2025年5月21日、トヨタ新型RAV4が世界初公開され、「クルマ好き/そうでない人」問わず、かなり注目を浴びている。そのRAV4をはじめ、トヨタ車の「走りの心臓部」といえばハイブリッドシステム。世界が認める優れたシステムだが、今回の記事の主役はもうひとつのハイブリッドシステム、「マイルドハイブリッド」。『縁の下の小さな力持ち』が今の日本車に欠かせないワケって何だろうか。

燃費向上は期待薄の「簡易型マイルドハイブリッド」だが……!

「ストロングハイブリッド」を搭載した一例。こちらは、トヨタクラウンクロスオーバーの2.5Lハイブリッドシステム。初代プリウス誕生から28年。トヨタのハイブリッドシステムの進化は著しい!
上画像のハイブリッドシステムを搭載しているクラウンクロスオーバーの走り。シビれるほどカッコいい!!

ハイブリッドには、ストロングタイプとマイルドタイプがある。前者はトヨタのクラウンやRAV4などに搭載されているハイブリッドシステムで、後者は「マイルド」という言葉のニュアンスどおり、簡易型のハイブリッドシステムだ。

マイルドハイブリッドは、複数のメカニズムがあるが、1個の小さなモーターを使って、エンジン駆動の軽微な支援、減速時の発電、アイドリングストップの再始動を行う。

簡易型だから燃費向上率は多くを望めず、車種によっては、WLTCモード燃費にほとんど反映されない。

現行スズキハスラーに搭載されているR06D型エンジン。ハスラーのマイルドハイブリッドは、このエンジンに小さなモーターを組み合わせている

例えば軽自動車・日産デイズの場合。2WDのWLTCモード燃費は、ベーシックなXが23.2km/L、マイルドハイブリッドのハイウェイスターXは23.3km/Lだ。0.1km/Lの違いだから、誤差の範囲に収まる。

ただし、渋滞によってエンジンの負荷が少ない走行を長時間にわたり続けるような時は、マイルドハイブリッドも相応の効果を発揮する。減速時にはモーターが発電を行い、エンジン駆動の負担を軽減させるからだ。

これが日産デイズのハイウェイスター。マイルドハイブリッドを搭載しており、フロントデザインがイケメンになった!

3万円ほどで搭載できるので価格の上乗せが収まる!

スズキスペーシアシリーズの3モデル。スズキはほとんどの軽自動車にマイルドハイブリッドを搭載。軽自動車とマイルドハイブリッドは親和性が高いことが伝わる

そして、マイルドハイブリッドでは駆動と発電の役割を受け持つモーターが、ベルトを介してアイドリングストップ後の再始動を行う。その効果で再始動時のノイズが小さい。通常のスターターモーターのような金属音を発生させず、乗員の不快感も抑えられる。

また、簡易型のマイルドハイブリッドは、さまざまなエンジンに組み合わせることが可能で、設定価格を安くできるメリットも! ストロングハイブリッドは、ノーマルガソリンエンジンに比べて35〜60万円ほどは高いが、マイルドタイプなら3万円ほどで搭載できる。

そのためマイルドハイブリッドは、軽自動車に多く搭載される傾向だ。軽自動車は低価格が重要な要素だから、ノーマルガソリンエンジンに比べて35万円も高いストロングハイブリッドは、販売価格が高くなり成立しない。

その背景があり、軽にはマイルドハイブリッドが増えている。クルマを宣伝する時も、マイルドタイプながら「ハイブリッド」だとアピールできる!

低価格で、市街地で乗ることが多い軽自動車とマイルドハイブリッドは親和性が高いといえるので、今後も、マイルドハイブリッド搭載の軽自動車は増えるだろう。

長距離を走ることが多いなら「ストロングハイブリッド」効果が出る!

迫力ありながらもシャープな顔になった、マイルドハイブリッド搭載の日産ルークス。ファミリーに人気の軽スーパーハイトワゴンだ

いっぽう街中はもちろん、長距離も走ることが多い、小型/普通車ではマイルドハイブリッドは成立しにくい。例えばスバルフォレスター。現行型は、マイルドハイブリッドのe-BOXERを廃止して、ストロングハイブリッドのS:HEVとターボを設定している。

先代フォレスターのWLTCモード燃費は、マイルドハイブリッドのe-BOXERが14.0km/Lで、ターボは13.6km/Lだった。e-BOXERの燃費値は、動力性能の高いターボと比べても、0.4km/Lの上乗せだけに留まっている。

トヨタのストロングハイブリッドシステムを搭載した新型フォレスターは大人気! 先代までのフォレスターはマイルドハイブリッドだったので、「待望」のストロングハイブリッド搭載だ

それどころか、WLTCモード燃費の郊外モードは、ターボの14.3km/Lに比べてマイルドハイブリッドは14.2km/Lと劣っている……という事実!

一般的に小型/普通車は長距離移動で乗ることが多く、いわば郊外モードが重要だから、マイルドハイブリッドは適さないといえる。

……以上のように、クルマのタイプ別を見ても、軽自動車でこそメリットが際立つメカニズム。それがマイルドハイブリッドだ。

文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心がける。執筆対象は自動車関連の多岐にわたる。

写真/トヨタ、日産、スズキ、ベストカー編集部