レオパレスにヤマダによる買収観測、好手か悪手か

レオパレス21本社(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所客員研究員)
賃貸住宅大手のレオパレス21。2020年3月期の連結最終損失は802億円で2期連続の赤字を計上しました。帝国データバンクによれば、同社の下請先は4471社、総従業員数は22万人を超えています。債務超過寸前と言われ、すでに自力再建は困難と見られています。
7月22日に開かれた株主総会では、2期連続の最終赤字となったことについて宮尾文也社長が陳謝。同社の経営はかなり厳しい局面に立たされています。
そうした中、いま家電量販大手のヤマダ電機が支援者に乗り出すのではないか、との観測が浮上しています。果たしてヤマダ電機がレオパレス21と組むとどのようなメリットが生まれるのか、分析してみます。
大塚家具の事例からわかる多角化
ヤマダ電機は昨年12月に大塚家具の株式51%を取得して子会社化しました。すでに、東京都心や大阪の大型店でヤマダ電機と大塚家具のコラボ売り場が展開されています。しかし、大塚家具の決算書には2018年12月期上期から「継続企業の前提に関する疑義注記」がついたままです。ヤマダ電機はなぜ業績が悪化した大塚家具を子会社化したのでしょうか。
ヤマダ電機は大塚家具を傘下にすることで、ブランドを再構築する機会に恵まれました。ヤマダは「家電住まいる館」を全国に展開し、住宅事業へも進出していました。今後大幅な売り上げ増加が見込めない家電だけではなく、住居全般(家、リフォーム等)を扱いながら、その中で家電も一緒に販売していこうという戦略です。ここに家具というピースを持った大塚家具は上手くはまるのではないかと見込んだのです。
一方でヤマダ電機には、家電小売という薄利多売のイメージが付きまとっていました。さらに住居を扱う市場では、安売りのイメージはネガティブなものになります。消費者が家を購入する際に何を大切にするでしょうか。多くの人にとって家は安心する場所でなければいけません。住居という一生の買い物には安心感が必要なのです。そうするとヤマダ電機が大塚家具を傘下にした狙いが見えてきます。
大塚家具にはお家騒動の問題があったとはいえ、高級家具のイメージがありました。ヤマダ電機が欲しかったのは大塚家具にある高級のイメージだったのです。
住宅市場への進出を狙う、ヤマダ電機が大塚家具のブランド力やノウハウを手に入れたいと思うのは当然のことだと思います。しかし肝心の大塚家具の業績はさっぱり好転していません。現在のところ、大塚家具の子会社化でヤマダ電機が描いていたプランは、お世辞にも成功しているとは言い難いものです。子会社化のメリットはまだ享受していないとみてよいでしょう。
では、ヤマダ電機がレオパレス21と組むことは何らかのメリットをもたらすものなのでしょうか。
ヤマダ電機とレオパレス21の親和性
ヤマダ電機がレオパレス21と組めば家具家電つき物件を提供するなどといった相乗効果は見込めると思います。
しかし、現在、レオパレス21は、施工不良問題を引きずっているところに新型コロナウイルスの感染拡大に追い討ちをかけられ、業績低迷にあえいでいます。業績悪化を食い止めるには、不備があった物件の改修を完了させ、信用回復を図るとともに、稼働物件数を引き上げる必要があります。
ところが、新型コロナの影響で改修工事の進捗が遅れています。日経新聞(2020/4/29)によれば、全施工物件3万9000棟を対象に調査した結果、約3万棟で不備が見つかったとのことです。4月末時点で改修が済んだのは約1000棟にすぎません。さらに固定費削減のため人員を約1000人削減します。
21年3月期の連結決算の売上高は4310億円、営業損益は98億円の赤字、最終損益は80億円の赤字の見込みです。自己資本比率は27.7%から0.7%へ急低下しました。債務超過を避けるためにはもはやスポンサー探しは不可避と見られます。
レオパレス21の営業方法
レオパレス21には賃貸経営のノウハウがあります。しかし、大塚家具のようなブランド力を有しているかというと少々疑問です。
実は数年前、レオパレス21の営業マンと対峙したことがあります。知人の母親が住んでいる実家宅に営業マンが訪問し、知らないうちに契約書にサインをしていたのです。母親は高齢で内容もよくわからないまま電子パッドにサインをしていました。
