来冬には18歳になる黒川想矢。「免許を取って、ボス(舘)みたいにいろんなところに行ってみたい」(カメラ・頓所 美代子)

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 俳優の黒川想矢(16)が、猛スピードでスター街道を駆け上がっている。2023年の主演映画「怪物」で日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞し、空前の大ヒットとなった25年の「国宝」では主人公の少年時代を好演。19日に公開された「免許返納!?」ではコメディーに挑戦し、事務所の先輩で師匠でもある舘ひろし(76)と映画初共演を果たした。次々に扉を開いていく16歳の素顔に迫った。(堀北 禎仁)

 思慮深く言葉を選びつつ、ちゃめっ気も持ち合わせている。悩みごとを明かした黒川は、真剣なまなざしを一瞬緩めた。「人見知りを克服したい。友達からは『陽キャなふりをしたらいいんじゃない?』と言われるんですけど。単純に調子に乗っちゃうという弱さがある」。将来が期待される高校2年生は照れ笑いした。

 5歳から子役として演技を始め、小学6年でドラマ共演した舘ひろしの事務所・舘プロに所属を志願した。2023年の映画「怪物」で安藤サクラ、永山瑛太、柊木陽太と主演を務めてブレイク。昨年の「国宝」では主人公・喜久雄(吉沢亮)の少年時代を演じ、再び脚光を浴びた。

 数々の賞を受賞したことで環境は激変。「(今の環境が)分からなくなりましたね」と戸惑いもある。映画の舞台あいさつや取材など、人前で話す機会は激増。「演技を後から振り返って(周囲から)聞かれるのは緊張する。こうしておけばよかったという後悔や、考えを言葉にするのは重要なこと。それが楽しい」と、思考を整理することで成長につなげようとしている。

 「怪物」で日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた壇上で「僕は今、2つの自分と闘っています。このような場に立てるのは皆さんのサポートや運でしかないという自分と、晴れやかな舞台に立つと、まるで自分の力でやり遂げたように思う自分です」とスピーチした。あれから2年、闘いは終わりそうもない。「一生かかるんじゃないかな…」。周囲への感謝を口にし「勘違いしちゃう自分と闘わないといけない。体も心も強くならないといけない」と、あくまで謙虚だ。

 初のコメディーとなる映画「免許返納!?」では、舘演じる主人公との出会いで人生が変わっていく少年を演じる。ドタバタ劇でありながら、黒川だけは複雑な生い立ちであまり笑顔を見せない役柄。笑いをこらえて演技していたそうだが「皆さんが面白いのに僕が笑わないのは、空気が違う感じがした。1人で演じている気持ちになって新鮮だった」と振り返った。

 もともとコメディーは大好きで、12歳の頃に英国の人気シリーズ「ミスター・ビーン」を動画で見るうちに夢中になった。映画初共演となった憧れの舘には、挑戦的なセリフを吐く場面も。「舘さんのことを『オッサン』と呼ぶのは抵抗があって、言うたびにゾワゾワしていた。今までと違って、役の感情になっても出てこないセリフや矛盾が多かった」

 舘の助言で、黒川のセリフがより役に沿ったものに変更される経験もした。「コメディーであるからこそ矛盾をなくしていきたい、という姿勢はすごく勉強になった」と感謝する。

 進学校での高校生活も充実している。数学では確率を扱う「正規分布」の単元に取り組む。「仕事が終わった後に数学のドリルをする時間が好き。何も考えなくていい時間です」と、撮影の合間に嬉々(きき)として宿題をこなしている。

 昼休みに本を読みふけっているという宇宙の話題に及ぶと、さらに熱量が増した。「宇宙は一つではない、みたいな説があるじゃないですか。(量子力学の)『ゼロ点運動』といって、宇宙には何もなかったからこそのエネルギーがある。自分が今生きている世界でも、無駄だと思えることは無駄じゃない。自分の思っていることが科学と結びついていくのがすごく面白い」

 夢は宇宙旅行。「70歳ぐらいになったら行けるかな。無重力になってみたい。(地上と宇宙を往復する)宇宙エレベーターが完成するまで生きていたい」と笑った。科学好きなことから、3月に発売した写真集は、青色に光る顔料「アルミン酸コバルト」にちなみ「コバルト」と名付けた。「メイクさん、衣装さん、カメラさん…。皆さんが作り上げてくれて初めて画面に立てる」と周囲からの支えを忘れない。

 写真集でタッグを組むなど親交のあるカメラマン・末永真氏から譲り受けた一眼レフは宝物だ。「免許返納!?」でロケ地になった福島・猪苗代湖では、舘が足を洗うオフショットを一枚だけ撮影。「すごく大切な一枚」として保管している。4月には新しいカメラを購入するなど、写真のとりこになっている。

 俳優業はまだまだ手探りというが、仕事の奥深さに魅了されている。「自分の中にある新しい感情に出会えるのが好き。演じてみて初めて出会う気持ちがあって、出会えた時はすごくうれしい。この仕事でしかできないことなのかなと思う。続けられるまで続けたい」

 今も師匠から吸収する毎日だ。「舘さんはこれからも憧れ。話していてまだ分からないこともあるけど、共感できることもある。自分に分からないことがあるからこそ、これからも学んでいきたい」。名前の「想矢」は、米児童文学の金字塔「トム・ソーヤーの冒険」が由来。これから想像を次々と塗り替える、途方もない大冒険が待っているはずだ。

 ◆黒川 想矢(くろかわ・そうや)2009年12月5日、埼玉県出身。16歳。18年、日本テレビ系「トーキョーエイリアンブラザーズ」でドラマデビュー。21年、NHK BSドラマ「剣樹抄〜光圀公と俺〜」で舘ひろしと初共演。23年、「精霊の守り人」で舞台初出演。今年4月に公開されたアニメ映画「ARCO/アルコ」では主人公の声を担当。