セックスをしている最中やセックスを終えた後に、「普通の人はどれくらいの時間セックスを続けるのだろう?」と疑問に思ったことがある人も多いはず。多くの人がひそかに気にしながらも調べることが難しい「一般的なセックスの持続時間」について、オーストラリアのクイーンズランド大学で心理学の准教授を務めるBrendan Zietsch氏が解説しています。

How long does sex normally last?

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科学者は「普通のセックスはどれくらいの時間続くのか?」という質問を「平均膣内射精潜伏時間(mean intravaginal ejaculation latency time)はどれくらいか?」と言い換えて考えています。平均膣内射精潜伏時間と聞くと難しく感じられますが、簡単に言えば「ペニスを膣に入れてから射精するまでの平均時間」のことです。

もちろん、セックスとは単にペニスを膣に入れて射精するだけが全てではなく、キスや前戯といった要素や挿入中の行動も含めたものですが、研究者は物事を単純化して挿入から射精までの時間に焦点を当てています。しかし、セックスの時間を「挿入から射精まで」と単純化しても、研究は簡単ではないとZietsch氏は述べました。

平均膣内射精潜伏時間を調査するにあたって、最も多くのデータを集められる方法はアンケート調査ですが、この手法には2つの問題があります。1つ目は「セックスを長く続けられる方がよい」という社会的通念があるため、人々は実際よりも長くセックスの持続時間を報告する可能性があるという点。2つ目は、多くの人々はセックスの開始時点と終了時点でいちいち時計を確認しないため、実際にどれほどの時間セックスをしていたのかわからないという点です。



記事作成時点では、平均膣内射精潜伏時間について最もよく調べたものは、2005年の研究だとZietsch氏は述べています。この研究では、オランダ・イギリス・スペイン・トルコ・アメリカの5カ国に住んでいる「6カ月間以上にわたり安定した異性愛関係を結んでいるカップル500組」を対象に、セックスを行う際にストップウォッチで時間を計ってもらいました。実験は4週間にわたって継続され、カップルはセックスをするたびにストップウォッチで挿入から射精までの時間を計測したほか、割礼の有無やコンドームの使用についても記録したとのこと。

集計したデータを分析したところ、各カップルの平均膣内射精潜伏時間は非常に大きなばらつきがあり、最短のカップルは33秒だった一方で最長のカップルは44分と、実に80倍もの開きがありました。従って、「一般的なセックスの時間」と言える固定的なものは存在しないとZietsch氏は指摘。なお、500組のカップルを平均膣内射精潜伏時間の順に並べた際、ちょうど真ん中に来るカップルは「約5分24秒」だったそうで、強いて言えば5分24秒が全カップルの中央値となります。

この研究では、コンドームの有無や割礼の有無が平均膣内射精潜伏時間に影響しなかったことも判明しており、「コンドームの装着や割礼はペニスから得る快感を低下させるため、セックスの時間が長くなる」という考えに反する結果も判明。また、欧米諸国のカップルでは平均膣内射精潜伏時間の差が見られなかった一方、トルコのカップルはやや短く中央値が3分42秒ほどだったことや、年齢が高いカップルほどセックスの時間が短いこともわかりました。

もちろん、「セックスの際にストップウォッチで時間を計る」という行為がムードに影響を与えたり、正確な時間が計れなかったりした可能性はありますが、この研究は今のところ平均膣内射精潜伏時間について最もよく調べたものだとZietsch氏は述べています。



「セックスをするのは子孫を残すためである」という考えに基づけば、セックスで本当に必要な行為は精子を膣に送ることです。そのため、ペニスを膣に挿入してすぐに射精するのが最も合理的であり、何度もペニスを出し入れして長時間セックスを続けるようになる必然性がありません。

Zietsch氏は、たった1回だけペニスを膣に挿入するだけでセックスが終わらないように進化した理由として、手がかりはペニスの形にあるかもしれないと指摘。2003年の研究では、「ペニスの形状は膣の中に入っているドロッとした液体をすくい出すのに適した形状をしている」ことが示されました。

この結果は、ペニスを繰り返し出し入れする行為には「射精する前に別の男性が膣に残した精液をかき出す」機能があることを示唆しています。射精前にペニスを出し入れして他人の精液をかき出すことで、自分の精液で受精させやすくなる可能性があるとのこと。また、射精した後にペニスを動かすことが苦痛である理由も、自分の精液をかき出さないようにするためかもしれないとZietsch氏は述べました。