(※写真はイメージです/PIXTA)

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株式会社AlbaLinkが実家から離れて暮らす500人を対象に実施した「実家に帰る頻度」の調査では、年1回・2回が4割近くを占めていました。また同調査では、約65%が「実家に積極的に帰りたい」と回答するなど、もっと頻繁に帰省したい人が多いようです。ただ、なかには、子や孫の帰省を“素直に喜べない親”も……。その原因と対策について、具体的な事例をもとにみていきましょう。

息子夫婦の帰省を喜べない67歳夫婦

後藤佳代さん(仮名・67歳)は、同い年の夫との2人暮らし。貯金約3,000万円と月23万円の年金で、のんびりした老後を送っています。

ひとり息子の和也さん(仮名・42歳)は、大学卒業後に実家を出て、現在は都内のマンションに妻の奈緒美さん(仮名・38歳)と娘と3人で暮らしています。

佳代さん夫婦は、年末年始や何かしらの記念日には息子夫婦と食事を楽しむなど、長年良好な関係を保ってきました。しかし、孫が誕生してからは、その関係性に変化が生まれたといいます。

子育ての大変さからか、息子夫婦は車で30分ほどの距離にある佳代さん夫婦の家に、頻繁に帰省するようになったのです。

――ピンポーン

「お邪魔しますー! はあ、疲れた。ちょっと休ませて」

事前連絡もなく、奈緒美さんは到着するやいなや孫を佳代さんに預け、すぐ自室へ。気づけば離乳食の準備からお風呂、夜泣きの対応にいたるまで、佳代さん夫婦に育児を丸投げするようになり、しまいには、紙おむつや着替えなども「実家で準備するのが当然」とばかりにいっさい持参しなくなってしまいました。

我慢ならず和也さんに苦情をいうも、和也さんは申し訳なさそうな表情で「ごめん……しばらくしたら落ち着くはずだから」と言うばかりです。

佳代さんは、言葉には出せないモヤモヤした感情を抱えながらも、「近所の奥さんは『息子夫婦が実家に顔を出さず、孫に会えない』って嘆いていたわ。それに比べたら、いつでも孫に会える私たちは恵まれているかもしれないわね」と言い聞かせ、孫の世話を続けていました。

事態はさらにエスカレー

しかし、事態は悪化します。孫が走り回るようになると、怪我をさせてはいけないと目が離せず、落ち着いて座ってもいられません。

また食事の支度も、夫との2人分ならスーパーのお惣菜で簡単に済ますところ、息子一家がいるとなるとそうもいかず、朝昼晩の献立を考えるだけでもひと苦労。孫が帰るとどっと疲れ、寝込んでしまうこともありました。

負担がかかっているのは心身だけではありません。食費は普段の倍に膨らみ、孫の消耗品やレジャー費などを含め、帰省によって発生する費用が家計を圧迫します。

また節句やクリスマス、孫の誕生日、入園祝いなど、プレゼントやご祝儀を贈っていた結果、年金だけでは足りず、貯蓄を切り崩して生活せざるをえなくなっています。

「実家を無料の託児所だとでも思っているんでしょうか。かわいい孫のためならなんでもするつもりでしたが、お金もかかるし、体も疲れるし……こんなこと言いたくないですが、孫が生まれる前のほうが幸せでした」

そう肩を落とす佳代さんの表情には、「こんなはずじゃなかった」という失望がにじんでいました。

「ルールづくり」が必須

この事例の問題点は、佳代さん夫婦が本音を押し殺して「理想の祖父母像」を演じ続けた結果、息子夫婦による無自覚な“搾取”が定着してしまったことにあります。

この状況を改善するには、佳代さん夫婦が金銭負担や役割分担について「ルール」を定め、話し合いを提案する必要がありそうです。

育児の負担が大きくなり、帰省が喜べなくなっていること。帰省のたびに出費がかさみ、貯蓄を取り崩す事態になっている現状について率直に伝え、そのうえで「費用は折半」「消耗品は持参」といったルールを提案してみるとよいでしょう。

お金を「出したくない」のではなく、自分たちの老後資金を守るために「出せない」のだと正直に打ち明ければ、息子夫婦も「親に無理をさせている」という事実に気づくはずです。

育児や家事の丸投げについても、「帰省は月1回まで」「使った部屋掃除して帰る」といった具体的な線引きをすることで、相手も実行に移しやすくなります。

もともと、孫が生まれる前は良好な関係だった息子夫婦ですから、適切な距離感があれば、また良好な関係性に戻れるかもしれません。

勇気を出して息子夫婦に伝えた結果…

その後、勇気を出して息子夫婦に現状を伝えた佳代さん夫婦。すると、2人はひどく反省した様子でルールづくりに賛成してくれました。

話し合いの最中、佳代さんの背中に、孫が笑顔で飛びついてきます。

「おばあちゃん、だいすき!」

その温かさは、何物にも代えがたい幸せがここにあることを改めて実感させてくれました。

「ありがとう。また遊びにきてね」

それは佳代さんから久しぶりに出た、心からの言葉でした。

シニア世代の負担を減らす「線引き」の工夫

昔から「孫は来てよし帰ってよし」という言葉があります。孫が来れば嬉しいけれど、帰ればホッとする――それがいつの時代も変わらぬ祖父母の本音でしょう。

孫に手がかかる期間は意外と短いもの。「よい祖父母であらねば」と肩に力を入れすぎず、その時間を楽しむためには、線引きが大切です。やがて成長した孫と幼いころの思い出話に花を咲かせる日も、そう遠くはないでしょう。


山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー