健康的に過ごすにはどのような食事をとれば良いのか。岐阜大学名誉教授で循環器専門医の湊口信也さんは「海藻には食物繊維やミネラルだけでなく、血管を守る機能性成分が豊富に含まれている。研究では、海藻摂取量が多い人ほど脳卒中や心血管病による死亡リスクが低いことが示されている」という――。(第3回)

※本稿は、湊口信也『果物野菜で100歳を生きる』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■世界が注目するスーパーフード

海藻といえば、海苔、ワカメ、コンブ、ヒジキ、モズクなどが日本では馴染み深いですが、海藻は伝統的に、日本、中国、韓国、台湾、東南アジアなどを中心にして消費されてきました。海藻は一般的には海の野菜といわれ、野菜と同じような健康効果があると考えられています。

最近では海藻の持つ心血管病予防作用や長寿への効果の期待から、日本、中国、韓国、台湾、東南アジアだけではなく、西洋諸国でも食事の中に取り入れられるようになってきています。海藻の種類には、緑藻、褐藻、紅藻などの種類があります。

これらの海藻の中でも、食用にされる海藻には、緑藻は、アオサ(天ぷら、汁物)、ウミブドウ(酢の物、サラダ)、ミル(サラダ、キムチ)などがあります。褐藻はコンブ(寿司、煮物、サラダ)、ワカメ(みそ汁、サラダ)、ヒジキ(煮物)、モズク(酢の物)、アカモク(とろろ、炒め物)、アラメ(炒め物、佃煮)などがあります。

紅藻では、まずは海苔が挙げられますが、他にはテングサ(寒天の原料)、トサカノリ(刺身のつま、海藻サラダ)、エゴノリ(煮物)、フノリ(酢の物、和え物、汁物、炒め物、サラダ)などがあります。これらは、よく食卓に上がる馴染み深い代表的な海藻です。

■心臓病や脳卒中を遠ざける成分

海藻は低脂肪であり、高ポリサッカライド、繊維、多価不飽和脂肪酸などの健康的な栄養素を含み、さらに、ミネラル、ビタミン(ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE)、機能性成分、カロテノイド、フィコビリン、ステロール、トコフェロール、ポリフェノール、クロロフィル、フィコシアニンなどが含まれているため、健康増進、慢性疾患や心血管病の予防に寄与していると考えられています。

海藻に含まれている成分で明らかな効果が実験医学的に証明されている代表的な成分について以下に述べますが、これらの成分はいずれも血管内皮細胞に対して保護的に働いて、脳心腎疾患の予防や治療に役立つ作用を有していると報告されています※1。

※1 Yamagata K. Prevention of cardiovascular disease through modulation of endothelial cell function by dietary seaweed intake. Phytomedicine Plus 1:100026, 2021

フコイダン:フコイダンはモズクなどの紅藻に含まれるポリサッカライドであり、中性脂肪、総コレステロール、悪玉コレステロールを下げて、善玉コレステロールを上げる作用があり、動脈硬化を防ぐ作用があります。また、抗炎症作用、抗凝固作用、抗血管増殖作用、抗接着作用などを介する腫瘍転移を抑制する作用があります。

また、フコイダンは組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)を遊離することから血栓溶解作用があるため、血栓形成による動脈硬化、脳卒中、冠動脈疾患の予防につながります。

■糖尿病や肥満を防ぐ「ワカメ」

フコイダンは、さらにeNOS(Endothelial Nitric Oxide Synthase:内皮一酸化窒素合成酵素)活性化とAkt(セリンス/レオニンキナーゼ)のリン酸化によりNO(一酸化窒素)の産生をもたらします。

これらのフコイダンの作用は細動脈硬化の進展を予防し、血管内皮作用を保つため、血管を健全に維持することになります。その結果、高血圧の予防や治療、動脈硬化の予防に役立ちます。

フコキサンチン:フコキサンチンはワカメなどの褐藻に多く含まれ、カロテノイドキサントフィルというカロテノイドの一種であり、抗糖尿病作用、高肥満作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用、血管内膜保護作用、中性脂肪低下作用、善玉コレステロール増加作用、神経障害軽減作用などがあるとされています。

アスタキサンチン:アスタキサンチンはヘマトコッカス藻という緑藻に含まれ、カロテノイドの一種で、抗酸化作用、抗炎症作用、悪玉コレステロール低下作用、善玉コレステロール増加作用、中性脂肪低下作用、血管内皮保護作用、血圧低下作用、抗血栓作用などの効果があります。

フロロタンニン:フロロタンニンはアラメなどの褐藻に含まれ、ポリフェノールの一種で、血管内皮細胞保護作用、血管平滑筋増殖抑制作用、血小板凝集抑制作用などがあります。

■毎日の海藻摂取で心臓のトラブルを回避

日本において、コンブやワカメなどの海藻を摂取することが長寿と脳心腎疾患リスク低下の一因となっていると考える風潮があります。しかし、海藻摂取と脳心腎疾患との関係を解明している疫学的な臨床研究はそれほど多くはなく、わずかに報告されているのみです。

