『おむすび』高松咲希が担う“阪神・淡路大震災のあの日” 歩の人物像を支える存在に
朝ドラ『おむすび』は第5週を迎え、ついに神戸での「あの日のこと」を語り始めた。第17話で描かれた1994年10月の、結(磯村アメリ)と歩(高松咲希)と歩の同級生・真紀(大島美優)の穏やかな日常。第18話で描かれた1995年1月の結と歩の姉妹の絆。第4週は、糸島フェスティバルでのパラショーという華やかな見せ場の裏で、米田家の神戸での愛おしい日々が徐々に1995年1月17日に近づいていく恐怖も感じさせられた。
参考:“マツケン”松平健がアクスタ化&コラボカフェ開催 朝ドラ&YouTubeで全世代のスターに
『おむすび』は、これまで結と歩の間にある確執の原因に触れることを避け、その周りに広がるわだかまりのみを描いてきた。結と歩の間にある確執だけでなく、聖人(北村有起哉)や愛子(麻生久美子)の中にある神戸への想いについても詳しく語ることはなかった。あの日の神戸とそこからの変化が描かれることは、これまでぽっかりと空いていた作品の真ん中を埋めていくことになる。阪神・淡路大震災が、結と歩の人生観に大きな影響を及ぼしたことを踏まえれば、結と歩の幼少期パートを演じる磯村アメリと高松咲希の芝居が結と歩の人間性の根源になるといっても過言ではない。
特に注目したいのは、中学生の歩を演じる高松咲希だ。高松は2015年に芸能界入りし、現在14歳。幼いころからコンスタントにさまざまな映画やドラマに出演してきた。2018年に出演した『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第4話では、継母に虐待を受けながらも健気に父親の幸せを願う大石あかり役を演じた。当時7歳とは思えない繊細な芝居で、視聴者の涙を誘った。『グッド・ドクター』での名芝居は多くの人の心に刻まれ、『おむすび』への出演時、SNSでは「あの時のあかりちゃんだ」という声が見られるほど。
2023年に出演した『おいしい給食 season3』(テレビ神奈川他)では、高めのツインテールが特徴のミステリアスな恋多き乙女・瀬戸口望を好演。幼いころから任された役割をきっちりと果たし、視聴者に強い印象を与える芝居を得意とする俳優だ。『おむすび』にとって最重要になるであろう神戸での幼少期パートを担うべき存在といえる。その証拠に第21話では、高松演じる歩の表情が印象的に挟み込まれていた。
現在までに描かれている中学生の歩には、ギャルの面影はまったくない。歩に安室奈美恵について教えたり、将来モデルを目指し、ファッションセンスもある真紀の方がギャルになってもおかしくないだろう。
ここで思い出したいのが第16話での「辛かったのはお姉ちゃんだけやない。うちだって辛かった。苦しかった。悲しかった。神戸のことも、真紀ちゃんのことも」という結のセリフと、第18話での「最初からギャルなんかじゃなかったから」という歩のセリフ。二人の脳裏には、神戸での真紀との日々が浮かんでいたのだろう。第21話で印象的に描かれた真紀との別れのシーンや、震災後の避難所での真紀を心配する歩の表情。何も起きないでほしいと願ってしまうが、嫌な予感がしてしまう。
結と歩が抱える悲しみに真紀が関係し、歩がギャルになった理由にも真紀との思い出が絡んでいるのかもしれない。高松は真紀に起きてしまうこと、それに起因する苦しみと悲しみに直面する歩を演じることになる。神戸パートで葛藤する歩の姿が視聴者の心に響けば響くほど、『おむすび』という作品全体のメッセージを強めることになるだろう。
高松は、現代パートの歩の振る舞いや感情に、思わず共感してしまうほどの説得力のある中学生の歩を演じてくれるはず。今でも集まる過去の役への賞賛の声がその証だ。
(文=古澤涼子)

