現在100万人はいるといわれる「ひきこもり」。「全国引きこもりKHJ親の会」代表の池田佳世さんによると、「ひきこもり開始平均年齢は20.1歳で、平均年齢は33.1歳(’13年)」だという。長期化し重症化すると、どのような状態になるのか?

「自室から出るのを嫌がり、排せつも自室ですまして、窓から外に捨てるというケースもあります。人目が気にならなくなり、風呂も入らない。現実逃避するため、昼間は自己嫌悪になるので、昼夜逆転生活になります。苦しんでいるところに親の苦言で怒りが爆発して、家庭内暴力を起こすことも珍しくありません」(年間1万5千件のカウンセリングを行う「全国webカウンセリング協議会」理事長の安川雅史さん)

最初の対応を誤ると重症化し、“ひきこもり暴発”に結びつくケースもあるという。ここまで悪化させないための「子どもに向き合う6つの心得」を専門家に聞いた。

【1 家を安全基地にする】
「親が『学校に行きなさい』『仕事は休むな』と叱ったら、家の中でも孤立します。家事など役割を与えて『家族の一員』『家は安全だ』と思える環境に」(カウンセリングルーム「けやきのみち」の臨床心理士・竹之下桃子さん)

「たとえ子どもの言い分がおかしくても肯定して、『親は自分のことをわかってくれるんだ』と安心させてください」(前出・安川さん)

【2 家族の愛情を伝え続ける】
「とても重要です。たとえ自室にこもってコミュニケーションが取れなくても、ドアの前に食事を置くだけでなく、《きょうは○○の好物のカレーにしたの。おいしいと思うよ》と手紙に書いたり、子どもの趣味を一緒に楽しもうとする姿勢が、愛情を伝えることになります」(安川さん)

【3 恥ずかしがらずに専門家に相談】
「一人で抱えず、精神科医やカウンセラー、精神保健福祉士に相談を。抵抗がある人は、メール相談している施設に頼んでみるのもいいでしょう」(安川さん)

【4 まずは母親が救われよう】
「親の会などに参加して、悩みを同じ目線で共有できる仲間との語らいの場に参加することで、『一人じゃない』と居場所ができます。母親の安定が、子どもの安定につながるんですね」(池田さん)

【5 最後まで子を守る存在は親だけ。絶対にあきらめてはいけない】
「90代の母親が、50年以上ひきこもっている息子を『殺したい』という相談もあります。しかし対応すれば、多くは改善が望めます。子どもの最後の味方は親です。見捨てないでください」(安川さん)

【6 心からの謝罪が、子の心を返る】(1〜5までを実践し、心から子の苦しみと向き合う)
「きっと、ひきこもることで伝えたかった子どものメッセージが理解できます。そのとき、心から『わかってあげられなくて、ごめんね』と謝ると、魔法の言葉のように子どもはがらりと変化します。理解者がいてくれることに安心するんです」(竹之下さん)

最後に、大村共立病院の精神科医・宮田雄吾先生が、母親が前を向いて取り組めるよう、エールを送ってくれた。

「変化には時間がかかることは覚悟して、長い目で見ることです。思いつめないように子どものグチを、しっかり“陰で”こぼす。そこで原因探しをしても、次にはつながりません。『過去はチャラ』にしましょう」