ヒトは生成AIとセックスできるか(新潮社)

写真拡大

 2023年9月1日、ケイト・デヴリンさんの著書『ヒトは生成AIとセックスできるか 人工知能とロボットの性愛未来学』(新潮社)が電子書籍として配信された。紙書籍は9月19日に発売される。

『ヒトは生成AIとセックスできるか 人工知能とロボットの性愛未来学』(新潮社)

セックスを切り口に先端テクノロジーを分析

 本書は、セックスを切り口にして、人工知能とロボット技術という最先端のテクノロジーについて考察したもの。歴史や法制度、宗教、倫理、認知科学などあらゆる面から「人間らしさ」とは何かを考える思考実験の書となっている。

 著者はロンドン大学キングス・カレッジ、デジタル人文学部準教授。クイーンズ大学ベルファスト校で考古学を学んだのち、ブリストル大学でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得、現在はコンピュータ・インタラクションや人工知能を中心に、幅広いジャンルのサイエンス・コミュニケーターとして活動している。

開発され始めたセックスロボット

 本書は人間とセックスできるロボット「セックスロボット」を主題の一つとして扱う。著者によると、セックスロボットは、まだはっきりと存在しているとまでは言えないが、ここ数年で開発が進み、その存在が現実味を帯び始めたという。

 たとえば、カリフォルニアを拠点とする〈リアルドール〉のメーカー、アビスクリエーションズ社は、シリコン製のドールの頭部にアニマトロニクスを搭載し、AIで個性をもたせている。このロボットは、首から下が完全に動かないので厳密にはロボットではないともされるが、AI駆動のアプリを使うことによって、ユーザーが好む特徴を強調させるなどして、キャラクターを調整できるそうだ。

 また、ヨーロッパでは、セルジ・サントスというエンジニアが、男性を欲情させることを目的としたロボットをつくって話題を呼んだ。こちらはヒュー・ヘフナー(アメリカの実業家で雑誌『PLAYBOY』の発刊者)が理想の女性として思い描いた体型をしていて、哲学的な言葉の引用やジョークを口にすることもでき、さらには人工の肉体の内部に張り巡らされたセンサー・ネットワークのおかげで、擬似的なオーガズムに達することも可能だという。

セックスロボットの可能性を考える

 いまだ商業的な大量生産の目処はついていないが、セックスロボットが現実の概念に近づいているのは間違いない。そこで、著者はセックスロボットの登場によってもたらされる可能性のある様々な問題を検討している。

 たとえば、法や倫理の観点からみて、セックスロボット相手の行為は浮気になるのか? セックスロボットはレイプを助長するのか? もし誰かが子ども型モデルを開発したとしたら? 人間同士の関係を破綻させることはないのか? ......などなど。

 また、その逆に、性的欲求を満たすことのできるコンパニオンロボットを、孤独の解消や快楽の提供、あるいは強制性をともなうセックスワークの根絶や、性犯罪者を対象とする治療・社会復帰のために活用するなど、セックスロボットのポジティブな可能性についても検討されている。

鈴木涼美推薦、坂爪真吾による解説も

 本書の発売にあたって、作家・鈴木涼美さんは「人と触れ合うのとロボットと触れ合うのは何が違うのか、セックスを経験しないAIに本当に人のことが理解できるのか、セックスロボットは売春を根絶させるのか、それらを考えることは私たちにとって本来的な性や愛とは何か、そして私たちが愛する者に何を求めるのかを考えることだった。セックストイやロボットの歴史を丁寧に振り返る議論の中に、性的な存在である人の姿が浮かび上がってくる」と推薦文を寄せている。

 また、本書にはNPO法人風テラス理事長であり、『未来のセックス年表2019-2050年』などの著書のある坂爪真吾さんによる解説も収録されている。

【解説より】「セックスロボットというテーマ自体が持つ面白さもさることながら、デヴリン氏の豊かな教養、ウィットに富んだ語り口、そして安易な善悪二元論を避け、余計な仮想敵を作らずに、事実をベースに問いを追究していく姿勢は、このセンセーショナルかつ賛否の分かれるテーマを扱う上でふさわしい。/コーンフレークはマスターベーションの衝動を抑えるための粗食として開発された、男性向けの挿入型のセックストイは考古学的にはまだ見つかっていない、など誰かに話したくなる蘊蓄も満載である。彼女のガイドを受けながら、セックスロボットをめぐる様々な問いを考えていくことそれ自体が、読者にとって刺激的かつ心地よい体験になるだろう。/本書を通読したあなたは、「セックスロボットについて一家言を持っている人」になり、日々メディアを賑わせているAIと人間、社会との関係をめぐる問題についても、実りのある議論を行うためのスタートラインに立つことができているはずだ」

【目次】はじめに ロボットと人工知能が出会うとき第1章 かつてきた道セックストイの起源/バイブレーターとヒステリー/「遠隔ディルド」/野郎どもと女たち/第2章 ロボットは奴隷かコンパニオンかロボットの誕生/ロボットと強制労働/ケアとコンパニオンシップ第3章 人工知能と語りあう「考える機械」の歴史まとめ/機械に学習させる方法/私たちの脳内で実行されていること/ディープラーニング/機械に?意思?を出力させるには/遍在する音声アシスタント/〈Siri〉と語り合う方法/知能は定義可能か/第4章 恋という字は下心セックスは定義できるか/セックスについて語るのはなぜタブーなのか/宗教はセックスをどう扱ってきたか/セックスの民主化/ペットへの愛/アニミズム/擬人観と対物性愛第5章 シリコンの谷間工芸品のようなセックスドール/セックスロボットをめぐる詐欺/「私は製造された存在です」/男性型ドールに需要はあるか/ドール所有者は孤独な人びとか?第6章 ロボットとセックスはどう描かれてきたか女性のモノ化/音声アシスタントはなぜ女性の声なのか/「セックス・マキナ」/ほとんどのセックスは繁殖とは無関係である第7章 セックスロボットの可能性セックス、宗教、結婚/結婚は生き残れるか/「セックスフェス」英国名門大学にやってくる/高齢者のセックス事情/セックスをめぐる調査の困難さ/セックスに相手は不可欠か/定義が現実に追いつけない第8章 セックスロボットはディストピアか「売春」か、「セックスワーク」か/禁止は地下化させるだけ/ポルノグラフィも変化してきている/セックスロボットと暴力/セックスロボットはレイプを減らすか/暴力とBDSM/セックスワークはどう変わるか/セラピーとしてのセックス/ロボットとは付き合うな?第9章 セックスロボットと法ロボットと不同意性交/セックスプライバシーは誰のものか/セックスプライバシーは人権侵害を引き起こす/セックスロボットの乗っとり/有名人に似せたセックスロボット第10章 不気味の谷を越えてエピローグ 愛しあうならテクノロジーで解説 坂爪真吾

※画像提供:新潮社

書名:  ヒトは生成AIとセックスできるか
サブタイトル: 人工知能とロボットの性愛未来学
監修・編集・著者名: 著者:ケイト・デヴリン、訳者:池田尽
出版社名: 新潮社
出版年月日: 2023年9月19日
定価: 2,310円(税込)
判型・ページ数: 四六版・320ページ
ISBN: 9784105073619


(BOOKウォッチ編集部)