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新ブランドを生み出したアルピナ創業家

ドイツ南部の伝統ある小さな町、ブッフローエ。古い習慣が、今も根強く残っている。そこを拠点にアルピナを創業したボーフェンジーペン家は、ブランドに関わる権利をBMWへ譲渡した。60年という歴史へ、別れを告げるように。

【画像】一家の哲学がMへ融合 ボーフェンジーペン・ザガート ベースのM4 ビジョン・アルピナと05 GTも 全100枚

そして彼らは、ボーフェンジーペン・オートモービルを立ち上げ、新たなモデルを生み出した。筆者がオーストリアのザルツブルクリンク・サーキットで走らせているのが、その1台。フロントスカートには、力強い書体で『BOVENSIEPEN』と記されている。


ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

アルピナの頃より並ぶアルファベットは多いものの、雰囲気は間違いなく見覚えがあるもの。一家が新しいアルピナを発表していた頃、ザルツブルクリンクへ向かう試乗コースは定番だった。パドックには、タイヤやスペアパーツが山積みにされていた。

ラグジュアリーなグランドツアラーの佇まいと、サーキットは少し不釣り合いにも思えた。とはいえ、実力を引き出すうえで望ましい場所でもあった。最新のボーフェンジーペン・ザガートも、まったく一致する。

スタイリングはザガート社の原田紀彦氏

英国価格は、約31万9000ポンド(約6699万円)。スタイリングを手掛けたのは、イタリア・ミラノのカロッツエリア、ザガート社の原田則彦氏。アストン マーティンDB12に並ぶモデルでありつつ、コレクターズアイテムとしての希少性も狙われている。

サーキットを、キリキリに攻め込むクルマではない。豊かなトルクで安楽にクルージングする、艶やかなレザーインテリアを備えた、ラグジュアリー・グランドツアラーだ。


ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

ベースとなったのは、BMW M4 コンペティション・コンバーチブル。現CEOのアンドレアス・ボーヴェンジーペン氏が愛する、ピラーレスデザインを実現するため、クーペより車重がかさむコンバーチブルが選ばれたという。

1948年以来、ザガートの象徴となってきたダブルバブル・ルーフを、モノコック構造の切断なしに生み出すこともできる。ルーフからリアウインドウ、トランクリッドへ続く一連の曲面は極めて優雅。見どころの1つにある。

カーボン製ボディパネルは12枚で50kg

ボンネットは、通常のM4 コンバーチブルより100mm長い。バンパーには、演出が主な目的に思えそうなほど大きい、エアインテークが開いている。ヘッドライトは、基本構造が許す限り低く据えられ、エレガントでありつつアグレッシブ。記憶に残る表情だ。

12枚で構成されるカーボン製ボディパネルは、固定用金具を含めても50kg。フロントガラスを支えるヘッダーレールと、ルーフパネルの間には僅かなギャップがあるものの、仕上がりは非常に高い。


ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

唯一、カーボン製のリアフェンダー奥には、ベースのスチール製パネルが残されている。衝突安全性を担う重要な部分で、残しておく必要があったためだ。

見事なホイールは鍛造品で、タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4S。サイズは前が285/30、後ろが295/25とのこと。

言葉を失うほどゴージャスなインテリア

インテリアは、人間工学的にはM4へ準じ、非常に居心地がいい。それでいて、言葉を失うほどゴージャス。1台の製造に、最低でも250時間、要望次第では400時間が必要になるわけを理解できる。ボーフェンジーペン・オートモービルの、技術力を物語る。

試乗車は、ブラウンとホワイトのツートーンが印象的。レザーは極めて上質で、天井はアルカンターラで仕立てられている。持続可能性へ配慮された素材が登用される近年にあって、禁じられた美しさのような、多幸感を醸し出す。経年劣化も見事だろう。


ボーフェンジーペン・ザガート(欧州仕様)

運転姿勢は理想的。シートは低い位置に据えられ、ステアリングコラムの調整域は広い。後席の乗員空間も充分あり、通常のM4 コンバーチブルよりガラスエリアが広く開放的。視界が広く、実用性も高いといえる。

トランクリッドを開けば、広い荷室。その内側は、ブラウンのアルカンターラがホワイト・ステッチで仕立てられ、まったく隙はない。ピカピカに磨き上げられた、ブガッティ・ヴェイロンのウィッシュボーンへ通じるようだ。

気になる走りの印象とスペックは、ボーフェンジーペン・ザガート(2)にて。