デコトラとはトラックの外装をこれでもかと飾り立てたトラックのことで、日本では「トラック野郎」シリーズなどの映画でも取り扱われています。実はインドも美麗な装飾が施されたデコトラが走っている国であり、インドのデコトラ事情に迫ったムービーが公開されています。

India's trucks are works of art - YouTube

レポーターの背後で鳴るクラクションの音。「あなたがインドをドライブすると、これを見るでしょう」という言葉の後に映されるのは……



色とりどりのトラック。





何やらお祭りの神輿のような雰囲気もただよっています。



インドではこのようにカラフルで芸術的なペイントや装飾が施されたトラックが、あちこちで走っているとのこと。



インドの物流においてトラックは必要不可欠なものであると同時に……



アートのキャンバスにもなっています。



インドのトラックを彩る装飾は、インドの文化や言語、思想、歴史などがバックグランドになっているそうで……





道路の至るところで芸術的なトラックを見ることが可能。



トラックドライバーの男性は、「ここは私の家です。ここに住んでここで食べて……私たちトラックドライバーは、本当にトラックを家だと考えているんです」と語ります。



「家」という言葉の通り、トラックドライバーは車内で膨大な時間を過ごすことになるため、トラックの内部は非常に個人的な空間となっており……



内装も各々が好きなように飾り立てています。



トラックは第二次世界大戦の間にイギリスからインドへ入ってきてから広がり、イギリスが去った後も物流において大きな役割を果たしてきました。



家から離れて何週間も長距離を走るドライバーたちにとって、トラックは仕事場であると同時に家であり、そして礼拝のスペースでもあるとのこと。



Vedatya Instituteで美術教授を務めるUsha Iyer氏は、「トラックドライバーにとってトラックの中は居心地がよく、平和を感じられる場所でなければなりません」と語っています。



トラックを装飾するのは専門の画家たちであり、多くはインド北西部のパンジャーブ州出身だそうです。



手書きとは思えないようなタイポグラフィを書き……



色鮮やかな動物も描き出します。



トラックアートの画家であるこの男性は、なんと20年もトラックに絵を描き続けているとのこと。父親も祖父もトラックアートを描いていたそうで、幼い頃から親たちがトラックに絵を描く様子を観察していたと語ります。



パンジャーブ州のトラックドライバーたちが使う独特の技法には、美術教授のIyer氏も目を見張るものがあるそうです。



画家たちが描くもの動物や文字、人間の顔、アイコンなど実にさまざま。







トラックアートではほとんどの場合、明るい色彩を使用しており、暗い色をほとんど使いません。



暗い色は強調したいものを浮かび上がらせるために、効果的に用いられているとのこと。



色を効果的に使うことで、まるで文字が3Dになって浮き出ているかのようにも見えます。



トラックの後ろ側に見える文字に多いのは、「BLOW HORN(警笛を鳴らして)」というもの。



死角の多いトラックを運転するドライバーにとって、近くにいる車が鳴らす警笛は他の車の位置を把握するために重要だそうです。



日本では「危ない!」という警告の意味で鳴らされることが多い警笛ですが、インドでは警笛がコミュニケーションツールとして使われており、道路で警笛が鳴り響くのは日常の光景となっています。



また、「USE DIPPER AT NIGHT(夜間照明を使って)」というメッセージもトラックの後部によく書かれているとのこと。



もちろんトラックを飾る動物などのアイコンもトラックアートの重要な部分であり……





たくさんのトラックが並ぶ駐車場でも、ドライバーたちはアートを手がかりに簡単に自分の車両を発見できます。



ドライバーたちはアートのクールさも重視しており、特に「ワシ」をモチーフにした絵が人気な様子。





また、宗教的シンボルを車体に描いたり車内に飾ったりすることも多いそうで、日夜トラックを走らせる危険な職業であるトラックドライバーたちは宗教による加護を願っているとのこと。



それぞれのトラックドライバーたちは自らのトラックに誇りを持っており……



インド中を移動するトラックドライバーたちの共通文化ともいえるものです。



トラックはインドにおいて重要なビジネスですが、同時にアート性を両立させた上に、さらにドライバーたちの家としても機能しています。