『いつか、ヒーロー』のスリリングな展開から目が離せない 若王子と氷室の“歪んだ正義”
この世で最もタチが悪いのは、“歪んだ正義を持つ人物”なのかもしれない。『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第5話で、今までさまざまな人物を自殺に追い込んできた氷室(宮世琉弥)が、「わたしが、ヒーローです」と、赤山(桐山健太)の前で宣言した時、正直絶望した。彼も若王子(北村有起哉)も、将来に希望がない若者を自殺に追い込むことを、“人助け”のように思っている。この人たちはもう、更生の余地がない。
参考:桐谷健太、40歳を過ぎて変わった“主演”に対する意識の変化 自分と向き合えたきっかけとは
アンチコメントなんかも同じだ。もちろん、どんな理由があれ、他者を傷つける発言は許されない。それを大前提とした上で、一番救いようがないのは、正義を振りかざしてアンチコメントを送っている人だと思う。たとえば、不祥事を起こした有名人を執拗に叩く人は、“その有名人により傷つけられた人を守らなければ”という使命感に燃えていたりする。これが歪んだ正義であることを、当人は気づいていない。
そう考えると、若王子や氷室もサイコパスというカテゴリーに分けていいものなのだろうか。彼らは、赤山がかつての教え子たちに希望を与え、再起させようとしていることを悪だと捉えている。いっそ、人生を終わらせてあげてラクにしてあげることこそが正義だと。赤山は、この2人をどう変えていくのか。
また、第5話は、若王子と児童養護施設「希望の道」のつながりが明らかになった回でもあった。赤山が「希望の道」で職員をしていたころ、若王子はボランティアで子どもたちにお菓子を配りに来ていたらしい。そして、「希望の道」の経営権を譲り受けたのに、わずか1カ月で売却。赤山が意識不明の重体になった翌日に、「希望の道」の園長・森本(寺島進)が心臓発作で亡くなったというのも、出来すぎたストーリーだ。
さらに、「ドリームグループジャパン」を受け継ぐはずだった若王子の二人の兄は焼け死んでおり、父親は心臓発作で寝たきりになっている(こちらも、心臓発作……)。前回のコラムにも書いたが、彼にとって都合のいいタイミングで人が死にすぎているのだ。十和子(板谷由夏)が言うように、赤山を殴ったのも、若王子の手のかかった人間で間違いないだろう。
そして、「希望の道」に通っていたゆかり(長濱ねる)らに執着している理由も、少しずつではあるが分かってきた。おそらく、あの時の彼女たちは、若王子の“何か”を見てしまったのだろう。だから、若王子はクマを殺すたとえ話をしながら、「怖いよね。あのつぶらな瞳で、殺す前にじーっと見られたらさ、怖いよね」と言っていたのかもしれない。
また、第5話では、赤山のもうひとつの顔も明らかになった。十和子は、赤山のことを「悪魔」「人殺し」と言っていたが、2人の関係性は義理の兄妹。かつて、赤山は十和子の姉と結婚をしていたらしい。十和子によると、「赤山がその姉を殺した」ということだが、それが事実なら赤山と普通に会話をしたりするだろうか。直接手を下したわけではないが……というドラマあるあるの比喩な気がする。
ちなみに、赤山は天才ファンドマネージャーだった過去もあるらしい。そして、金も身寄りもない赤山を自らの家に住まわせ、何かと面倒を見てくれてきた大原(でんでん)は、「数多の上場企業を震え上がらせた最後の総会屋」だったらしく……。これは、面白い展開になってきた。歪んだ正義を持つ若王子 & 氷室と、真っ直ぐな正義を持っている赤山。しかし、ゆかりが言うように、人間にはさまざまな顔がある。一体、誰を信じればいいのだろう。人物像がコロコロと移り変わっていくスリリングな展開から、目が離せない。
(文=菜本かな)

