最初に結論:

スーツ市場の縮小は続く一方、業界はオーダースーツやオフィスカジュアルへ軸足を移し、販売量より収益性を重視する構造転換が進んでいる。

記事の重要ポイント:

1:主要紳士服7社のスーツ事業売上高は2年連続で減少し、店舗数も過去10年で初めて2,300店を下回るなど市場縮小が続いている。

2:リモートワーク普及で既成スーツ需要は減少する一方、手頃な価格のオーダースーツが広がり、新たな需要の掘り起こしが進んでいる。

3:各社はオーダースーツ強化に加え、カジュアル衣料やレディース商品を拡充。店舗の小型化などで収益改善を目指している。

帝国データバンクは6月9日、主要紳士服7社の2025年度(2026年3月期)におけるスーツ事業の調査・分析結果を発表した。

主要紳士服7社のスーツ事業売上高・営業利益 合計推移

同年度の主要紳士服7社(※)のスーツ事業売上高合計は3,386億円(前年度比5.2%減)と、2年連続で減少した。リモートワークの定着や働き方の多様化により従来の既成スーツ市場は縮小傾向にあり、市場全体は伸び悩みが続いている。連結売上高ではAOKIホールディングスが初めて青山商事を抜き業界首位となったが、スーツ事業単体では依然として青山商事がトップを維持している。

紳士服7社の店舗数は2025年度末時点で2,284店舗となり、過去10年で初めて2,300店を下回った。大規模な店舗整理の影響が残る一方、少在庫化で売り場面積を縮小したオーダースーツ特化の小型店舗の強化や、郊外ショッピングセンターへの移転が目立つ。利益面では、円安による輸入生地の仕入価格上昇や人件費・光熱費の高騰が響き、営業利益合計は130億円と前年度から26%減少した。

主要紳士服7社のスーツ事業店舗推移数

注目したいのが、オーダー専業のグローバルスタイルが2025年に展開した「ガチスーツ」をテーマとしたショートドラマによるスーツへの潜在的なニーズである。このドラマはSNSを中心に爆発的なヒットとなり、「特別な場面ではきちんとした質の高いスーツを着たい」というニーズの掘り起こしに寄与した。従来型の既成スーツ市場は縮小傾向にあるが、手頃な価格のパターンオーダーの普及により、高価なイメージのあったオーダースーツのハードルが引き下げられ、幅広い世代で認知度が高まる要因となった。

こうした中、青山商事によるカスタムオーダー専門店やハイエンドモデルの本格展開など、普及価格帯と高級ラインの両面で客単価を高める取り組みが進んでいる。また、AOKIホールディングスのカジュアル衣料の伸長や、はるやまホールディングスの疲労回復ウェア、ウェルネスウェア専門店展開など、機能性オフィスカジュアルや女性向け商品の拡充によって業績を拡大するケースも見られる。

2026年度もスーツ需要の総量縮小や円安によるコスト上昇が避けられない中、各社は引き続きオーダースーツを軸に需要の取り込みを図る。業界全体で価格改定やコスト削減が課題となっているが、各社は引き続きオーダースーツへ注力するほか、カジュアル・レディース領域の拡大、店舗の小型化によるローコスト運営などを進め、販売量から経営の質を重視する傾向を強めていく見込みである。

※青山商事、AOKIホールディングス、コナカ、はるやまホールディングス、銀座山形屋、タカキュー、グローバルスタイル