松阪駅と伊勢奥津駅の間を結ぶJR名松線は、2009年10月の台風18号で大きな被害を受けました。当初は全線が運休し、バスの代行運転が行われましたが、1週間後に松阪から途中の家城までは運行が再開されました。しかし、現在に至るまで、家城から伊勢奥津までは運休が続いています。

JR東海は当初、運休区間は今後も自然災害による影響が考えられるためバスに切り替える意向でしたが、自治体や沿線住民からの強い要望を受け、治山・治水とその維持管理を三重県・津市が行うことで鉄道復旧を行うこととして、2013年5月30日から復旧工事に着手しています。

復旧工事開始から1年以上が経過した現在、名松線沿線はどうなっているのか、実走して確認することにしました。

(PDFファイル)名松線時刻表

今回はまず伊勢奥津まで行き、家城・松阪方面に下っていくことにしました。往復が同じルートでは芸がないので、国道166号線・368号線で奥津へ向かいます。下記Googleマップの埋め込みで、南側をぐるっと回っているルートです。

このルートは国道368号線に入ると伊勢本街道に沿ったものになります。カーナビの案内でも約1時間ちょっとということだったので楽な道のりかと思いきや、「この先仁柿峠 8m以上通行不能」と、道幅が狭いことを示す表示が……。



三重県松阪土木事務所による大型車通行止めの案内。仁柿峠越えは酷道として知られる道で、谷側にガードレールがないにもかかわらず道幅が車両1台分というところもあり、対向車が少なかったのが救いでしたが、安易に選択するルートではないことを思い知りました。



峠を抜けて松阪市から津市に入ると、このような「ようこそ神去村へ」の看板が。これは津市美杉町が三浦しをんさんの小説「神去なあなあ日常」の舞台・「神去村」のモデルであり、2014年5月に「WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜」として映画化されたために作られたものと思われます。



天気はぎりぎりの曇りでなんとか雨は降っていない状態。これで雨が降っていたら途方に暮れてしまうところです。



とはいえ、峠を越えると道はかなり良くなります。



奥津への途上、シカに遭遇。

伊勢本街道でシカと遭遇 - YouTube

さらに進んでいくと、右から走ってくる線路が見えてきます。これが名松線。



ということで、伊勢奥津の駅前に到着。



この新しめの建物は「津市伊勢奥津駅前観光案内交流施設」。



その隣の建物が伊勢奥津駅。「みんなで守ろう名松線」というスローガンが掲げられています。





駅舎は津市八幡主張所・八幡地域住民センターと一体になっています。



駅にはかつての写真が展示されていたり……



ノートがあったり……



おなじみのスタンプがあったり。



駅舎の前がJR代行バスの伊勢奥津停留所になっていて、現在不通の家城と伊勢奥津を結ぶJR代行バスが発着しています。



伊勢奥津発のバスは6:00、7:35、9:40、13:20、17:20、19:05の6本。



駅内部の時刻表も代行バスのものに変更されています。運賃は家城までが320円、松阪までだと840円。



ホーム側にも出ることはできますが、ホーム自体は立入禁止になっています。



使われなくなってまだ数年なので、使用再開のための手入れはそれほどかからなさそう。



ホームと反対側はこんな感じ。



改めて「駅を降り立った」という形で駅舎を出てみると、広がるのはこんな光景。



駅周辺には三多気の桜、川上山若宮八幡神社、北畠神社といった観光名所があります。



駅前にあるのは津市コミュニティバスの「八幡出張所前」停留所。このバスで丹生俣まで行けば、映画「WOOD JOB!」で長澤まさみが演じた直紀の家の撮影地や、主人公・勇気が住み込んだ与喜の家の撮影地が見られるとのこと。ただし、丹生俣行きは月曜〜金曜のみの運行。



三重交通のバス停もありますが……



こちらは7時11分の名張駅前行きと、18時40分の飯垣内行きのみ。おそらく通学がメインなのだと思われます。



駅前を見た後は、伊勢奥津駅の周りをぐるっと一周することに。これは伊勢奥津の手前にある踏切。



ここから緩い左カーブを経て伊勢奥津へ向かいます。







反対側はまっすぐ進んだ後、左に大きくカーブして隣の比津方面へと向かっていきます。



踏切を越えて国道から駅に向かって歩いて行くと、先ほどは気付かなかった歩行者用の踏切を発見。



猫がこちらを振り返っていました。



ホームには入れないため、国道側から見つけた駅名標。草むしてはいるものの、駅自体はいつでも運行が再開できそうな雰囲気。



続いて、県道15号線で名松線に沿って北へと向かいます。名松線と県道とは、時に川を隔てたり、時に踏切やガードでクロスしたりしつつ、ほぼ並行して進んでいきます。これは比津に向かう途中、伊勢奥津方面を振り返ったところ。



