【社説】地価の上昇 建設費高騰が気がかりだ

景気回復を反映して地価が堅調に上昇し、大都市では住宅価格が高止まりしている。一方で建設費高騰の影響が全国に及んでおり、先行きに警戒が必要な局面だ。
国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均伸び率が前年比2・8%となり、バブル経済崩壊後で最大となった。
特に住宅需要が旺盛な東京圏と大阪圏で高い伸びを示している。新型コロナウイルス禍以降、地価回復をけん引してきた福岡市は上昇率が鈍化した。
不動産経済研究所の調査では、東京23区で昨年発売された分譲マンションの平均価格は1億3613万円で、3年続けて1億円を超えた。中古でも平均1億円を上回る。
もはや収入が多い共働き世帯でも手が届きにくい水準である。投資目的で購入する富裕層の需要が根強い。
人口増加が続く福岡市の新築マンションの平均価格は5305万円だった。前年より下がったとはいえ、高い水準に変わりはない。
高価格の都心を避け、都市圏の比較的安い物件を求める動きが広がりそうだ。子育てしやすい環境づくりに力を入れ、若い世帯を呼び込んだ地域は地価が上昇している。
こうした傾向は福岡県にも見られる。住宅地で最も伸び率が高かったのは、一戸建てを求めるファミリーが増加した筑前町だった。
住宅価格の上昇で、40年や50年の長期ローンを組む人が増えた。借入額の増加に金利上昇が加わり、返済負担は重い。政府が2026年度の税制改正で住宅ローン減税を拡充したのは妥当だろう。
手頃な家賃で入居できる住宅の確保に乗り出す自治体もある。東京都は官民連携のファンドを活用し、相場より割安な賃貸住宅を供給する。賃貸住宅が多く、家賃が急騰している福岡市などの参考になるのではないか。
建設費高騰は急速に進んでいる。日本建設業連合会によると、建設資材と労務費を合わせた建設コストはわずか5年で3割ほど上昇した。再開発の延期や見直しが相次ぎ、地方主要都市の地価上昇率にも影を落とす。
福岡市では、JR九州が博多駅で計画していた複合ビルの建設を中止した。
天神地区の新天町・パルコ街区再開発は、事業費が想定以上に膨らむ見通しだ。公共性が高い地下通路などの整備には国の補助制度を活用し、事業者の負担を抑える知恵を絞りたい。
当面はイラン情勢も懸念材料だ。ホルムズ海峡が事実上封鎖された状態が長期化すれば、原油価格は高止まりし、さらなる円安や物価上昇は避けられない。
建設コストも一層押し上げられる可能性がある。消費者の住宅購入や企業の設備投資が冷え込みかねない。景気への影響を含め、十分に注意を払っておきたい。