トラックドライバーは見ている! 普通車の要注意車両、その特徴とは

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同じ交通環境にいながら、機動力の高い普通車やバイクと、大型トラックの間には意外と大きな溝がある。自分もプライベートでは普通車乗りだから敵視する立場ではないが、普通車にとっての普通の動きや操作が、トラック乗りをはっとさせる場面は多い。今回はそんな気になる(注意すべき)普通車の動きなどについて、トラック野郎目線から語らせてもらいます。

①交差点通過の直近、直後に追い抜く隣り車線の普通車

視点の高いトラックに乗る前はあまり意識しなかったことに、“交差点の直前直後は1車線当たりの道幅が非常に狭くなる”というのがある。例えば片側2車線だった道に、交差点付近で右折レーンが出現する。道の総幅は同じなのに2車線が3車線になるのだから当然だが、高い運転席から見るとそれが視覚的によくわかる。


●片側2車線が交差点で3車線になる一例。普通車では側方を通行できる車線幅ながら、大型車や4トンワイドの中型車(車幅約2.5m)でははみ出さざるを得ない。写真は甲州街道(国道20号)高井戸以西の区間だが、他に関東都心では環七や環八、新青梅街道などが似たような道幅で走りづらい区間が多い印象

車幅のある大型・中型トラックでは、急に道幅の狭まるこの交差点直前直後が要注意箇所だ。片側が急に3車線になった影響で、大・中型トラックははみ出さざるをえない道幅になるので、隣に並走するクルマがいないように速度を調整して進入&通過するのを心がける。だが、なぜかここぞとばかりに隣り車線を後方からやってきて、この箇所で追い抜こうとする普通車がいたりする。

こうなると、まさに車両同士の間隔はギリギリだが、普通車側からしてみれば「隣りの車線にはみ出してくるな」とばかりホーンを鳴らしてきたりもする。自車の車線の走行を侵害するなとの主張も込めているのだろう。だが、物理的には致し方ないのだとわかってくれないので、こちらはヒヤリとする。そして、交差点で追い抜きをかけるのは概して危険だと知って欲しいのだ。交差点直前は幅の広い車両の車線はみ出しだけでなく、対抗車線の右折車やバイクが慌てて直前を横切ってくる可能性もある。交差点付近は、穏便に通過していただきたい。

②脇道に入る手前で、思いのほか停止時間の長い普通車

幹線道は流れのいい区間も多い反面、沿線に商業施設や娯楽施設も多く、立ち寄り箇所が多いのが注意点。そのため片側2車線道路なら中央(右)寄りを走るのが賢明かもしれない(ただし、右車線が急に右折レーンになる場合もあるので、一概には言えない)が、自分の左折箇所が近づいていたら、左車線を走ることとなる。その場合は沿線の施設に入る普通車に注意が必要だが、特に沿線施設進入前、思いのほか本線上で一時停止の長い車両がいたりするので注意が必要だ。横切る歩道に歩行者がいて一時停止というのならこちらも想定可能だが、左折前の本線上で、進入する施設の駐車場の様子確認のために停止といった場合もあるから、注意が必要。特にこうした車両、先の見通しを読まない高齢者の”紅葉マーク”、”初心車マーク”などに多い気がする。

そして高齢者になるほど、動体視力の減退や視野が狭まる傾向があるので、それを見越して後方車は対処する必要がある。そのほか、車線内でのふらつき、車線変更や本線進入時などの緩慢な操作や急な操作にも気をつけたい。



③運転操作が緩慢&不安定な「ながらスマホ」運転

視点の高いトラックの場合、普通車のドライバーがどんな状況で運転しているかなど、比較的把握しやすいかもしれない。スマホ画面を見たり操作したりという「ながら運転」の危険は近年注目され、令和元年(2019年)12月から罰則も強化されて違反点数や反則金ともに高くなった。とはいえ、いまだにスマホに触れているドライバーが案外は多いのが実感できる。こうしたドライバーは緩慢な操作のほか、急の付く右左折や車線変更も起こしやすいので、早めに認識したいところ。ちなみに、ながら運転の気配を察しやすい特徴は、発進時のタイミングの遅いことを始め、走行中の車線内で車両が左右に不自然に寄っていったりすること。早めに「ながら運転」ドライバーを認識して、極力距離を取るか追い越すなどして近づかないようにしている。

④タイミングに注意したい、女性ドライバーの運転

こう言うと差別的に感じられてしまいそうだが、傾向的な話としてご参考までに。脇道から本線に進入する場合など、入って来ないだろうというタイミングで意外に入ってくるのは、女性ドライバーが多いように感じる。こちらが接近する前に入れば安全なのにという距離感での進入が多い印象で、これは一瞬入るのを躊躇ってから入ってくるようなタイミングの悪さが起因していると思う。そのためこちらは、思いの外減速して道を譲る場面に出くわすことが多いのだ。一方、男性ドライバーの方は傾向的にタイミングの取り方、無理をして進入しない割り切り面などで、安心と感じるのは筆者の偏見か?



