息子が教育費貧乏から救ってくれた…〈世帯年収700万円〉63歳父親、「仕送り月15万円」でも「老後資金2,000万円」を死守できたワケ
自分の老後資金を削ってまで子供にお金を投じて、「教育費貧乏」に陥る家庭は少なくありません。しかし、世帯年収700万円・63歳のYさんは、地方の国立大学へ進学した息子へ「毎月15万円の仕送り」を続けながらも、老後資金2,000万円を一切減らすことなく、別で教育費1,500万円を周到に準備していました。ごく普通の家庭が周囲に流されず、老後不安もなく息子の夢を全力応援できた裏には、ある「貯金ルール」がありました。
世帯年収700万円の親を救った、息子の“ある決断”
「もし、都心の私立大学に進学していたらと思うと……。地方の国立大学を選んでくれて、親としては助かりました」
Yさん(63歳・男性)は、昨年から一人暮らしを始めた息子の大学生活について、安堵の表情で語ります。息子が中高生だった当時、Yさんの年収は600万円台。妻もパートに出て家計を支えており、世帯年収は約700万円と決して裕福な家庭というわけではありませんでした。
Yさんの息子は現在、地方の国立大学の理系学部に通っており、家賃と生活費を合わせて毎月約15万円の仕送りでやりくりしています。中学・高校を通して地元の公立校に通い、塾には一切行かずに独学で勉強を続けてきました。親に負担をかけまいとする息子の姿勢は、進路選びの際にもはっきりと表れていました。
「息子は『奨学金を借りてまで、目的もなく私立大学に行くくらいなら、高卒で働いてお金を稼いだほうがコスパがいい』とまでいっていました。でも、どうしても研究したい分野があり、自分の夢を実現するために地方の国立大学で勉強するという道を選んだのです」
子供ながらに明確な目標を持ち、自らの進路を切り開いていく息子の姿を、Yさんは誇らしく見守っていました。
老後資金とは別に「1,500万円」を確保できたワケ
「大学に進学する前から、学部と大学院を合わせた6年間の授業料と生活費の援助分として、1,500万円を教育費として準備しました。児童手当も含めて、毎月5万円を先取り貯金していたんです」
理系なので大学院の修士課程まで進む前提で計算して、入学料・授業料を合わせた6年間の学費が約380万円。それに加えて、月15万円の仕送りを6年間続けると1,080万円かかります。少し余裕を持たせた1,500万円を予算としたそうです。
60代を迎えたYさん夫婦の口座には、目標としていた自分たちの老後資金2,000万円がしっかりと確保されています。この老後資金とは完全に切り離して、さらに教育費1,500万円を準備しておくのは、決して容易なことではありません。しかし、Yさん一家がこれを実現できた裏には、息子の「揺るぎない意志」と、それを逆手にとった「スライド貯金」がありました。
「周りの家庭が中学受験や塾通いで月に何万円も使っているのを見て、私たちも塾くらい行かせたほうがいいのではと焦った時期がありました。でも、参考書があれば自分でできるから塾代はもったいないと、息子は頑なに断りました」
そこで、本来なら塾や私立校に払うはずだったお金を「見えない教育費」として、別口座へ毎月貯金することにしたのです。
「中学・高校の6年間は、塾に通ったつもりで毎月4万円を上乗せして貯金し、ボーナスからも少し補填しました。これで18年間かけて1,500万円に到達できたんです」
周囲が見栄や不安から教育費をつぎ込んでいくなか、Yさん夫婦は息子の言葉を信じ、手元に浮いたお金を一切生活費に回さずに大学進学用として蓄え続けました。
「あのとき、周りに流されていたら、絶対に1,500万円も用意できませんでした。ましてや、自分たちの老後資金2,000万円なんて夢のまた夢だったでしょう」
浮いた出費を確実に貯蓄へと回したことで、Yさんはお金の不安を抱えることなく、息子の挑戦を心から応援できています。
「息子が私たちを『教育費貧乏』から救ってくれたようなものです。本当に立派に育ってくれました」
7割以上が「教育費に不安」…幼稚園から高校までの教育費の現実
文部科学省が発表した「子供の学習費調査」によると、幼稚園から高等学校卒業までの15年間に要する学習費総額は、すべて公立に通った場合でも約614万円かかります。これがすべて私立に通った場合は約1,969万円となり、進路によって教育費の負担は大きく異なります。
また、小学校や中学校の段階から、学習塾などの「学校外活動費」にかかる割合も高く、公立の小中学校においては学習費総額の60%以上を占めているのが実態です。Yさんの息子さんのように、塾に通わず公立校で学んだケースは、家計の助けとなることがわかります。
一方で、大学進学後の費用負担については、多くの家庭が不安を抱えています。
労働者福祉中央協議会が実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査」によれば、子供のいる人の77.8%が将来の教育費負担に「不安である」と回答しています。さらに、現実的に負担可能と考える年間授業料の中央値は44.1万円であり、現在の国立大学の標準授業料である53万5,800円すら下回っているのが現状です。
多くの家庭が、日々の生活費や老後資金の確保と並行して、教育費の準備に苦心している実態が浮き彫りになっています。
[参考資料]
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
労働者福祉中央協議会「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査(2024年6月調査)」
