行間を読む 翻訳のされ方で大きく印象が変わる言葉の難しさ

先日来日した折に日本のテレビ局の音楽番組の「ミュージックステーション」(通称:Mステ、テレビ朝日)に出演したイギリスのロックバンド「オアシス」の元ギタリスト兼ボーカリストのノエル・ギャラガー(以下、ノエル)が同番組の感想を書きこんだブログエントリーが訳されて2ちゃんねるでスレッドが立った。

これだけなら海外アーティストの話題として特に問題はないが、イギリスでも毒舌キャラがウリで物議を醸す発言を何度かしていたノエルだけに、その発言内容が注目された結果、ちょっとした騒ぎに発展。

タイトル曰く『Mステに出演したOASISのノエル・ギャラガーさん「日本の歌番組はクソだし狂っている。AKB48という粗製濫造アイドルにはビックリした」』というスレッドがそれだ。ここで紹介された翻訳内容のあまりのいい加減さを信じてしまった人がいたようで、その結果Twitterでは、その内容から端を発し日本の芸能界批判の話になったりとイイ感じで火が付いた。

なお、本記事はそのTwitterの内容に関してどうこう言う話ではなく、ITライフハックが注目したい点は「2ちゃんねるで公開されたブログエントリーの翻訳内容が正確ではなく、書かれていないことも追記されていた」という点だ。

「2ちゃんなんだから面白おかしくしたい」「ギチギチな直訳系文章はみっともない」「翻訳っぽく見せたい」という意識が働いたのかどうかは不明だが、ノエルのブログには“書かれていない内容”までが訳されたかのように翻訳文に散りばめられている。以前、虚構新聞が橋下 徹大阪市長がTwitterを義務化するという嘘ニュースに釣られた人達のことを書いた「ネタにマジレス何それ痛い! Twitter義務化のパロディニュースに釣られる人続出!」のときのように「いかにもノエルが言いそうな話」というイメージで意図的に作られた文章が挿入されている。そのためそれをそのまま鵜呑みにしてしまった人もいたようだ。

Twitter上ではノエルの発言云々に対する感想や日本の芸能界事情の特殊性などの話題が飛び交っていたものの「そうやって熱く語る前に原文見ました?」と冷静に指摘する方が登場。その方がプロの翻訳家(通訳・翻訳・コーディネート会社を経営する方)だったために、結果プロの技で該当ブログのエントリー内容を翻訳してくれることになり、プロの手で悪意や言ってないことを排除した原文の翻訳が完成。それを見ると当初の翻訳の余りの酷さに驚いてしまう。

もちろんその翻訳は直訳ではなく正しい言葉に直された訳となってはいるが、2ちゃんねるに張り付けられた翻訳とは雲泥の差で、また2ちゃんねるでは文章をぶつ切りにして、わざと面白おかしくしようと書いてある部分を掲載せずに、書いてない部分の訳を追加してある。これ“意訳”ならぬ“違訳”って言いませんか? 

こうした文章の意図的な改変は、英語に限った話ではなく、日本語にも当てはまる。ミスリードを誘って、話を複雑な方向に持って行ったり、掲示板を炎上させる原因になる。「でっちあげ」「ねつ造」と言われても仕方ないレベルだ。これとは対照的に極めてシンプルに相手が何を考えているのか分かりやすく訳してくれた翻訳家さんの凄腕に感謝すると共に、誤訳であることをTwitterを通じて拡散しようとするTL上の対応の素早さに驚いた。ちなみにどういう間違いであったのかを理解しやすくするために、「原文」「プロの訳」「違訳」と並べてみたので見比べてみてほしい。悪意のあるなしや文章の省略を駆使することで、人のミスリードを誘う怖さが理解できるだろう。言葉の大切さが非常に理解しやすい。いやあ、言葉って怖いですねホント・・・。

以下、英語が原文、つぎにプロの訳、そして違訳の順

Lord only knows why I was on there.

プロの訳
<なんで呼ばれたんだろう>

違訳
<ナシ>

Well that tv show was - as predicted - fucking insane. It’s quite difficult to know what these Japanese shows are actually supposed to be about, but I'm guessing it was like some kind of version of our very own Top Of The Pops (R.I.P.).

プロの訳
あの番組は、予想通りめちゃくちゃぶっ飛んでた。日本の番組って実際どういうものなのか、俺にはよくわからないけど、たぶんイギリスでいうところの「Top of the Pops」(←なくなっちゃって残念)みたいなもんだと思う。

違訳
あの日本の歌番組は、おまえらも予想してるだろうけどクソだし狂ってる。なんでこんな番組が日本で支持されてるのか理解できない。まあイギリスにもトップオブザポップスっていうクソ番組があったけどな。


It was all executed with military precision. For example they give you instructions like:

プロの訳
とにかく、もう軍隊並みの正確さ。たとえば、こういう指示が来る。

You will exit the dressing room at 8:34

プロの訳
8:34 楽屋を出る。

You will enter corridor A at 8:37

プロの訳
8:37 通路Aに入る

You will shake this persons hand at 8:39

プロの訳
8:39 誰々と握手をする。

You will perform said song at 8:41 etc . . .

プロの訳
8:41 決められた曲を演奏する…。

And the most amazing thing is it all runs like clockwork!

プロの訳
何よりもすごかったのは、これがみんなきちんと実行されるってこと!

※かなり重要な具体例なのに違訳ではこの部分非掲載※


I was on with a load of Japanese acts one of which was a manufactured girl group called AKB48. I kid you not. There was maybe 30 of them all between the ages of 13-15!!! I suddenly started to feel very old.

プロの訳
大勢の日本人アーティストと共演したけど、そのなかにはAKB48というメディアによって作られたグループがいた。冗談で言ってるんじゃないよ。13-15歳くらいの女の子が30人くらいいたんだ。なんか、急に俺年食った気がした。

違訳
俺は一山いくらのクズみたいなジャップの自称ミュージシャンの連中と無理やり共演させられたんだが、その中に工場から大量出荷された粗悪品みたいなAKB48という少女たちのグループがいたんだ。これは冗談じゃないぜ、そいつらは無駄に30人くらいいたんだが全員13歳から15歳くらいの糞ガキだったんだよ!俺は急に自分がすげえジジイになったような気がしたよ。

The presenter was some old dude who looked at best like a James Bond villain.

プロの訳
MCは、いいとこジェームズ・ボンドの悪役みたいな中年男性。

違訳
司会者はすかしたジジイでちょうどジェームズ・ボンドの敵役みたいな奴だった

It was loud fast and chaotic. Lord only knows why I was on there.

プロの訳
とにかく騒々しくて、慌ただしくて、カオスだった。なんだって俺、あんな番組に呼ばれたんだろう。

違訳
うるさくてめまぐるしくてごちゃごちゃしてる番組で俺はなんでここにいるんだろうと思っちゃった

A good laugh all the same though.

プロの訳
でもまあ、どっちにしろ面白かった。

違訳
<ナシ>

togetter:OASISノエルのMステ出演に関する誤訳の顛末

ノエル・ギャラガー公式ブログ
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