愛する浦和を去るエジミウソン、“ワシントンとポンテの悲劇”を繰り返してはならない

[写真]=兼子 愼一郎
6月25日、名古屋戦のピッチにエジミウソンの姿はなかった。
試合前々日の23日、浦和は背番号「9」を担うこのブラジル人ストライカーを、カタールのアルガラファへ移籍させることで、クラブ間合意に達したと発表。前節の福岡戦を除く、11試合でフル出場していたエジミウソンだが、移籍は決定的となった。
もっとも、エジミウソン自身はかねてから浦和への残留を希望していた。クラブの判断次第では移籍する意向こそ示していたものの、「浦和にとどまることが自分の願いだった」と無念を口にし、事実上の"最終戦"となった福岡戦では目頭を熱くさせるシーンも見られた。
ブラジル全国選手権得点王の実績を持つ元ブラジル代表のワシントンは、2006年に浦和に加入。圧倒的な決定力を武器に、念願だったリーグ制覇とAFCチャンピオンズリーグのタイトルを浦和にもたらした。FIFAクラブワールドカップでは得点王に輝くワシントンの活躍もあり、浦和は"世界3位"という称号を手にしている。
一方のポンテは、レアル・マドリードを3−0で破るなど、チャンピオンズリーグを席巻したレヴァークーゼンの主力として活躍。2005年に日本へ活躍の場を移すと、ワシントンとともにタイトル獲得に貢献。故障の影響で離脱する時間が長くなってからも、ひとたびピッチに立てば、"違い"を生み出す選手として存在感を示した。
ワシントンとポンテは、ともに愛するクラブへの残留を願っていた。しかし、最終的にフロントは契約を延長しない決断を下し、ワシントンは2007年、ポンテは昨季終了後に浦和を去った。
もちろん、ワシントンやポンテのケースとの違いはいくつもある。1トップで起用されながらも、エジミウソンは今季わずか3得点。競り合いでの勝負弱さや、正確性を欠くポストプレーなど、期待されたパフォーマンスとは程遠く、批判的な評価も少なくない。一部では"エジミウソン不要説"が唱えられ、ゼリコ・ペトロヴィッチ監督の起用を疑問視する声も挙がっていた。
実際、クラブで最も"目に見える結果"を残していたのは伸び盛りの原口元気だ。山田直輝や高橋峻希、小島秀仁らを軸に、若手中心のチーム作りを望む声も聞こえてくる。
とはいえ、高額の契約条件を提示され、選手が自ら進んで中東のクラブを選ぶケースが目立つ昨今、外国人助っ人の口から「お金じゃない。愛するクラブに残りたい」と言わせるクラブは少ない。
ワシントンとポンテに続き、クラブを愛するストライカーの放出を決めた浦和。今回の決断にはクラブの財政事情も少なからず影響しているのかもしれない。2010年度、浦和はクラブ創設以来はじめて赤字に転落し、2億6000万円の純損失を出した。懐事情を鑑みれば、2億円と言われる高額な移籍金を手にできるメリットは大きいし、納得のいく金額で選手を売却すること自体はサッカー界の"スタンダード"だ。
しかし、クラブを愛する主力選手を、本人の希望を聞き入れないような形で放出し続けた先には、いったい何が待っているのだろうか。
ひょっとしたら、ワシントンやポンテがいればここまで低迷することはなかったかもしれない。もしかしたら、観客動員数の大幅な低下も食い止められたかもしれない。もちろん、スポーツの世界に"たられば"は禁物だ。たが、少なくとも浦和のフロント陣には、外国人選手に「お金じゃない。残りたい」と言わせるほどの魅力が浦和レッドダイヤモンズというクラブにはあるということを忘れてほしくない。
今、浦和に求められること。それは、クラブを心から愛してくれている選手を移籍させなければならないような状況に陥っている現状そのものを打破することかもしれない。
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