――ご息女の大学進学も、かなり急な報告だったとか。

おさむ:嫁からいきなり「今から大学の推薦入試です」と告げられ、「え、それ当日に言うの?」と。

――そんな軽い感じだったんですか。

おさむ:1週間くらいで合否が出るという話だったのに何も言ってこないので、「もしかして落ちちゃった?」と聞いたら、「あ、ごめん。受かってたよ」みたいな。きっと娘も真面目に学校で頑張っていたんでしょうね。娘がどこの高校に通っているのかも、実は俺よくわかってないんですけど。

――おさむさんって、もしかして自分の子どもにあまり関心ないタイプですか。

おさむ:いや、ありますよ(笑)。「お金と育児には口を出すな」と言われているし、なんか似たような名前の高校が近所にいっぱいあって、聞いても覚えられないんです。何度も尋ねたら怒られるし、年頃の娘なので距離感は感じます。

◆現状に不満はないと言い切れる理由

――家族との最適な距離感は人それぞれというか。“亭主元気で留守がいい”的な感じですかね。

おさむ:とりあえず、自分の家の中を暗くしたくはないですね。芸人として売れていないことに関しても、そうですけど。簡単に言っちゃうと“明るいノリ”みたいなものが、自分の芸人としての大切な部分だとも思っているので。

――お子さんは芸人として活躍する姿を知っているんでしょうか。

おさむ:お姉ちゃんは昔、一緒に少しテレビに出たことがあるので知っていますけど、下の息子は全然知らないです。彼が物心ついてきた頃は、芸人として東京で少しやっていけそうな雰囲気もあって、「わざわざ言わなくていいか。そのうち芸人の姿を見せて驚かせよう」と思っていたんですが、言うに言えなくなり……。息子に仕事について聞かれても、「言えない仕事」ということにしています。

――お笑いライブの常連だった奥様はもともとお笑い好きだと思うんですが、上京の末、おさむさんがフードデリバリーに心血を注いでいることを、どう考えているんでしょうか。

おさむ:フードデリバリーだろうがなんだろうが、お金さえ入れてくれるなら、お好きにどうぞという感じですよ。かみさんの強い母性は今すべて子どもに向いています。

――おさむさん自身は現状に不満は?

おさむ:別にないです。というと、「もっと欲がないとダメだ」って言われそうですけど。デリバリーばかりやって芸人の仕事がないから「イヤだ」「ツラい」とか、本当に思ってないです。

若い頃は「40代までに売れないとクソだ」という考えで、しんどかった時期もありましたけど。今はシンプルに相方と自分たちの舞台で面白いことを表現したいと思っているだけですね。「いつか相方と少し高みの景色を見たい。そのためにフードデリバリー頑張ろう」の境地です。

――そんな穏やかな心でフードデリバリーの仕事を。

おさむ:結局、お笑いの舞台が好きというか。最初は友達と学校とかでふざけたことしているのが楽しくて、その流れで漫才とか何も知らないまま入ったお笑いの世界なんですけど、やっていくうちにどんどん舞台は好きになりましたね。

――子育てがひと段落した暁に、やってみたいことはありますか?

おさむ:まあ、あまりお金のこととか気にせず、かみさんに子どもや孫とゆっくり過ごしていただけるようなことくらいはできたらなと。後先あまり深く考えないタイプなので、僕自身はどこで野垂れてもいいんですが、普通の芸人の嫁以上に苦労かけてきたかみさんには、長生きしてほしいと思っていますよ。

<取材・文/伊藤綾>

【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii