活気はどこへ…「庭付き4LDK・夢のマイホーム」を6,000万円で購入→25年後、新興住宅地は“ゴーストタウン”に。61歳男性が直面した「厳しい現実」【宅建士CFPが解説】
人口減少や少子高齢化が進む昨今、かつて人気だった郊外の新興住宅地が、資産価値の下落に直面するケースも少なくありません。6,000万円で購入したマイホームの査定額が1,900万円まで下落し、赤字での売却に頭を抱えることになったヨシキさん(仮名・61歳)もその一人でした。本記事では、郊外住宅地に潜むリスクと、住宅購入時に意識したいポイントについて、宅地建物取引士の資格を持つCFPの辻本剛士氏が解説します。
「大型モールもあって安心」…庭付き4LDKマイホームを〈6,000万円〉で購入
ヨシキさん(仮名・61歳)は、妻と2人で郊外の住宅街に暮らしています。
現在の年収は700万円。預貯金は2,500万円ほどあります。30歳になる息子は、間もなく結婚を控えていました。
一見すると順調な人生を歩んできたように見えるヨシキさんですが、実は今、大きな悩みを抱えています。それは現在住んでいるマイホームのことです。
さかのぼること25年前。ヨシキさんは都心から車で40分ほど離れた郊外の新興住宅地で、一戸建てを購入しました。
当時、不動産会社からは、「大型モールができて生活しやすくなりますよ」「子育て世帯もどんどん増えています」と説明を受けたといいます。
車がなければ生活しにくい場所でしたが、車の運転が趣味だったヨシキさんにとっては大きな問題ではありません。また、庭付き4LDKの広々とした住まいも魅力に感じていたとのこと。
購入価格は6,000万円。妻とペアローンを組んで購入することを決意します。
大型モールには衣料品チェーン店やレストラン、スーパーや映画館などが揃い、週末は家族で一日過ごすことも珍しくありませんでした。
「この街なら安心して暮らしていける」と感じていたヨシキさん。しかし25年後、この街が大きく姿を変えてしまうことに……。
「まるでゴーストタウンじゃないか…」購入から25年後、現在の街の様子
現在、ヨシキさんが暮らす住宅地は、かつての活気を失っています。
この街に入居した住民の多くは同世代だったため、今では住民の大半が60歳前後です。一方で、子ども世代は進学や就職を機に都市部へ移り住み、そのまま戻らないケースも少なくありませんでした。
さらに近年は、高齢となった住民の転居や相続をきっかけに空き家も増加しています。かつて家族連れでにぎわっていた大型モールも、今では撤退した店舗が目立ち「テナント募集」の貼り紙ばかりです。
シャッターが閉まったままの店舗や、手入れされず雑草が伸び放題の空き家を見るたび、「これじゃまるでゴーストタウンじゃないか……」と、ヨシキさんはため息をつく日々です。
「買い手がいません」住み替え検討も、提示された査定額に絶望
ヨシキさんは、今のところ元気に車を運転していますが「いつまでも運転できるわけではない」と考えることが増えたといいます。
「老後は駅や病院、スーパーが近い利便性の高い場所で暮らしたい」と考えたヨシキさんは、自宅を売却して住み替えることを決意します。
「6,000万円で購入した家だから、3,500万円くらいでは売れるだろう。残った資金と貯金を合わせれば住み替えもできるはずだ」
そう考え、不動産会社へ査定を依頼します。しかし、提示された査定額は1,900万円。
担当者いわく、人口減少と高齢化が進み、この街で家を探す人自体がほとんどいないというのです。
ヨシキさんの住宅ローン残高は約1,900万円。もし査定額どおりに売却できたとしても、仲介手数料などを差し引けば赤字になる見込みです。
住み替え資金になると思っていたマイホームは、いつしか「売りたくても売れない負動産」へと変わっていました。
住み替えを考えても身動きが取れない。ヨシキさんは八方塞がりの状況に陥ってしまったのです。
郊外の新興住宅地に潜む「負動産」リスク
郊外の新興住宅地は、購入当初は街並みが新しく、同世代の子育て世帯も多いため魅力的に見えるものです。近くに大型モールがあれば、生活利便性も高く感じるでしょう。
しかし、郊外の新興住宅地は長期的には次のようなリスクがあります。
住民の高齢化が並行して進む 資産価値が維持しにくい 商業施設が撤退する可能性がある 公共交通機関が弱くなりやすい
新興住宅地は同時期に開発されることが多く、住民の年齢構成も似通う傾向にあります。そのため数年後には街全体が高齢化し、子ども世代も都市部へ流出するケースも少なくありません。
実際、空き家問題は全国的な課題となっています。総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約900万戸と過去最多を更新しました。さらに人口減少が進む地域では、商業施設の撤退なども起こりやすくなります。
[図表1] 出典:総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果
こうした状況になると住宅需要は低下し、資産価値も下がりやすくなります。なかには売却価格を大きく下げても買い手が見つからないケースも珍しくありません。
そのため、マイホームを購入する際は現在の住みやすさだけでなく、将来の売却も意識した物件選びが重要です。
息子からの提案で見えた光明…老後の住まい選びの教訓
「住み替えを諦めるしかないのか……」
そう悩んでいたヨシキさんに救いの手を差し伸べたのは、結婚を控えた息子でした。「一緒に住まない?」と、息子は二世帯住宅の建築を提案したのです。
家族で話し合った結果、ヨシキさん夫婦はこの提案を受け入れることにしました。自宅は最終的に1,900万円で売却。しかし、仲介手数料などを考慮すると赤字でした。それでも、2,500万円の預貯金の一部を住宅購入資金に充てることで、現在は息子家族との二世帯住宅で暮らしています。
もっとも、これは結果的にうまくいったケースです。もし息子からの提案がなければ「売りたくても売れない負動産」を抱えたまま老後を迎えていた可能性もあります。
マイホーム購入においては、価格や間取りだけでなく、その街が20年後、30年後にどうなっているかという視点も欠かせません。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