提案書を確認するとその後、「かぼちゃの馬車」問題で不正が発覚するスルガ銀行から融資を受けて賃貸物件を建設する計画でした。50坪程度の土地に母屋とワンルーム数部屋を建てるプランですが、驚くべきことに、1部屋でも空きが出たら即赤字になるシミュレーションでした。
さらに、木造にもかかわらず坪単価が100万円と相場をはるかに上回っていました。一般的に、木造なら50〜60万円程度、軽量鉄骨なら70〜80万円程度、鉄筋コンクリートで100万円弱が相場です。
なにより、当時レオパレス21には「終了プロジェクト」の噂が絶えませんでした。「終了プロジェクト」とは、30年一括借り上げを謳っておきながら、契約から10年経過したら解約を前提とした協議に移行させる手法です。家賃保証額の減額や解約をチラつかせ、自社の利益率の引き上げを図る方法です。
「終了プロジェクト」の実態は、2017年末に放送された『ガイアの夜明け』(テレビ東京)によって明らかにされました。筆者が解約の交渉をすすめていた矢先に、『ガイアの夜明け』の報道がなされ、うまく解約の話をとりつけることができたのはラッキーでした。
サブリースで決まりの3点セットとは
レオパレス21のような、土地所有者にアパートを建てさせて全室を一括で借り上げ、入居者に転貸するビジネスをサブリースと言います。本来、地主層などを顧客にしていたビジネスですが、近年は土地を持たないサラリーマン層などにも、土地のあっせんを含めてアプローチしています。ご存じのように、この部分で金融機関の社員とグルになって、顧客に対し銀行などから不正に融資を引き出させていた不動産会社がいくつも社会問題になりました。
サブリース業者は、本当に顧客のためを思ってセールスしているのでしょうか。レオパレス21を含めたサブリースを扱う不動産会社の営業マンが客に提示する、お決まりの3点セットが存在します。3点セットとは次のようなものです。
1.節税対策(相続税)などに有利であること。
現金を残しても課税されてしまうが、アパート経営は有効であるというもの。
2.安定的収入が見込めること。
アパート経営は毎月安定した家賃収入が見込めること。景気変動にも強く安定している。
3.空いている時間にできる不労収入である。
時間に拘束されないためはじめやすい。家賃収入からローンを返済するのでリスクがない。
将来的に建物を売却したり、新たに建て直すなど様々な選択肢があるなどのメリットを提示するので、提案書だけを見れば顧客にとってはノーリスクに見えてしまいます。
「私どもは新築のアパートを建てたい人を応援しています。我々が土地を見つけてくるので、その土地を購入して、紹介した業者を使いアパートを建設してもらいます。あとは、うまく利回りができるように運営するだけです。超簡単ですよね?」。こんな具合です。
ところが、これらは入居者が入る前提の計画です。計画どおりに進まないと高利の負債だけが残ります。彼らの狙い目は年収500〜600万円程度の平均年収より少し上のゾーン。どうにかして不動産を所有したいという欲求に付け入るのです。筆者自身が知る限り、あまり行儀のよいビジネスとは思えません。
そして、すでにレオパレス21は施工の不備で企業イメージは大きく傷ついています。ヤマダ電機がグループ内に取り込んだとしても、企業のブランド力向上という面での寄与は期待しにくい状況です。
新型コロナの影響は排除できない
新型コロナ対策として、多くの不動産会社が「来店予約制」と「オンライン接客」を導入し、物件紹介にパノラマ画像を利用するようになりました。市場環境が大きく変わり、不動産会社に求められる要件が変化したといえるでしょう。
また、私たちの働き方にも変化が生じています。今後、「リモートワーク」の比率はさらに高まることが予想されています。そのことで、勤務先や通学先に近い都心の賃貸住宅に住むよりも、実家や郊外の広い住宅に住もうとする人の割合は増えることが予想されます。レオパレス21にとってこの流れはこれからも続く逆風になりそうです。
であれば、ヤマダ電機が都市部を中心に展開するレオパレス21と連携することはリスクになりかねません。筆者にはヤマダ電機にとってそれほど魅力的なスキームに思えませんし、報道だけが先行しているようにも感じます。もちろん、ヤマダ電機の経営を主導する山田昇会長は百戦錬磨の経営者ですから、レオパレス21と組むことのメリット・デメリットも十分に勘案して判断するのだと思いますが、不動産事業は大きな転換期を迎えており、従来とは違うモノサシで将来性を図るべきだと思います。
筆者:尾藤 克之



