シャシーと車両制御では、フェラーリの最新技術が惜しみなく投入される。中心となるのはブレーキ・バイ・ワイヤの採用で、制動効率の向上だけでなく、ペダルフィールやコントロール性の精度も高められた。ABS EVOは6Dセンサーの情報を活用して各輪の最適スリップ率を算出し、さまざまな路面状況やマネッティーノの全モードで安定した制動を実現する。SSC 6.1はステアリング、トルク制御、ボディモーション制御までを統合し、車両全体を共通のロジックでまとめ上げる。

EPSベースのグリップ推定システムも進化し、従来より10%高速に路面μを把握できるという。限界域に達していない場面でも各制御系の応答精度を高め、結果としてより自然で安心感のある挙動につながる。マネッティーノはWet、Comfort、Sport、Race、ESC-Offの5段階。ローマ系よりSportとRaceがよりダイナミック寄りに調整されつつ、その間のつながりは滑らかになっているというから、日常からワインディングまで一段と扱いやすい性格に仕上がっているはずだ。

空力も見逃せない。フロントではヘッドライト上部のバイパスが圧力を逃がし、冷却にも寄与。アンダーボディのボルテックスジェネレーターやディフューザー、前後輪前方のフェアリングが効率を高める。リアには3段階可変のアクティブウイングを装備し、速度や横G、前後Gに応じてLD、MD、HDの各モードに自動で移行する。HDでは250km/h時に最大110kgのダウンフォースを発生させながら、空気抵抗の増加は4%未満に抑えたという。

ADASも充実している。アダプティブクルーズコントロール、自動緊急ブレーキ、ブラインドスポット検知、レーン・デパーチャー・ウォーニング、レーンキーピングアシスト、オートマチックハイビーム、交通標識認識、ドライバーの居眠り・脇見検知を標準装備し、サラウンドビューやリアクロストラフィックアラートも用意される。フェラーリにとって重要なのはあくまで運転体験だが、その前提として安心して距離を重ねられることもまた、いまや高性能GTの条件になっている。

タイヤは20インチで、サイズはフロント245/35 R20、リア285/35 R20。ピレリPゼロ、グッドイヤー イーグルF1スーパースポーツ、ブリヂストン ポテンザスポーツの3銘柄が、このモデル専用開発品として標準設定される。最後にアフターサービス面では、7年間の純正メンテナンス・プログラムも用意される。2万kmごと、もしくは年1回の定期メンテナンスを走行距離制限なしでカバーし、認定中古車オーナーも対象となる。

フェラーリ・アマルフィ・スパイダーは、単にクーペの屋根を開けた派生モデルではない。速さ、音、造形、そして使いやすさ。そのどれかを犠牲にするのではなく、オープンという体験価値を中心に据えながら、日常から長距離まで本当に使えるフェラーリとして練り上げられた新しい2+である。カリフォルニアを皮切りに始まったフェラーリのV8フロントミドシップGTが辿ってきた成熟の先に、ひとつの理想形が加わった。