立花孝志氏が選挙ポスター費用「水増し請求」で書類送検 破産手続き中では“弁償”も困難に?
選挙ポスターの製作費を水増し請求し、お金をだまし取ったとして、兵庫県警が3月23日「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首らを書類送検したことが報じられました。
報道(神戸新聞NEXT、3月24日)によると、2025年6月の尼崎市議選において、立花氏らは市に対し選挙ポスターの制作費を水増して尼崎市に請求し、約48万円をだまし取ったとして詐欺罪で告発されていました。今回、この告発にかかる容疑について書類送検されたようです。また、2025年4月の赤穂市議選でも同様に水増し請求したとして別途書類送検されたとのことです。
選挙ポスターの水増し請求は詐欺になるのでしょうか。今後どうなるのでしょうか。簡単に解説します。
●「書類送検」とは何か
書類送検とは、警察が捜査した事件を書類や証拠物とともに検察官に送る手続きのことです。
刑事手続きでは、大きく分けると警察が捜査をし、検察が起訴をする、という流れになっています。そこで、まず警察が犯罪の捜査をし、その後原則として検察に事件を送り(送検)、検察が起訴するかどうかを決めます。
つまり、書類送検自体は刑事事件では当然の流れといえます。「書類送検された=有罪確定」とか「有罪になる可能性が高い」という意味ではありません。
●「単価が高い」だけでは詐欺にならない
ポスターの単価が通常より高かった、というだけでは、詐欺罪(刑法246条)は成立しません。
詐欺罪には「人を欺く行為」が必要です。
たとえば、本来かかっていない費用をかかっているかのように見せかけ、そのことで市を誤信させてお金を払わせた、などの事実が必要になります。
今回のケースで詐欺を立証するとすれば、たとえば、「業者に支払っている費用は、市に請求した額よりずっと少なかった」とか、「印刷業者と候補者側が共謀して、市への請求額と実際の取引価格の差額を還流させていた」などの証明することが必要になってくるでしょう。立証のハードルは低くはないと思われます。
●選挙ポスターの水増し請求、過去の事例は?
選挙ポスター代をめぐる紛争は、過去にも複数の事案があります。
ただし、私が調べた限りでは、選挙ポスター代の水増し請求で書類送検されたケースはあるものの、詐欺罪で起訴されて有罪判決が出たという事例は見つかりませんでした。
住民訴訟(民事・行政)という形で争われているものとしては、京都地裁平成13年(2001年)11月30日判決(ポスターの公費過払いで市が不当利得返還請求権を有すると認定)、大阪地裁令和3年(2021年)3月25日判決(条例上限内の請求として棄却)などがあります。
また、市への公費水増し請求が詐欺罪で起訴・有罪になった事例は、他の分野ではいくつかあります。(大阪地裁令和6年(2024年)1月16日判決・コールセンター業務委託費水増し事件など)
●示談も被害弁償も難しい
詐欺罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」と重い罪です。否認するのであれば話は別ですが、弁護活動では、被害者から許しを得る「示談」も重要な選択肢になります。
しかし、今回の被害者は「市(地方公共団体)」であり、示談に応じるとは考えにくいです。
地方自治法では、市が権利の放棄や和解をするには原則として議会の議決が必要とされています(96条1項10号、12号参照)。たとえば市の担当者が個人の判断で「許す」と言える立場にありません。
したがって、基本的に示談は出来ないと考えた方が良いでしょう。
示談は出来なくても、「被害弁償」(受け取ったお金を返す)をすることも考えられます。
示談と被害弁償の違いは、示談の場合は被害者から「許し」を得るのに対し、被害弁償の場合にはお金だけは支払って被害は回復する、という点にあります。
被害弁償は量刑上の軽減要素になります。特に詐欺罪のような財産犯では、被害が弁償されているかどうかは大きな考慮要素といえます。
しかし、立花氏は現在、破産手続き中です。財産を自由に動かすことに制約があるため、被害弁償も容易ではないでしょう。
詐欺の成立要件の立証の難しさと、示談・被害弁償の困難さが重なる構造のなかで、今後事件がどのように動いていくのか注目されます。