写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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以下に、今までに報告されている疫学的臨床研究の結果を発表された年代順に述べていきます。

日本において、8万6113名(男性4万707名、女性4万5406名)を対象にして、4年間の経過観察を行ったJapan Public Health Center-based Prospective (JPHC) Study において、自己管理型アンケートによる食事摂取頻度調査が行われ、海藻の摂取頻度と脳卒中、虚血性心疾患のリスクとの関係が調べられました。

その結果、海藻を摂取しない群に比較して、ほぼ毎日海藻を摂取している群は、男性では、虚血性心疾患のリスクが24%の低下、全心血管疾患では12%の低下を示し、女性では、虚血性心疾患のリスクが44%の低下、全心血管疾患では11%の低下を示しました。しかし、男女ともに、全脳卒中や脳卒中のタイプにおいては差を認めませんでした※2。

※2 Murai U et al. Seaweed intake and risk of cardiovascular disease: the Japan Public Health Center-based Prospective (JPHC) study. Am J Clin Nutr 110: 1449-1455, 2019

■9万人の食事と死亡リスクを調べてみると…

さらに、9万6215名(男性4万234名、女性5万5981名)(40〜79歳)を対象に2年間経過観察した Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk (JACC study)において、自己管理型アンケートによる食事頻度調査が行われ、海藻の摂取頻度と心血管病(脳卒中、冠動脈疾患)による死亡リスクとの関係が調べられました。

その結果、男性では、海藻を摂取しない群に比較して、ほぼ毎日海藻を摂取している群では、全心血管病による死亡は28%減少し、脳卒中による死亡は30%減少し、脳梗塞による死亡は31%減少していました。女性では、全心血管病による死亡が28%の減少、全脳卒中による死亡が30%減少していました。

しかし、男女ともに、脳出血と冠動脈疾患には有意差は認めませんでした。したがって、日本人の男女では、海藻摂取と心血管病、特に脳卒中による死亡率は逆相関を示す結論となりました※3。

※3 Kishida R et al. Frequency of Seaweed Intake and Its Association with Cardiovascular Disease Mortality: The JACC Study. J Atheroscler Thromb 27: 1340-1347, 2020

■野菜に海藻をプラスして健康効果を最大化

つまり、海藻を多く摂取すると、心血管病、脳卒中による死亡率が低下していたのです。さらに、6169名の男女(40〜79歳)を対象に、16年間経過観察された、日本の4つの地域で行われた疫学調査で、24時間思い出し法による食事調査が行われ、海藻の摂取量を少ない群から多い群までの4つに分けて(0、1〜5・5、5・5〜15、15g/日以上)、心血管病リスクとの関係が調べられました。

湊口信也『果物野菜で100歳を生きる』(さくら舎)

その結果、海藻摂取が一番少ない群(0g/日)に比較して、海藻摂取が一番多い群(15g/日以上)では、男性において、脳卒中が37%低下し、脳梗塞が41%低下していましたが、女性ではこれらの関係は認められず、また、脳出血、冠動脈疾患には有意差は認められませんでした※4。

※4 Chichibu H et al. Seaweed Intake and Risk of Cardiovascular Disease: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Atheroscler Thromb 28: 1298-1306, 2021

以上のように、今まで行われている臨床試験によって海藻の摂取が脳心腎疾患に及ぼす影響について様々な結果が出ており、全体的に考えると、おおむね、海藻の摂取が脳心腎疾患のリスクや死亡を低下させる方向にあるといえるのではないかと思います。

したがって、果物野菜の摂取を積極的に勧めることによって脳心腎疾患リスク低下や全死亡低下が期待できるように、海藻も同時に摂取することが、さらに、脳心腎疾患リスク低下や全死亡低下をより効果的に低下させ、一層大きな健康効果が得られると考えられます。

写真=iStock.com/yasuhiroamano
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湊口 信也(みなとぐち・しんや)
岐阜大学名誉教授、岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問)
1952年、和歌山県に生まれる。医学博士。1978年に岐阜大学医学部医学科を卒業し、1983年に岐阜大学大学院医学研究科博士課程を修了する。1988年に岐阜大学医学部助手(第二内科)を務め、1989年にオ−ストラリア、メルボルン大学医学部(Pharmacology)に留学。2007年に岐阜大学大学院医学研究科循環病態学/呼吸病態学(第二内科)教授、2012年に岐阜大学大学院医学系研究科副研究科長、2016年に岐阜大学大学院医学系研究科研究科長・医学部長を務める。2018年以降は岐阜大学名誉教授および岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問)として勤務している。主な資格は循環器専門医、内科認定医、内科専門医(総合内科専門医)、高血圧専門医、産業医、心臓リハビリテーション指導士、循環器上級指導医(FJCS),心臓病上級臨床医(FJCC)などがある。受賞歴は2003年にBest of Scientific Session AHA(アメリカ心臓協会)賞、2017年度岐阜医学賞などがある。
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(岐阜大学名誉教授、岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問) 湊口 信也)