「加熱式たばこ」有害物質の低減判明で疾病リスクも減少
近年、世界的な健康意識の高まりや各国の法規制により、長い間たばこの主流だった「紙巻たばこ」から、機器で葉を熱する「加熱式たばこ」への転換傾向が著しい。
日本でも2014年に名古屋限定でアイコスが発売されて以来、グロー、プルーム・テックの2ブランドが続き、年々シェアを増やしている。2018年4月にマクロミルが発表した、全国の20〜60代の男女2万人の喫煙者を対象にした調査では、39%が加熱式たばこユーザーだという結果が報告されている。
加熱式たばこは「発生する蒸気に含まれる有害物質は紙巻と比べて大幅に低減されている」という謳い文句で発売された。プルーム・テック、グロー、アイコスの3大ブランドを販売する各メーカーは、開発段階からいまなお、有害物質についての臨床試験を続けている。
これまでそうした実験では、「主流煙・副流煙中の有害物質」「環境への有害物質の放出量」などがメインテーマとされ、研究・結果報告がなされてきた。
そして2018年、日本たばこ産業(JT)は、特定16種の有害物質について、プルーム・テック使用者の体内に取り込まれた量を測定した試験結果を発表した。その試験内容はこうだ。
●60名の健康な成人「紙巻たばこ」喫煙者が参加
●医療施設に7日間入院(準備期間2日間+調査期間5日間)
●2日間は普段どおり、自由に紙巻たばこを喫煙する準備期間
●3日めから調査期間に入り、無作為に振り分けられた20名ずつ3グループに分かれ、5日間過ごす。条件は以下のとおり。
・第1群は、紙巻きたばこを、事前に申告のあった個々の1日の平均使用本数プラスマイナス10%まで、自由に喫煙
・第2群は、プルーム・テックを、1日10カプセルまで自由に喫煙
・第3群は、禁煙
●すべての参加者について、調査期間の1日め、3日め、5日めに採尿と呼気を測定
この実験を監修した、北里大学医学部附属臨床研究センター教授の熊谷雄治氏は、発表時に試験の質を保証した。
「本試験は被験者の人権や安全性の保護に十分に配慮がなされ、また科学的な質が確保されるよう、手順が定められていたと言えます。
また、私も、実際に、試験を実施した施設を訪問し、被験者の管理や、施設スタッフの手順も見ましたが、臨床試験としての充分な品質が担保されたものと考えております」
グラフ・日本たばこ産業
その結果、禁煙した第3群と、紙巻からプルーム・テックに切り替えた第2群について、有害物質が体内に取り込まれた量が同程度減少した。ただし、16種の有害物質のうちニコチンだけは、プルーム・テック群は、禁煙群の半分程度の低減だった。
試験結果について、熊谷氏が解説する。
「試験の解釈として、紙巻たばこの喫煙からプルーム・テックの使用に切り替えることで、紙巻たばこの喫煙にともなう疾病のリスクを低減する『可能性』が高いと考えております。
ただ一方で、この結果のみで疾病のリスクが低減されるという『断定』はできません。今後、プルーム・テック使用者の健康影響を調査するといった、さらなる研究が必要であると考えております」
加熱式たばこの「害が減る」イメージは、間違いではなかった。