新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入する企業が増え始めた。緊急事態宣言の発表により、その数はこれから増えていくことだろう。しかし、すべての社員が一律、真面目にテレワークに臨むとは考えられない。年収1000万円、大手システム開発会社に勤務するダイスヨシハラ氏が、その呆れた勤務態度を告白する。こんな愚行、許されるはずがない。
写真=iStock.com/tuaindeed
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

■真面目にテレワークする社員などいるわけがない

2月末から完全にテレワークとなった私の一日は、二日酔いによる頭痛、吐き気、尿意、足の親指の痺れのフルコースから始まります。自分でもむせるほどのアルコールとタバコのニオイが混じる溜息を吐き、寝返りを打ち、昨晩の楽しかったことを回想します。

昨日の朝も、ひどい二日酔いでした。前日の昼過ぎから自宅でYouTubeを肴(さかな)に業務用ウイスキーでハイボールを量産し、気を失うまで飲み続けました。日付を跨いだところまでは覚えています。

翌朝、意識を取り戻した私は、朦朧(もうろう)としながらも社用のノートパソコンを起動させ、リモート出社しました。時刻はちょうど8時くらいでした。弊社はフレックス制のため、この時刻が出社時刻の実績になります。

それから夕方までひたすら寝て、アルコールが抜けるのを待ちました。30代も後半に差し掛かった私の体には夕方になってもだるさが残っていましたが、妻が帰宅する前に仕方なく自宅を出ました。妻とはあまり顔を合わせたくないのです。向かった先は近所のサウナ。汗を流して仮眠を1時間ほど取ると、すっかり体調は回復していました。

■サウナにビールにガールズバー

調子が出た私は、サウナ内のレストランで生ビール2杯とカレーを平らげ、新宿のゴールデン街に行きました。女優志望とかいうハタチそこそこの美人が立つバーです。彼女を目当てに、このバーには半年ほど前から通っています。外出自粛の風潮になる前は、私と同様に彼女を目当てにした客で店内はいつも満席でしたが、昨日は彼女と2人きりでした。

筆者撮影
テレワーク中にサウナで汗を流し、ビール2杯とカレーを平らげた。 - 筆者撮影

時間を気にする必要のないガールズバー状態で彼女を独占。お互いの共通の趣味で盛り上がり、LINEの交換と外で会う約束まですることができたので大収穫でした。この時点で、私は思考が鈍くなってきていました。まだまだ彼女との会話は盛り上がっていましたが、酒癖の悪い私は、彼女に好印象を残したまま店を出ることにしました。

店を出た私は、すでに帰宅している妻に、電話でリビングにある私の社用のパソコンをシャットダウンするよう指示をしました。妻はヒステリックに不平を叫んでいましたが、指示通りにやってもらうことができました。時刻は22時半です。この時刻が退社の実績になります。パソコンを起動したのが、朝8時なので14時間半が勤務実績になります。標準労働時間が7時間半なので7時間も残業したことになります。7時間の残業実績の大収穫です。さらにテンションが上がった私は、もう一軒、馴染みのバーに向かいました。ここで昨晩の記憶は途絶えます。

■テレワーク中に二日酔いで嘔吐した

ふと我に返りました。ベッドから床を見下ろすと、昨日着ていた服や記憶にないコンビニ袋、ペットボトルやカップ麺が散乱していました。布団からところてんのように抜け出し、床を這いつくばり、服を手繰り寄せ、ポケットを乱暴にまさぐります。財布とスマートフォンがあることを確認できましたが、あえて見ないでおきます。お金が減っていることと妻からの怒りのLINEが怖いからです。スマートフォン、タバコ、ライターをスウェットのポケットに入れ、重い頭を引きずりながら自室から廊下に出ました。玄関のほうに目をやり、妻がすでに仕事へ出かけたことを確認してから、私はリビングへ向かいました。

テーブルの上に置かれた社用ノートパソコンを立ち上げ、テレワーク用のVPNに接続します。時刻は10時を回っていました。接続に時間がかかっている間に、尿意を思い出してトイレに向かいました。用を済ませ、リビングに戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターのまだ封を切っていない2リットルのペットボトルを取り出し、そのまま口をつけて飲みます。手でペットボトルに軽く圧をかけながら、一気に流し込むと胃から嫌な感覚が込み上げてきました。反射的に流し台に頭をつっこみ、2度3度咆哮してすべてを吐き出しました。それから、口をゆすぎ、タバコに火をつけてパソコンの前に座りなおします。VPNへの接続は完了していました。そして、タバコの煙をディスプレーに吹きかけながらメーラーを確認します。外注業者からのアウトプットに適当に難癖をつけて新しいタスクを投げ、部下に仕事を指示、上司に業務報告のメールをしました。これらは、通常1回で済むメールを複数回に分け、さらにタイマーを設定して時間差で送信します。

■テレワークで14時間半労働のカラクリ

それから私は、高橋名人と名付けたテキストファイルを開き、キーボードに目を落とし、文字列を眺めます。

「これで一応働いていることにはなる」ダイス氏の偽装テレワーク法(筆者撮影)

「今日はどれにしよっかな〜。昨日はAだっけ? Fだっけ? ど〜でもいいや〜。そーれカミサマノイウトオリ! Yに決定だぁぁぁぁ!」

そして、先ほどのペットボトルの中身を一気に飲み干し、キャップを「Y」の上にそっと載せます。さらにその上に重しの灰皿を載せると、ディスプレーには小文字の「y」が連打されてゆく--。その光景を眺めながらタバコも押し付けてみます。テレワーク用のVPNは一定時間操作がないと自動で切断されてしまう。切断されると、他の社員からは私のアイコンが非アクティブと表示され、最終ログイン時間からサボっていることがバレてしまうのです。

私は、自室に戻り、ベッドに横になりスマートフォンを眺めます。まず、昨晩の妻からの怒りのメッセージ履歴をすべて削除。バーの美女からメッセージが来ていたので外で会う約束を具現化するための駆け引きメッセージを送信し、SNSやまとめサイトを周回します。それから、言いようのない多幸感の中、眠りに落ちました。

次に目を覚ましたのは、14時くらいでした。そして今、この原稿を書き終えるところです。会社の業務よりも断然身が入りますね。

あれから、バーの美女から返信が来て、急遽(きゅうきょ)、焼肉を食べに行くことになりました。顔のむくみをとるために今からサウナに行ってきます。朝送った仕事のメールが返ってきていますが、明日意識が戻り次第、やろうと思っています。

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信じがたい告白の数々に驚愕、卒倒した読者も多いだろう。しかし、それが現実なのだ。そして、この告白を無きものにするのではなく、事実をもとにして、日本の経営者たちに在宅勤務のマネジメント改善を求めていきたい。労使がともに働きやすい環境を進めていくのが、このコロナ禍を脱し、日本が改めて成長の道へ戻る方策ではないのだろうか。いま、日本社会の胆力が求められているのだ。

※お詫びと訂正 本記事は、2020/04/15に編集途中で誤って配信されたため一度取り下げ、あらためて加筆・修正し、配信したものです。

(ダイスヨシハラ)