名松線はこのあたりでは少し道路よりも高いところへと入っていきます。



県道から見上げた比津駅。



さらに進んでいくと、名松線が川の向こう側を走っているところでロックシェッド(覆道)になっている部分が見え……



その手前に、ブルーシートなどが置かれている部分があることを確認。どうやら、復旧工事を行っている場所のようです。



ロックシェッド自体が崩れたりしているわけではないようです。



このあたりは対岸から見ていることしかできないのですが、さらに進むと名松線とクロスする踏切があり、工事用の車両が停められているのを発見。



線路内は立入禁止ですが……



道路沿いに近づくことができます。



型番不明のディーゼル機関車。



コンクリートブロックが並べられていて……



トラックでの積み込み作業などのためか、踏切ではない場所の線路が木材で覆われていました。



この先はロックシェッドへと繋がっているので、この機関車で資材などを運んでいくものと思われます。



先ほどの踏切から下ったところは真新しい工事のあとが。



「平成25年度 JR名松線関連緊急治山事業」とのことで、名松線復旧のために行われたもの。



治山の必要性を感じる崩れ具合。台風18号のあとは家城から伊勢奥津の間で約40ヶ所の土砂崩れ・路盤流出があったそうです。



この踏切は何年も列車が通ることがないため、草がかなり育っていました。



さらに北へ下っていくと、「FIRE VALLEY 雲出湯館」と書かれた巨大なプールを発見。これは美杉リゾート 火の谷温泉のプール施設部分。伊勢八知からはそれほど離れていません。



伊勢鎌倉の手前で、県道は新しいトンネルで山を突っ切っていきます。名松線と並行する県道の旧道は右へと曲がっていくので、そちらへ入っていくと……



川の向こうから名松線が姿を見せました。



これが伊勢鎌倉駅、右側に見えているのは簡易トイレ。



待合室つきの無人駅です。



待合室には代行バスの停留所の場所が貼られているのですが、日に焼けてよくわからない状態に。



これが伊勢八知・伊勢奥津方面を見たところ。



この先、名松線は伊勢竹原へと向かっていきます。



線路に下りると危ないのでホームからの撮影ですが、橋の上は特に危ないためか、出入りができないように柵がつけられていました。



伊勢鎌倉駅のホームの端で、伊勢竹原方面から伊勢八知方面を眺めるとこんな感じです。

JR名松線 伊勢鎌倉駅 - YouTube

伊勢鎌倉は集落の外れに駅があるため、駅から出てもこのように道に突き当たるだけ。



そこをコミュニティバスが走っていきました。



その後、名松線は川の東側を、県道は川の西側を走ることが多くなります。

竹原のあたりで久々の踏切があり……



ちょっと立派な建物があったので「これが伊勢竹原駅か」と思ったら、これは地区センターだったようです。



駅はもう少し向こう、伊勢奥津側に寄ったところにあります。



駅から離れたこの場所にJR代行バスや三重交通、コミュニティバスの停留所があります。代行バスのダイヤは以前見たとおりですが……



三重交通は伊勢奥津とは別系統のバスが発着していて、近鉄名古屋線の久居駅に出ることができます。本数も1日4便あります。



伊勢竹原の次は家城、現在の名松線は松阪から家城までの運行です。

伊勢奥津以降はわりと簡素な駅が続きましたが、家城は名松線の中でも大きめの駅。



三重交通のバスが停まっていますが、これは待機中のJR代行バス。このあと、家城駅に列車が到着するとそのお客さんを引き継いで伊勢奥津へ向かうことになります。



駅舎内はそれほど広くありません。





家城は行き違いができる2面2線の構造になっていましたが、現在は折り返し運転が行われているので、向かって右側、駅舎と繋がっているホームのみが使われています。



本来は伊勢奥津から松阪へ向けての列車が発着するホームは草が生え放題になっていました。



家城は駅近くに三重県立白山高等学校があることもあり、通学利用がかなり多いようで、下校時間に重なって待合室には高校生がいっぱいになっていました。



駅の東側には「乗って残そう名松線」の看板が県道に向けて建てられていました。



そうこうしていると、松阪からの列車がやってきました。



家城駅に向けて走って行くキハ11形 - YouTube

駅舎裏手側から、停車中のキハ11形を見たところ。下校する高校生の数がかなり多かったです。



家城から井関の手前までは、県道と線路が並行している部分も多く、名松線を見つつ走っていくことができます。



松阪の1つ手前、上ノ庄を発車したところのキハ11形。そこまで速度を出したわけでも抑えたわけでもないのですが、信号に捕まったりしている間にほぼ同じぐらいの場所を走ることになっていました。



ここから先は並走しないので、松阪駅に先回り。



先ほど走ってきたキハ11形はここでまた折り返して家城へ向かい、バスに接続します。



まだ来ていないかな?と探すと……



5番線にすでに到着していました。



松阪駅周辺が多少渋滞気味だったのが敗因かも……。



名松線全線の復旧および運行再開は2015年度内(2016年3月まで)ということになっています。

見てきた限り、「地盤が崩れて線路が宙に浮いている」「巨石が線路上に落ちている」という部分はないので、問題なく再開にはこぎ着けられそう。一方で、運行中の松阪〜家城間は通学需要などがあるものの、家城から先は大口の需要があるわけではないので、JR東海が当初は廃止してバスに切り替えることを考えたというのも納得のいくところ。利用状況を見ると代行バスに切り替わった2009年度以降は乗客数が減少傾向にあり、復旧後に乗客を取り戻し、さらに増やす方向へと繋げることはできるのでしょうか。映画「WOOD JOB!」の公開時期に運休だったというのは、大きくはないことかもしれませんがかなりもったいないことだったのかもしれません。