⑤都会より地方で多く感じる、あおりハンドルと内かけハンドル

あおりハンドルとは、脇道に入る場合などに一度車両の頭を逆側に振り出してから曲がる操作のこと。曲がる際の内側の障害物を避けるためや、なるべく脇道に真っ直ぐ進入したいなどの意図があり、全長の長い大型車の場合は意図的に行う場合はあるが、普通車の場合この操作は大概不要。むしろ曲がる方向と逆側に頭を振る操作のせいで、並走車に接触と言った事故につながることもあり、教習所でも推奨していないはずだが、実際にはこれをやるドライバーが案外多い。特に車幅のあるトラックが側方を通過している場合など、かなりヒヤッとする。

この操作については以前の記事でも述べたが、傾向的には都会の主要道よりも、地方道での方が多いように感じる。道幅に余裕がある箇所が多く、接触事例が少ないせいもあるのかもしれないが、筆者はそういう経験から、地方の幹線道などでは特にこのあおりハンドルドライバーに気をつける。なおこれは蛇足だが、あおりハンドルをする人は、内かけハンドルで操作する傾向が強いように感じる。

⑥大型車駐車スペースにわざわざ止める普通車

大型車の困ることは、コンビニや飲食施設の駐車などで、利用に制約があること。特に都心や市街地などでは駐車スペースが小さくて止められず、結果的に大型駐車スペースのある郊外型のコンビニや道の駅、高速のSAやPAが貴重な休憩スペースとなる。ところが、こうした大きなスペースにわざわざ普通車1台を止める場合がある(普通車スペースがあるのに、である)。無意識にやっているのだろうが、特に昼時や夕食時など、休憩需要が多い時間帯にこれをやられていると、大型トラックは困って路頭に迷うことがある。トラックは、普通車ほど自由に休憩できないことを理解して、駐車場所を選んでいただきたい。


●とある昼間の高速道パーキングにて。大型車の駐車スペースはほぼ満車で休憩場所で路頭に迷う状況なのに、こういう普通車がいる。ちなみに普通車の駐車スペースが満車だったわけではないのだが…

⑦自転車ナビマークについての懸念

ここ最近路上に増えたものとして、左脇にペイントされた自転車のマークと矢印がある。これは2020年の開催予定だった東京オリンピックに向け、自転車が通行を推奨される部分をより具体的に示しておこうという意図で設置され始めたのだとか。

より幅が広くて水色にペイントされた自転車専用通行帯とも、独立した自転車専用レーンとも異なり、従来の道にペイントのみが施工されたこれらは“自転車ナビマーク”というらしいが、近年最も目につくのがこの表示だ。ここを走らなければダメという法的な効力はなく、歩道を利用する歩行者と自転車を安全に分けるための目安であり、矢印の進行方向表示で逆走を抑止すると言った狙いがある模様。ところがこのナビマーク、このペイントが設けられても、車道の幅が従来より拡幅されたケースは極めて少ない。つまりは従来車道だったところに、拡幅なく追加塗装されたケースが実に多いのだ。


■矢印と自転車の図柄が組み合わさり、路面にペイントされた“自転車ナビマーク”。ここ数年間で増えたこのマークだが、広くもない道幅の車線でも設置されるのは安全上どうなのか? 特に夜間、反射板や尾灯をまともに装備せず走る自転車にハッとすることも多い

そこで疑問に思う。この自転車ナビマーク通りに自転車が通行すること=自転車は安全か? この塗装設置によって、自転車に乗る人とその脇を通るクルマとの距離は極端に近くなり、場合によっては自転車はその後ろにクルマの渋滞を発生させ、痺れを切らしたクルマが自転車からギリギリの真横を通り過ぎたりもする。特に車幅の広いトラックの場合、自転車ナビレーンを自転車の追い抜きはほぼ困難で、その自転車が歩道に避けてくれるか、脇道に入ってくれない限りノロノロと後ろをついていくしかない。

一方自転車を使う側にすれば、この自転車ナビマーク付きのエリアは、法的拘束力がないと言っても自分が走るべきラインだと認識してそこを走り、たとえ道幅が狭くて後続に渋滞を作ったとしても延々とそこを走り続ける。つまり、クルマの混み具合によって歩道に移ると言った対応をしなくなりがちなのである。果たしてこれが、安全上も交通の円滑な流れにとっても、有効な対処なのか、つねに疑問に思う。

そしてさらにタチの悪いのは、イヤホンを耳にさして自転車に乗る人。クルマの流れを確認もせず本線に進入してくるなど、自転車ナビレーンを走っていれば安全と思っているのか、安全ボケも度が過ぎる。これに加え、今後キックボードユーザーなども増殖してくるなんて状況になると、トラックドライバーとしてはさらに悩ましいと感じる昨今である。

〈文と写真=阪 和浩〉