーを背負うのは今大会が初めて。

彼を大きく変えたのは、冬の間の徹底した自己分析です。

(大分上野丘・倉光投手)「体を大きくするというよりは、使い方を勉強しました。下半身の動かし方、フォームの連動。それが大会が始まってからハマりました」

単なる筋力トレーニングではなく、自らの肉体をどう効率的に動かすか。

投球の「タメ」を作る右足の踏み込み方を意識することで、キレのあるボールを低めに制球できるようになりました。

さらにメンタル面でも、松田監督の「感情を出すな」という助言を忠実に守りました。

「秋までは感情的になって崩れることがあった」という反省から、勝負を決めるときは一呼吸置いて間を取る。この「静かなるマウンドさばき」で今大会を投げ抜きました。

630球の先に描く「夏」 意外なエースの本音は

上野丘は3回裏、1死2・3塁で4番・伊藤が左中間を破るタイムリー2ベースを放つなど5者連続安打で3点を追加するなど投打がかみ合い6-3で勝利。

試合終了の瞬間、春休みで応援に駆けつけた100人以上の生徒から大歓声が上がりました。

上野丘は旧制中学時代以来、77年ぶりに県予選を制覇し、春のセンバツに出場した2009年以来の九州大会に挑みます。

倉光は試合後のインタビューで喜びをかみしめました。

(大分上野丘・倉光投手)「九州大会は今まで戦ったことのないチームばかりですが、優勝した自信を持って戦いたい」

頼もしい言葉の一方で、最後に「夏の目標」を尋ねると、少し意外な本音が飛び出しました。

(大分上野丘・倉光投手)「夏は他のピッチャーと、みんなで投げて勝ちたいです。今大会は、きつすぎたので(笑)」

5試合、42イニング、630球。孤独なマウンドで思考を止めず、しなやかに成長を遂げたエース。その知性と情熱が、九州の舞台でどんな花を咲かせるのか。

春の九州大会は、今月18日から鹿児島市で幕を開けます。