高橋成美さん

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 ミラノ・コルティナ五輪・フィギュアスケートペアの解説を現地から務め、その言葉豊かな表現が視聴者から絶賛され、一躍人気者となった同競技元日本代表・高橋成美(たかはしなるみ=33=)氏は、競技生活を続けながらも難関校の渋谷幕張高校を経て、慶應大学に進学した才女として知られている。競技引退後は、フィギュアスケートの普及に尽力しながら、タレントとしてもさまざまな新しい挑戦をし続ける高橋成美氏に、挑戦を続ける理由やモチベーションの管理術について伺った(全3回中の第3回)。※2025年8月10日に配信した記事を再構成したものです。

【写真】「あえて個性的な道を選びたくて慶應への進学を決めました」と語る高橋成美さん

アイスホッケーへの挑戦で、未練を断ち切れた

 フィギュアスケートのペアとして、2012年には世界選手権で銅メダルを獲得。2014年のソチ五輪出場を果たした高橋氏だったが、さらなる飛躍を目指して臨んだ平昌五輪では、国内の選考で力及ばず。本大会の出場権を掴むことはできなかった。そして、補欠として登録されていた平昌大会が閉幕した2018年3月、高橋氏は引退を決断する。

高橋成美さん

「出場を目標としていた大会がテレビで流れていると、自ずと虚しさが込み上げてくることもありましたが、引退を決める頃にはしっかり自分の気持ちを切り替えられていて、スケートから卒業したような清々しさを感じられるようになっていました」

 同年4月には、長らく休学が続いていた慶應大学総合政策部への復学と、昭和大学の女子アイスホッケー部「ブルーウィンズ」への入団を決意する。

 特に「ずっと挑戦したいと思っていた」と話すアイスホッケーへの挑戦は、傷心の高橋氏が再び前を向くきっかけになったそう。

「アイスホッケーに出会ったおかげで、五輪に出られなかった挫折や、フィギュアスケートへの未練を断ち切ることができたと思います。一生懸命ホッケーに取り組んでいると、いつの間にかフィギュアスケートへの未練はなくなっていて。アイスホッケーとの出会いが、私にとっても良い転機だったのかなと感じています」

モチベーションさえあれば、外国語は身に付く

 学校に復学して2年後の2020年3月には、フィギュアスケートで海外を転戦する中で疑問に感じていた「国ごとに異なる感情表現が人間の個性や行動に及ぼす影響」というテーマで卒論を書き上げ、慶應大学を卒業。

「日本語を話している時の私は幼く見えるのに、中国語を話すと『何となく大人びているように見えるんじゃないかな?』と日頃から感じていて。話している言語によって、なぜ皆さんに与える印象や、雰囲気が変わるのかを調べながら論文にまとめました。コロナ禍の影響により、予定していた実験が出来なかった部分もありましたけど、楽しく研究に取り組めたのではないかと思っています」

 言語学の論文を書き上げて学生生活にピリオドを打った高橋氏は、日本語、英語、中国語を軸に、計7ヶ国語を操る才女としても知られている。

「私の場合は『フィギュアスケートを上達させたい』という思いが、語学を学ぶモチベーションになっていました」

 そのように話す高橋氏は、語学習得の秘訣についてこう続けた。

「どんな人もモチベーションさえあれば、語学は絶対に身に付けられると思っています。私の場合は、幸運なことに『スケートが上手くなりたい』という目的があり、周囲の方とコミュニケーションを取るために言語を学ぶ必要がありました。勉強が続かずに悩んでいる方は、習得したい言葉を話せる友人や恋人を作ってみたり、言葉を話せる環境に身を置いたりした方が、上達が早いのではないかと思います」

 これまでの経験を交えながら、気持ちの充実が習得に向けた一番の近道であると私見を述べた。

悔しさから全てが始まる

 大学を卒業した高橋氏は、大手芸能事務所の松竹芸能に所属。同社初のスポーツタレントとして活動を開始し、多彩な活躍を見せている。高橋氏の芸能生活で、特に多くの人の脳裏に焼き付いているのが、「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」(日本テレビ系)における奮闘だろう。

 10問連続正解者に与えられる賞金300万円の獲得を目指したものの、初回は6問目で敗退。1日11時間の猛勉強を経て臨んだ2度目の挑戦は、まさかの1問目で不正解に終わり、悔し涙を飲んだ。

「私は現役の頃から、悔しさから全てが始まると思っているんですよ。何かうまくいかないことがあって、落ち込めば落ち込むほど、凄まじいモチベーションが湧き上がってくるタイプで……。2連敗してしまったあとは、『もう成功するまで後に引けない』という気持ちや、勝ちに対する思いが一層強くなりました」

 捲土重来を期す高橋氏は、多い時には1日11時間ほど勉強に励み、自宅のリビングに解答台を設置。実際の放送を見ながら、本番に向けて準備を進めた。

「頭が真っ白になってしまったことが失敗の理由だと思っていたので、現役の頃に試合と同じメイクで練習した時のように、当日に近い環境での練習を心がけました」

 決死の努力が実り、3度目の挑戦で見事に全問正解を達成。輝かしい経歴通りの実力を見せつけ、賞金300万円を手にすることとなった。

マラソンでサブ3・5達成を目指す

 さらに高橋氏は、自身の挫折をきっかけにランニングに新たな活路を見出した。

「スポーツタレントとして『私の強みとする体力を生かして活躍できたら……』と思って、『新春!芸能人対抗駅伝2023』(TX・2023年)に挑戦させてもらったんですけど、実際にレースを経験してみて、自分の実力が全く及ばないことに気付かされたんですよ。でも、その状況を目の当たりにすると、俄然モチベーションが高まってきて。練習を始めた途端にランニングの魔力に取り憑かれ、今では走ることが大好きになりました」

 昨年夏に出場した北海道マラソンでは、日差しの強いレースコンディションをものともせずに4時間11分27で完走し、自己ベストを更新。

「長期的にはフルマラソンを3時間30分以内(サブ3・5)で完走することを目指していますが、まずは4時間以内(サブ4)達成を目指して、一歩ずつ頑張っていきたい」と、さらなる記録更新に意欲を見せるが……。高橋氏特有の悩みがあるという。

誰も太刀打ち出来ないベテランランナーになりたい

「毎日楽しくランニングをさせてもらっていますが、マラソンとフィギュアスケートのシーズンが重なっていて、秋から冬にかけて開催される大会になかなか出場できないんですよ。昨年も友人の安田美沙子さんと『一緒にサブフォーを達成しましょうよ!』と話していたんですけど、安田さんは今年2月の大阪マラソンで見事に達成されて。先を越されてしまったことが少しだけ悔しかったです」

 だが、多忙なスケジュールの中、今年4月には東京都足立区で開催された「あだち五色桜マラソン」に参加。雨のなかのハーフマラソンで自己ベスト更新となる1時間39分でレースを終えた。

「速くなりがちなペースを必死におさえながら同じ動きを続けるマラソンは、スケートとは異なる奥深さがある。今季はその楽しさを追求しながら、記録の更新も目指していきたいと思っています。辞めないことだけは絶対の自信があるので、ここからぐんぐんとライバルを追い上げて、誰も太刀打ちできないようなベテランランナーになりたいですね」

 幾多の悔しさを糧に道を切り拓いてきた高橋氏は、どのような飛躍を遂げていくのか。その軌跡にこれからも注目していきたい。

 第1回【りくりゅう“神解説”が話題の「高橋成美」、偏差値74「渋谷幕張高校」の合格を勝ち取った“スケートへの一途な思い】では、高橋成美さんがいかにして勉学とフィギュアスケートを両立させ、国内屈指の難関校への切符を手にしたのかなどについて語っている。

ライター・白鳥純一

デイリー新潮編集部